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第326話 「感慨」

 魔法女子学園2年C組教室、月曜日午前9時……


 ぱん!ぱん!ぱん!


「はい! 皆さん、良く聞いてください。学園からの大事なお話があります」


 フランが軽く手を叩いて先程行われた職員会議の内容を告げる用意をする。

 学園からの新たな発表があると聞かされた2年C組の生徒達の表情は何事かという感じだ。


「皆さんがこれから受講する専門科目の件です。学園側で検討した結果、魔法攻撃術と上級召喚術はカサンドラ先生のクラスが廃止となり、ルウ先生が2つのクラスを受け持ちます。そして全てのクラスに対しての特別措置として定員30名を5名ずつを増員して定員35名とし、改めて最初から受講者を募集するものとします」


 フランから学園の決定事項が告げられると生徒達は驚いた。


「これはルウ先生のクラスの希望者の問題を解決する為とカサンドラ先生がルウ先生の副担当をぜひにと希望した事で実現しました。そして今回上級召喚術での最大の変更点は召喚魔法の課題をクリアしていなくても受講出来る規則になった事です」


 フランが言うとクラスの全員が思わずどよめく。

 課題をクリアしていない生徒でも、より上級の召喚魔法を学べるチャンスが生まれたからである。


 そしてフランとルウは各クラスの確定表を貼り出した。

 決定した副担当を一緒に記載したのも今年が始めてである。


 魔法女子学園専門クラスと担当者一覧 


☆魔法攻撃術

  A組:シンディ・ライアン(カサンドラ・ボワデフル)

  B組: ルウ・ブランデル(フランシスカ・ドゥメール、)

  C組:ルウ・ブランデル

  (フランシスカ・ドゥメール、カサンドラ・ボワデフル)


☆魔法防御術

  A組:ケルトゥリ・エイルトヴァーラ (シンディ・ライアン)

  B組:クロティルド・ボードリエ(オルスタンス・アシャール)


☆上級召喚術

  A組:ルウ・ブランデル(カサンドラ・ボワデフル)

  B組:ルウ・ブランデル

  (リリアーヌ・ブリュレ、サラ・セザール)


☆魔道具研究

  A組:ルネ・ボワデフル(クロティルド・ボードリエ)

  B組ルウ・ブランデル(アドリーヌ・コレット)


☆錬金術

  A組:ケルトゥリ・エイルトヴァーラ(アドリーヌ・コレット)

  B組:ルネ・ボワデフル(サラ・セザール)


☆占術

  A組:フランシスカ・ドゥメール(アドリーヌ・コレット)

  B組:オルスタンス・アシャール(リリアーヌ・ブリュレ)


 専門科目のクラスの一覧表を指差しながらルウは軽く頭を下げた。


「いろいろと事情があってな。一部クラスの入れ替えがあるけど、これで確定だぞ。各クラス5名増員で35名だからな。学園の都合でお前達には手間を掛けて悪いが、改めて受講を申し込んでくれよ」


「「「は~いっ!」」」


 ルウの誠実な態度を生徒達も感じ取ったのか、皆が大きな声で返事をする。


「ようし、今から話す事はメモを取っておいてくれ。明日の火曜日一杯申し込みを受けて明後日の水曜日に各クラスの確定受講者を発表する。それでもやはり定員オーバーになってしまったクラスは木曜日に入室試験を行う。試験内容は科目や先生によって違うから注意するんだ」


