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第504話 「上期終業式」

 魔法女子学園屋内闘技場、7月10日午前10時過ぎ……


 今日は4月から始まった魔法女子学園上期の終業式である。

 式典は9時から始まり、理事長アデライドの挨拶から始まり、フラン、ケルトゥリの訓示や休暇中の注意等があり、1時間後に終了した。

 生徒達は教室に戻ると、クラスに張り出された夏季休暇中の予定を各々が確認し、担任、副担任に質問や確認を行い、それが終われば夏季休暇に入るのだ。


 壁面に張られた予定表には次のように記載されている。


 7月25日から7月31日

 魔法発動訓練(任意参加)


 8月8日から8月12日

 夏期講習(専門科目・任意参加)

 魔法発動訓練(第2回・任意参加)

 当学園old girlsによる講演会と座談会(就職対策・任意参加)


 8月13日

 ヴァレンタイン魔法女子学園オープンキャンパス(来年度入学者対象)

 ※担当生徒限定参加


 9月10日

 始業式(下期開始)


 ※なお図書室と学生食堂は夏季休暇中も使用可能


 ルウとフランは生徒達の質疑に答えながら、生徒達の様子を観察する。

 勉強の相談をしている者、遊びに行く相談をしている者、故郷に帰る話をしている者が居る。

 中には内緒話をしている者達も居たが、ルウは勿論の事、今や魔力波オーラ読みの魔法が使えるフランにとっては生徒達がどのような感情で話しているか、丸分りであった。

 ただ生徒達が『危ない話』をしていなければ基本は放任するというのがルウとフランが事前に決めた事である。


 その基準で行けば今の所、2年C組の生徒全員はシロだ。

 フランはホッとしてルウを見ると、彼は生徒達の質問に対して熱心に答えている。


「フランシスカ先生!」


「はい!? あ、ああ、御免ね」


 フランは自分に対して質問に来ていた生徒に向き直ると笑顔を見せたのであった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 魔法女子学園職員室、午前11時30分……


 生徒達との質疑応答も終了してルウ達教師は職員室に戻っている。

 教師達は生徒のスケジュールとの共通部分もあるが、事務処理等もあり、夏季休暇中も結構多く魔法女子学園に出勤するのだ。


 ルウの隣の席にはアドリーヌ・コレットが座っている。


「ルウさん、いえ……ルウ先生」


 切なげな視線で何かを訴えるアドリーヌに対してルウは事も無げに言う。


「ああ、8月の夏期講習が終わったらアドリーヌの実家に行こうか?」


「え、ええっ!? 本当……ですか!?」


 ルウの思い掛けない言葉にアドリーヌのこころは高鳴る。

 しかしルウの次の言葉は期待を裏切るものであった。


「どうしても外せない予定が入らなければ問題無い。何とかしてお前が親父さん達と上手く行くように方法を考えような」


「はぁ、何だ……それですか」


 思わず溜息を吐くアドリーヌにルウはいつもと変わらない穏やかな表情で聞き返す。


「もしかして他に何か困った事が出来たのか? だったら相談に乗ろう」


「…………」


 今のアドリーヌの魂を魔力波読みで読み込んだら、彼女が落胆した理由が直ぐ分るに違いない。

 しかしルウは魔力波読みを使ってはいなかった。

 必要が無い限り、むやみやたらに人の魂を覗き込む事を良しとしなかったからである。


 そこへ声を掛けて来た数人の教師が居る。


 シンディ・ライアンは8月に英雄亭で行う予定の息子の婚約祝賀会の話をしに来たし、クランステッラを組んだボワデフル姉妹は宜しくとだけ、声を掛けて立ち去った。

 こちらも8月に入ったら、冒険者ギルドへ依頼を受けに行こうという意味である。

 クロティルド・ボードリエは魔法教授の念押し、リリアーヌ・ブリュレに関しては意味ありげな微笑をルウに投げ掛けている。

 こうなったらアドリーヌも愚図愚図してはいられない。


「ルウ先生、約束です! さっきの!」


 思わず声が大きくなったアドリーヌに思わず他の教師達の視線が注がれるが、彼女はもう躊躇わなかった。


「分った、約束だ」


 意を決したアドリーヌの瞳の中には大きく頷くルウがはっきりと映っていたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 実習棟2階ルウ・ブランデル研究室、午後12時過ぎ……


 ルウは先日、モーラルと出掛けた際に購入した結構な量の書物を持ち込んでいた。

 他に既に所持していたものやバルバトスから譲り受けた教材用の魔道具もテーブルの上に置かれている。

 どうやら、殺風景な研究室に必要最低限の資料を置く事にしたらしい。


 その時であった。


 とんとんとん!


 リズミカルなノックの音が響く。

 ルウが思わず苦笑する。

 どうやらノックの主が誰だか、分っているようだ。


「おう、誰だ?」


「マノンです!」「ポレットです!」

「ス、ステファニーです!」


 2年A組のマノン・カルリエ、ポレット・ビュケの声の後にやや遠慮がちな声でステファニー・ブレヴァルの声が応えた。


「良いぞ、入ってくれ」


「「「失礼します!」」」


 ルウが入室を許可すると3者3様の可愛い声が発せられ、ドアが開いて3人の美しい少女が入って来る。

 3人はぺこりと一礼すると、代表してマノンが来訪の目的を告げた。


「ルウ先生、いきなりで申し訳ありませんが、今日は私達の相談に乗って下さい。担任の先生の了解も取ってあります」


 いろいろと準備をしてルウの下を訪れたのであろう。

 マノンの顔は誇らしげである。


「私達、色々と悩んでいるのです。お願いします!」


「「お願いします!」」


 マノンに続いて連呼するポレットとステファニー。

 

 ルウは「分った」と笑顔で頷いたのであった。

ここまでお読み頂きありがとうございます!

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