第305話 「カサンドラの横暴」
魔法女子学園職員室金曜日午後3時30分……
この日のこの時間で専門科目の第一次申し込みは終了した。
学園は先週水曜日に希望者満枠のクラスを中間発表で明らかにしたが、それに加えて今日までの申し込みによってどれだけ状況が変化したか……
申し込んだ生徒達には気になる所であろう。
ちなみに水曜日の中間発表時点ではルウの担当は全て満枠であった。
☆魔法攻撃術
A組:シンディ・ライアン⇒満枠
B組:カサンドラ・ボワデフル
C組:ルウ・ブランデル(フランシスカ・ドゥメール)⇒満枠
☆魔法防御術
A組:クロティルド・ボードリエ⇒満枠
B組:ケルトゥリ・エイルトヴァーラ⇒満枠
☆上級召喚術
A組:カサンドラ・ボワデフル
B組:ルウ・ブランデル⇒満枠
☆魔道具研究
A組:ルネ・ボワデフル⇒満枠
B組ルウ・ブランデル(アドリーヌ・コレット)⇒満枠
☆錬金術
A組:ケルトゥリ・エイルトヴァーラ(アドリーヌ・コレット)⇒満枠
B組:ルネ・ボワデフル(サラ・セザール)
☆占術
A組:フランシスカ・ドゥメール(アドリーヌ・コレット)⇒満枠
B組:オルスタンス・アシャール
こうなると月曜日の1次発表の際もルウのクラスが満枠では無くなるという可能性は殆ど考えられない。
それどころか申込者がクラスの定員を遥かにオーバーして木曜日に入室試験を行わねばならなくなるのは確実だ。
「来週の木曜日に行う試験の用意を今のうちにしておいた方が良いわ、ルウ先生」
「そうですね。校長の仰る通り筆記と実地の試験問題を考えないといけませんよ、ルウ先生」
魔法攻撃術と魔道具研究の副担当であるフランとアドリーヌがルウに話し掛けた。
試験用紙の手配と実技試験の内容の検討、試験会場の手配……やる事はたくさんあるのだ。
「その上で最終面接もしなくてはならないか……しかし不合格者を落とすというのは辛いものだな」
ルウは寂しそうな表情をする。
「確かにやる気がある生徒を学園の決まりとはいえ、篩にかけるのは辛いですね」
「同感です……」
ルウの言葉と表情に釣られてフランとアドリーヌの表情が曇る。
そんな2人の表情を見てルウもこのままではいけないと考えたようだ。
「何か良い方法が無いか、アデライド理事長と相談してみよう」
顔を見合わせて頷いた3人であったが……
「あのぉ……」「ルウ先生……」
そこに控えめな声でおずおずと話し掛けた来た者が2名居る。
「ルウ先生……上級召喚術のクラスの副担当って、未だお決めになっていないのですよね」
「以前お手伝いした時にルウ先生のクラスの副担任がとても良いなって思っていましたので」
上級召喚術を専門科目として担当しているリリアーヌ・ブリュレにサラ・セザールの両名であった。
「ははっ、嬉しいけど……副担当って1名だよな」
「ふふふ。ルウ先生、もてもてですね。学園の規則では確かに『基本的』には1名となっていますが絶対にではありません」
ルウが困ったような表情をするとフランが魔法女子学園の規定を教えてくれた。
ようは必要性があって折り合えば副担当は2名以上でも問題無いらしい。
「じゃあ2人でお願い……「ちょっと待ったぁ!」」
ルウがリリアーヌとサラに副担当を頼もうとした瞬間である。
上級召喚術A組担当のカサンドラ・ボワデフルが慌てて間に入ったのだ。
「ルウ先生! 基本的とはいえ規則は一応守ってくれないと困るよ 人が足りていないのだからね」
規則!
その言葉に反応したのはルウではなかった。
リリアーヌとサラが大きな声を上げてルウにお願いを始めたのである。
まるでカサンドラなどこの場に居ないかのような態度だ。
「なっ!?」
余りの事に唖然とするカサンドラ。
ルウはその場を収めようと考えたらしくとりあえず話し合おうと提案する。
「ははっ、とりあえず4人で話し合おうか」
そんなルウの言葉にカサンドラ、リリアーヌ、サラの3人は顔を伏せ、フランとアドリーヌは肩を竦めたのであった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
魔法女子学園本校舎4階職員用会議室、午後4時……
会議室にはルウとカサンドラ、リリアーヌ、サラの4人に加えてフランが校長として立会人で参加していた。
「じゃあ、どうあっても2人はカサンドラ先生の副担当は受けられない……こういう事だな」
ルウがリリアーヌとサラの話を聞くと別に今の所、カサンドラから指名が無いのとルウの副担当が空いていたので申し入れるタイミングだと思って声を掛けたらお互いに重なってしまったという。
見かねたフランがリリアーヌとサラに対して問い質す。
「何故、2人はカサンドラ先生の副担当がそんなに嫌なの? まずはリリアーヌ先生から話してくれる?」
「はい。私は一昨年カサンドラ先生の受け持ちクラスの副担当をやりましたが、彼女は私に対して副担当の域を超えるお願いばかりするのですよ」
リリアーヌの訴えは悲壮感に満ちている。
表情が真剣なので予想以上に大変なようだ。
「副担当の域を超えるお願い?」
「あううう、言わないでくれ! リリアーヌ先輩頼む!」
いきなり止めにかかるカサンドラを押し留めてリリアーヌに話す様に促すフラン。
「魔法の研究が忙しいから私に自由お見合いの席をセッティングして自分を呼べとか」
「あううう……」
「彼女は超面食いで、その上に長身で細マッチョ系の男性が好みなのです。でもそんな人滅多に居ないじゃないですか。そうしたら自由お見合いの席で自分の好みでは無い男性には容赦なく嫌味を言うし平気で馬鹿にしますから相手の男性陣の評判は最悪。お見合いが終わった後でも幹事の私に文句ばかり言って私の立場は台無し……これって酷いと思いません」
「…………」
黙り込んでしまったカサンドラ……沈黙は肯定の証であろう。
リリアーヌが切々と語る話を聞いていたフランは呆れたように溜息を吐いたのであった。
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