「「「は~いっ!」」」


「金曜日にその入室試験の合否発表だ。同時に最終の募集があるから受講クラスが決まっていなかったら空き枠のあるクラスに応募するという事になるんだ」


「「「分りました、頑張りま~す!」」」


 生徒達の元気の良い返事を聞いてルウもフランも笑顔である。

 特にフランには感慨深い。

 去年の今頃のC組は新入生として入学したての生意気盛りの生徒達だったからフランも手を焼いていたのである。

 授業はさぼるし、フランの言う事も殆ど聞かない。

 はっきり言ってフランは生徒達を持て余し気味であった。

 フラン自身が生きるという事に対して張りの無い生活を送っていたし、教師という職業に誇りが持てなかったから尚更なのだ。


 そんなクラスをルウが大きく変えてくれた。

 生徒達にとって最初は異性の教師という興味本位の存在だったに違いない。

 しかしルウの新しい魔法と訓練方法は生徒達のやる気に火をつけた。

 その結果が今ここにあるのだ。

 

 加えてルウはフランをも一緒に変えてくれたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 魔法女子学園2年C組、月曜日午前10時……


 第1時限目が終わり、授業時間は午後12時まで自習となった。

 これはルウとフランが2年C組の生徒達が専門科目の申し込みに関して、再度考える為の時間を与える意味もあってのものだ。

 それが証拠に教室の片隅に申し込み用紙と受け付け用の箱が改めて置かれたのである。


 そんな2年C組の教室の片隅でオレリー、ジョゼフィーヌ、そしてリーリャの3人が集まり、相談をしていたのだ。

 当然、内容は専門科目の受講申し込みの件である。


「吃驚したわ……旦那様のクラスが増えるなんて!」


 意外な展開にオレリーは声をひそめながら首を傾げる。


「カサンドラ先生に何かあったのでしょうか? ところでリーリャは申し込み準備は、ばっちりですか?」


 ジョゼフィーヌも不思議そうな表情だが、リーリャの顔を見てつい尋ねる。

 学園の事情を余り知らぬリーリャは、にこにこしているだけだ。


「はいっ! だん……いや、ルウ先生のクラスに申し込むのは決めていますけど……増えちゃいましたよね」


「確かに2クラスの担当兼務って……相変わらず凄い人気ですわ。でも身体が心配です、大丈夫でしょうか?」


「後でフラン姉に……いえ、本人にお聞きしましょう。私達が気にしているって」


 3人がルウの事を心配そうに話しているとこれまた気合が入った顔で近付いて来たのはアンナ・ブシェである。


「あら、皆さん! お揃いですね。でも面白い組み合わせ……」


 平民のオレリーに、伯爵令嬢のジョゼフィーヌ、そしてロドニア王国王女のリーリャの組合せは確かに不思議で面白い組み合わせと見えるようだ。


「面白いって……あのね」


 オレリーは思わず顔をしかめるが、アンナは意に介さない。


「私はルウ先生の魔道具研究を志望するの。5名も増えたから何とか受講出来ないかしら? 何か合格のコツみたいなものは無いかしら?」


 拳を握り締めてオレリー達に話し掛けるアンナ。

 確か彼女は有名な商家の娘であったから魔法鑑定士の資格は絶対に取得しようと考えているのだろう。

 

 傍から見ても彼女の気合が入っているのが分るわ。

 

 オレリーはそう考えていたのである。

 

 ここで彼女達にはお互いに知らない事実があった。

 アンナはオレリー達がルウの妻だとは一切知らなかったし、オレリーはアンナがフランの弟であるジョルジュと交際しているとは全く関知していなかったのである。


 それが分っていたらこの3人のグループにアンナが加わっていたに違いない。


「アンナ!」


 クラスでアンナの親友と目されているルイーズ・ベルチェがアンナを呼んでいる。

 彼女等は業種の違う有名な商家の娘であるという事もあってとても仲が良いのだ。


「ああ、失礼。では皆さん、ごきげんよう」


 アンナはオレリー達に一礼すると去って行く。


「合格するコツ……ですって?」


 オレリーがそう呟いて溜息を吐くとジョゼフィーヌとリーリャもそれに続いた。


「それが分れば苦労しないのですわ」「全くですね」


 3人の溜息は誰にも聞かれないように吐かれ、教室の生徒達の話し声の中にそっと溶け込んでいったのであった。

ここまでお読み頂きありがとうございます!

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