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第876話 「アドリーヌの帰郷⑯」

 ルウはナタンへ全てを話し、疑いは晴れた。

 晴れたどころか……ナタンはルウ達へ平謝りであった。

 バートランドの治安の悪さの責任の一端は騎士団にあるのと、ルウに自分達の仕事である『取り締まり』を代行して貰ったようなものなのだから。


 若い騎士ファビオへルウを簡単に紹介してから、愚連隊の『処理』を命じたナタン。

 命令を受けたファビオが一礼して遠ざかるのを見送ると、ホッと溜息をついた。


 これで心置きなく、『身内同士の話』をする事が出来るからだ。


「申し訳なかった! 折角バートランドへ来てくれたのに、お前達に悪い事をしちゃったな」


 ナタンの謝罪にも、ルウは怒ったりせずいつものように穏やかな表情である。


「構わないよ、俺も少しは爺ちゃんの役に立ったかな?」


 このバートランドは王国から任されているエドモンの管理地である。

 街の悪評はすなわちエドモンの悪評にもなる。

 悪評の解決に役立つのならルウとしては全く異存がない。


 しかしナタンは手を横に振った。

 今迄、このような愚連隊には手を焼いていたらしい。


「いやいや、とんでもない! 役に立ったどころか大いに助かった! 最近この手のふざけた輩が多いんだ。奴らはずるがしこくて尻尾を掴ませない。ええっと……ところでこちらの女性は?」


 話の流れでナタンの視線はアドリーヌへ向いた。

 「あれ? 相手が違うのでは?」というあからさまな波動を感じて、アドリーヌは緊張し俯いてしまう。


「あ……う」


 その時であった。

 きゅっとアドリーヌの手が握られた。

 ルウが安心させるように優しく握ってくれたのだ。


「ああ、俺の婚約者さ」


 婚約者とルウの口からはっきり言われて、アドリーヌはハッと息を吞む。

 心の底から嬉しさが込み上げて来る。


「婚約者だと!? う、う~む」


 唸るナタン。

 騎士団長の迫力ある視線に、アドリーヌはどぎまぎしてしまう。


「立ち入った事を聞いて悪いが……お前、フランシスカ様と別れたとか?」


 ナタンはルウへの気安さとはいえ、とんでもない事を聞いて来た。

 バートランドの騎士団長にとっては、ルウがドゥメール家と縁が切れてしまったのかと気になるようだ。


 しかしルウはあっさりと否定する。


「いや、別れてなどいない」


「ではジゼル様と別れたとか?」


 ナタンの追及は止まない。

 まるで犯人に対する取り調べのようだと、アドリーヌは思う。


 だがルウは突っ込まれても全く動じてはいない。


「いや誰とも別れてなどいない、フランもジゼルも了解済みで仲良しさ。この子は新しい妻になるんだ」


 新しい妻!?


 アドリーヌは凄く嬉しくなった。

 ルウは何と!

 バートランドの騎士団長へ、しっかりと自分を妻になると紹介してくれたのである。


 だからアドリーヌも勇気を振り絞って自己紹介する。


「ア、アドリーヌ・コレットです……ナタン騎士団長様、宜しくお願いします」


 ナタンはアドリーヌの名を聞いて首を傾げる。


「ん? コレット? どこかで聞いた事がある名前だ」


 記憶を呼び覚まそうとするナタンへ、ルウがフォローしてやる。


「ああ、彼女はコレット辺境伯の次女さ」


「え!? コレット辺境伯の!? むむむ……相変わらず……い、いや、そんな言い方はお前に対して失礼だな」


「いや、俺はこの子が好きなんだが、実は色々とわけありなんだ。いずれナタンさんにも協力して貰うかもしれない」


 ルウの話を聞いたナタンは申し訳なさそうな表情になる。

 まるで、少しでも邪心を持った事が申し訳ないとばかりに。

 やはりアドリーヌを婚約者にしたのは理由がある事なのだ。

 こうなったらナタンの告げる言葉は決まっている。


「そ、そうなのか! い、いや、ルウ、俺が出来る事なら喜んで協力しよう。何でも言って欲しいんだ! だってお前には借りばかりだものな。お前の従士アンドラの事も含めて」


 アンドラスの人間名を聞いたルウの目がより温かくなる。


「そういえばアンドラの奴……上手くやっているかな?」


 人間同様、悪魔にも個性がある。

 彼は最低限の報告しかして来ない。


 実体化してエドモンへ仕えたい……

 アンドラスの報告はそれだけであった。


 そんなルウの疑問に対して、ナタンは即答してくれた。


「いや、上手くどころか、超偏屈同士気がばっちり合うらしい。お陰でエドモン様の機嫌がず~っと良い、体調も絶好調と来ている。アンドラは凄腕だし、こっちは本当に助かっているんだ」


「ははっ、超偏屈同士か? 確かにな」


 はっきり言って人間のエドモンと悪魔のアンドラスは性格的に似た者同士だ。

 実はこうなる事を予測して、エドモンの護衛にアンドラスを配したルウの深謀遠慮である。


 しかしナタンは言ってからしまったと思ったらしい。

 とても慌てている。


 目の中に入れても痛くない孫のように可愛がっているルウと比べて、自分は扱いが違うからだ。


「ああっ! い、今のは内緒にしてくれよ。お前は平気でも俺がそんなこと言ったのが分かったら……激怒したエドモン様から、めためたに殴られる」


「分かった、言わないよ」


「良かった! じゃ、じゃあ頼まれついでにこれも! ……今夜にでもエドモン様の屋敷へ顔を出してくれないか? お前の顔を見知っている冒険者辺りから話が行ったら、バートランドに居たルウを何故連れて来ないとか言われて後々面倒なんだ」


 ナタンの立場を良く分かっているルウは、彼の申し入れを快諾する。


「分かった、了解だ……今日の午後6時くらいでも良いか?」


「OKだ! ……くう! 本当にお前には『借り』ばっかりだ。どうして返したら良いものかな」


「そんなに気を遣わないでも……ああ、そうだ」


 何か思いついたらしいルウはある事を問い掛ける。

 

 吃驚して悩んだ末にナタンは、ルウ達の為にとっておきの情報を教えてくれたのであった。

ここまでお読み頂きありがとうございます。

※3月6日、10、17、24、31、4月7、11、14日付活動報告にて、書籍化に関して情報をお知らせしています。

また4月14日付けの『活動報告』にて、出版社様企画も合わせて告知しておりますのでぜひご覧下さい!

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