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第321話 「鉄から鋼へ」

申し訳ありませんが、鉄刃団の首領の名前変更しました。

ジュリアン・アルディーニ

⇒リベルト・アルディーニ

 王都の中央広場を歩くルウとリベルト、法衣ローブ姿の貴族らしい魔法使いと派手な革鎧姿の男の組み合わせはとても目立っていた。


「……兄貴は平気なんですかい?」


 リベルトが周囲の視線を気にして恐る恐る聞いて来る。


「何が?」


「俺と歩いているとカタギである兄貴まで後ろ指をさされるって事がですよ」


 済まなそうに言うリベルトの指摘に対してルウはさして気にとめた様子も無い。


「ははっ、関係ないな。それより『兄貴』って何だ?」


「ここまで世話になったのに加えて、これから部下共々世話になる方はそう呼ぶしかないっしょ!」


 ひたすら『兄貴』と呼び続けるリベルトにルウは苦笑する。


「……まあ良いが、お前は一体何歳なんだ?」


 年齢を聞かれたリベルトは恥ずかしそうに頭を掻いた。


「27歳っす。誰からも年齢よりは少し老けているって言われますね」


「ははっ、悪いが俺は27歳のお前から見たら20歳そこそこの小僧だぞ。良いのか?」


「とんでもないっす! 年齢は関係ないっすよ、人間の器の大きさっす!」


「お前……話し方まで変わって来たが、まあ良いか」


 ルウは肩を竦めると、リベルトと共に歩き続けた。

 行き先はスラム街の外れにある鉄刃団アイエンブレイドの旧本部である。


「出る時にあいつらには俺から、兄貴と一緒に戻るまで大人しくしているようにと言いましたが……大丈夫かなぁ?」


 リベルトは旧本部に残して来た部下達が気になるようだ。


「お前の部下達なら今、俺の従士が見ている。多分、大丈夫だろう」


「あ、あのバルバって言うおっさん以外にも従士さんが居るんですかい? とんでもないっす」


 リベルトは吃驚したようで目を大きく見開いた。


「ははっ。未だ、たくさん居るぞ。同じくらい怖い奴さ」


「……怖い奴ね……当然、強面こわもてのおっさんですよね? 兄貴の嫁さん達が超絶美少女ばかりだから余計に目立つっていうか、はっきりいって滅茶苦茶怖いんですよ」


「ああ、そう言うと多分奴は怒るだろうが、強面のおっさんだな」


「くうう……見たくねぇ、会いたくねぇ!」


 歩きながら大袈裟に頭を抱えるリベルトに苦笑しながら2人は鉄刃団アイエンブレイドの旧本部に到着したのであった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「ルウ様、お帰りなさいませ!」


「「「「「「「ルウ様、お帰りなさいませ!」」」」」」」


「う、うおっ!? お、お前達!」


 ルウ達が旧本部に入ると入り口で出迎えたのは1人の猛禽類のような鋭い目をした、これまたバルバトス以上の逞しい体格をした巨躯の男である。

 彼がルウの帰還を伝えると、すかさず一斉に響き渡る声は鉄刃団アイエンブレイドのメンバー全員が巨躯の男の声を間を置かせず同様に復唱させたものだ。

 その一糸の乱れも無い様子にリベルトは驚いてしまう。

 自分が首領ボスとして統率していた時とはまるで違っているのだ。


「ご苦労だった、アーモン」


「は!」


「大丈夫そうか?」


「問題ありません」


 即座に報告を入れるアーモンことアモンに対してルウは満足そうに頷いた。

 傍から見ているリベルトには何の事か分らなかったが、鉄刃団アイエンブレイドのメンバーの中には首領ボスのリベルトが敗れたと聞いて不満を洩らしたり、物騒な事を叫び自暴自棄になろうとする者が実は居たのである。


 こんな時に役立つのがアモンの能力だ。


 彼は強靭な身体と共に多彩な能力を誇るが、その中に人の不和や不満を調整する力がある。

 ルウはそこを見込み、鉄刃団アイエンブレイドのメンバーの監視を兼ねて彼を派遣したのである。


「リベルト、紹介しよう。彼が俺の従士であるアーモンだ」


「俺はアーモン、ルウ様の従士だ。縁あってお前達に力を貸す事になった。今後とも宜しくな」


 リベルトの予想以上に迫力のある男である。

 肉食獣のような顔付きをした男から、大きくごつい手で強く握手されたリベルトは若干萎縮してしまう。


「では、お前達鉄刃団アイエンブレイドの今後の話をしよう。リベルト、悪いがあのカジノの部屋に全員集まるよう指示をしてくれ」


「え? 兄貴……アーモンさんに指示をさせるのではないのでしょうか?」


「ははっ、何を言っている。彼等のリーダーはあくまでもお前なんだよ。しっかりと自覚してくれ」


 戸惑うリベルトではあったがルウだけではなく、アモンにもルウの指示通りにするように促されるとメンバー達に集合の指示を出したのであった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 旧鉄刃団アイエンブレイド本部、日曜日午後2時……


 ルウは全員揃った鉄刃団アイエンブレイドのメンバー達を前に話をしようとしている。


「俺の事を知っている人間も居ると思う。昨夜は世話になったな」


 ルウに痛めつけられた彼等ではあったが、皆真面目な顔をしており悔しそうな表情の者は居ない。

 これはアモンの能力の効果は当然だが、元々リベルトがルウに服従する事をしっかりと言い含めているからだ。


「さて早速本題に入ろう。今回の件で俺はお前達鉄刃団アイエンブレイドの金主になった。そしてこの俺が決めた事だ。結論から言えば鉄刃団アイエンブレイドは解散だ」


 きっぱりと言い切るルウ。

 静まり返る部屋の中でコホンと咳払いする彼の声だけが響く。

 ルウはそんな部屋の中を見渡し、若干の間を持って言い直す。


「いや……違うな。新しく生まれ変わると言って良いだろう」


 解散と言われて一瞬動揺が走るメンバー達ではあったが、直ぐに生まれ変わると聞いて全員が安堵の表情を浮かべている。

 皆、鉄刃団アイエンブレイドが無くなりでもしたら行き場の無い者たちばかりなのだ。


「今迄の鉄刃団アイエンブレイドは人の弱みにつけ込む愚連隊だったが……真っ当な商売をやる『商会』に生まれ変わるんだ」


「商会?」「商会って何だ?」「真っ当ってどんな商売をやるんだ?」


 そんな声がメンバー達から上がる中でリベルトが挙手をしてルウに尋ねる。


「カタギになるって事だよな、兄貴」


 リベルトの言葉に対してルウは大きく頷いた。


「名前も、俺がもう決めてある。カリュプス商会だ。鉄よりももっと強靭な鋼となってお前達はカタギに生まれ変わるのさ」


 それを聞いて呆気に取られるリベルト達をルウは穏やかな表情で見守っていたのであった。

ここまでお読み頂きありがとうございます!

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