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第592話 「白鳥亭送別会③」

「はいっ!」


 今度はフランが挙手をする。

 ルウへ絶対に聞きたい事があるのだろう。

 好奇心旺盛な気持ちがありありと出ており、まるで初々しい女子生徒のような表情である。


「旦那様、青銅の巨人タロスを何故倒さなかったのですか?」


「ああ、それは私も聞きたかった!」

「フラン姉、グッジョブ!」


 誰もがしたかった質問であり、勢い込んで聞くフランへ妻達の賛同の声が飛んだ。

 ルウの力なら青銅の巨人タロスなど敵ではないとアモンも太鼓判を押していた。

 それなのに何故手間のかかる『生け捕り』を行ったのであろう?


 ルウはいつもの穏やかな表情だ。

 彼にとっては当り前の事らしい。


「簡単な理由だ。彼等を調べてみたいと思ったのさ、俺、爺ちゃんと同じ気持ちになったから」


「え? 調べてみたい? 青銅の巨人タロスを……ですか?」


 ルウの返事がフランには意外であった。

 

 女神の呪いを解く=守護者などは排除する。

 フランには当初そのような発想しかなかった。

 

 しかし青銅の巨人タロスとの戦いにおいては、ルウが直ぐに勝負をつけずに相手の力を推し量るような雰囲気が出ていた。

 それでつい「ルウの悪い癖が出た」などと口に出したのではあるが、まさか捕らえて調べるなど思ってもみなかったのである。 


「ああ、彼等は旧魔法帝国の巨人ギガンテースなど比較にならないくらい、ふるき時代に創造された神々の遺産アーティファクトだ。破壊した挙句、廃棄するなんてとても勿体無いだろう?」


「…………(勿体無い?)」


 ルウの言葉を聞いて考え込んでしまったフラン。

 彼女の様子を見たルウは少し気になったようだ。


「フラン、俺っておかしいかな?」


 しかし、ルウの心配は杞憂にすぎなかった。

 表情が一変したフランが身を乗り出して協力を申し出たのである。


「いいえっ! おかしくないわ! 喜んで私もお手伝いします」


「ボクも仲間に入れて!」


 すかさずナディアが追随する。

 考古学者志望である彼女は研究職が天職なのであろう。

 完全に目の色が変わっている。


「古代魔法帝国時代の遺物であるゴーレム、巨人ギガンテースを超える貴重品なんでしょう! もし召喚魔法の寄り代に使えたら面白そうだよ!」


「おう、それは良い発想だ! 青銅の巨人タロスの力の源である神の血の謎の解明、そして青銅製と言われている素材の確認、そして再稼働してどれくらいのスペックなのか知りたいし、性能のスケールアップは可能なのかも試してみたい」


「確かに!」


「わぁ、旦那様に褒められたぞ! バラバラにして調べてみたいな、ボク!」


「でも一旦バラバラにして、再び組み立てられなかったら不味いわよ」


「大丈夫、フラン姉! ボクが構造を絵に描いておくもの!」


「おう! それならばっちりだ、ナディア」


 盛り上がるルウ達に他の者は到底着いていけなかった。

 万が一、ここにアデライドが居たら、大変な事になるのは間違い無い。


「…………」


 オレリーとジョゼフィーヌは呆れたように3人を『じと目』で眺めている。


「オレリー、この人達、完全に自分の世界に入っていますわ」


「私達、本来は魔法女子学園の先生と生徒だから学ぶ事を否定は出来ないですけど……何故かマニアック過ぎて、違和感が……」


 片やモーラルとリーリャは結構、冷静である。


「わぁお! モーラル姉、旦那様って冒険者にならなくて良かったです」


「うふふ、そうね! 本当に先生向きだわ」


 そんな妻達の会話が囁かれていても、ルウ達の会話は更に続いていた。


「よ~し、2人ともいつでも言ってくれ! 俺が創った異界に氷付けにして封印してあるから、直ぐ取り出せるぞ」


「ああ、解凍すればいつでもOKなんですね!」


「やった~」


 コホン!


 大きな咳払いが響く。

 そんな3人のノリに耐え切れなくなったのであろう。

 ジゼルが険しい顔で虚空を見詰めている。


「旦那様、私からまた質問をしても良いか?」


「ああ、良いぞ」


 しかしルウは全く気にした様子が無い。

 しかめっ面のジゼルに相変わらず屈託の無い笑顔を向けている。


「ええと、その……青銅の巨人タロスの倒し方だが……そちらを聞きたい」


「ははっ、悪い、それ適当なんだ」


「て、適当!? な、旦那様!?」


 適当!?


 思わず、ずっこけたジゼルにルウは澄ました顔で言葉を続けた。


「一応説明しよう。まず俺には神の血の正体がはっきりとは分からない……一応、想定はしているが、彼等の攻撃方法の中で身体から高熱を発するものがある。だからそこそこの火属性魔法は余り効果が無いと思ったのさ」


「…………」


 ジゼルは思わず黙り込んだ。

 ルウが言った『そこそこ』とは一体、どのような意味なのであろう。

 つい質問をしようとした矢先、ルウから説明がされる。


「とりあえず神の血を冷やせば動きは鈍ると思ったよ。それに倒すだけなら俺が普段使う火属性の攻撃魔法でも良かった」


「旦那様、ぜひお聞きしたい。倒すだけなら、とはどのような意味なのだ?」


「ああ、まともに考えれば金属の融点を超えた火属性の攻撃魔法を発動させれば青銅の巨人タロスは融解して、終いには蒸発してしまうからな」


「融解? 蒸発? ああ、そうか! 金属が溶けてしまう温度の事なのか!」


 漸く合点がいったジゼルはポンと手を叩いた。


「ああ、その通りだ、ジゼル。お前はドヴェルグや人間の鍛冶屋を覘いた事はあるか? 金属を溶かして剣などの武器や日用品を作るが、俺が契約している火蜥蜴サラマンダーブレスでは彼等青銅の巨人タロスはあっさりと溶けて無くなってしまうだろうな」


「あ、ああ!」


「良く考えれば分かるだろう? そうなったら全てがパーだ。だから空気界王オリエンスに神の血の温度を適度に下げて貰い、活動を鈍くした上で水界王アリトンの力により一気に氷付けにした」 


 ルウは一瞬遠い目をして、苦笑した。


「実は爺ちゃんの奴、青銅の巨人タロスを倒してしまったそうなんだ。つい、どろどろにしちゃって『しまったぁ!』ってさ」


 ジゼルのこころにいつか追憶の書で見た頑固そうなアールヴの顔が浮かぶ。

 完璧ともいえるアールヴの長ソウェルでも、そのような悔しい表情をしたかと思うと彼女もつい笑ってしまう。

 漸く笑顔を見せたジゼルにルウも片目を瞑っておどける。


「ははっ、いつも俺に昔の思い出話ばかりして、相当悔やんでいたからな」


「よかったね、旦那様!」

「本当、偉いよ!」


 フランとナディアもルウに負けないくらいの笑顔を見せている。

 

 青銅の巨人タロスを生け捕り?など普通に考えるととんでもない事だ。


 しかし妻達はルウの子供のような笑顔を見て、懐かしいと振り返る彼の過去に思いを馳せていたのであった。

ここまでお読み頂きありがとうございます!

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