第283話 「成長」
リーリャの存在を失念しておりました。
第283話からの設定を一部変えて改稿してあります、ご容赦下さい。
魔法女子学園職員室前掲示板、水曜日午後12時……
お昼休みだというのにこの職員室前の掲示板には数十人もの生徒達が詰め掛けていた。
専門科目の担当教師別申し込み状況が発表されるからである。
2年A組からC組の生徒達が自分の希望枠3枠に対して希望を出すのだが人気のクラスはもう満枠になっている事が容易に予想出来た。
各クラスは基本枠が定員30名となっており、定員を超える場合は入室試験が行なわれるのである。
それを踏まえて科目は好きだが選に洩れると考える生徒は比較的選択が容易な定員割れのクラスに希望を出し直す事も考えるのだ。
その場合は自分のクラスの担任や副担任に申し入れをして希望を出し直すのである。
生徒達の中には2年C組の生徒達もたくさんおり、当然オレリーとジョゼフィーヌ、そしてリーリャの姿も見られたのだ。
やがてルウとアドリーヌが出てくると生徒達から声が上がる。
3人の手には丸めた中間発表の紙があったからだ。
ルウは早速、その紙を掲示板に貼り出した。
内容を見た生徒達からどよめきが起こる。
オレリー達3人も食い入るように視線を走らせた。
それは下記のような状況である。
この前のフランの話と唯一内容が変わっているのは副担当が発表されている事だ。
専門科目クラス申し込み状況中間発表
( )は副担任で副担当記載なしは該当者無しか調整中となります。
☆魔法攻撃術
A組:シンディ・ライアン⇒満枠
B組:カサンドラ・ボワデフル
C組:ルウ・ブランデル(フランシスカ・ドゥメール)⇒満枠
☆魔法防御術
A組:クロティルド・ボードリエ⇒満枠
B組:ケルトゥリ・エイルトヴァーラ⇒満枠
☆上級召喚術
A組:カサンドラ・ボワデフル
B組:ルウ・ブランデル⇒満枠
☆魔道具研究
A組:ルネ・ボワデフル⇒満枠
B組ルウ・ブランデル(アドリーヌ・コレット)⇒満枠
☆錬金術
A組:ケルトゥリ・エイルトヴァーラ(アドリーヌ・コレット)⇒満枠
B組:ルネ・ボワデフル(サラ・セザール)
☆占術
A組:フランシスカ・ドゥメール(アドリーヌ・コレット)⇒満枠
B組:オルスタンス・アシャール
掲出し終わるとルウは笑顔で手を振って、アドリーヌも微笑を浮かべて職員室に戻って行った。
生徒達はオレリー達と同様に食い入るように内容を確認した後、友人達といろいろ話している。
多分、状況と今後の対策を話しているに違いない。
オレリー達3人も決して例外ではなかった。
「どうしましょう。やはり、だんな……いえ、ルウ先生の授業は全て満枠ですよ」
オレリーがやっぱりといった表情を浮かべる。
「私達と考える事は皆、同じね。仕方が無いわ、来週の入室試験までにしっかり勉強しましょう。中でも魔道具研究は倍率が凄くなると思うのよ」
確かにオレリーの言う通り、ルウがS級の魔法鑑定士の資格があると知ったら更に応募者が殺到するのは明白である。
「そうですわね……何せ、資格が資格ですからね」
ジョゼフィーヌが納得したように頷いた。
それを聞いたリーリャは留学生らしい前向きさを見せる。
「じゃあ、私達の希望する3科目はルウ先生の授業だけって事で……背水の陣で勉強を頑張りましょう」
リーリャの言葉にジョゼとオレリーの2人も気合が入ったようだ。
「2人とも聞いてください! ジョゼは燃えてきましたわ! 頑張りますよ」
「私もです! 立場上、あの人の科目が取れなかったら辛すぎます」
2人の言葉を聞いたリーリャは自分達だけで無く他に協力を仰ごうと提案する。
「相談出来るならジゼル姉やナディア姉にも相談しましょう。フラン姉だけはさすがに不味いですか?」
リーリャが控えめに話した最後の相談に関してだけ声のトーンを思い切り下げた3人であった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
魔法女子学園実習棟、水曜日午後12時50分……
今日の午後最初の授業はルウの初めての魔道具研究の体験授業である。
体験授業前に満枠というのが人気先行というのか、2年C組の生徒達から口コミで評判が広がったのか定かではないが、この体験授業にも開始前にもかかわらず50名を超える2年生達が詰め掛けていた。
「オレリー、『例の情報』が公開されていなくても相変わらず凄い混雑……ですわね」
「そうね、ジョゼ。これで発表されたらどうなるのかしら……怖いね」
「本当に私達の先生って……凄過ぎます」
3人はこうなる事を予想して昼食を早めに食べて12時30分には教室に来ていたが、その時点でもう7割方、席が埋まっていて吃驚したのである。
着席してホッとしたのも束の間、3人が座って10分程経つとあっという間に教室は満席になり、立ち見まで出る程、盛況になってしまったのだ。
午後1時の授業開始まで、後5分という所でルウとアドリーヌがやって来た。
先日、食事会をしていろいろ話したせいだろうか、アドリーヌは何となしにルウに対して甘えるような様子である。
「ジョゼ、リーリャ。彼女はこの授業の副担当のアドリーヌ先生よ……先日、あの人の誘いで、ほら」
「ああ、例の『自由お見合い』でしたっけ……そんな会はとても危険ですわね……」
「リーリャにはとても悪~い予感がします。何人も女性が絡みそうな……」
3人はお互いに顔を見合わせて苦笑した。
「でも……あの人……ほら絶対に……好きですよ。分り易い方ですもの……」
リーリャがそう言うとジョゼフィーヌも同意する。
「あの方は私が調べた所では確かコレット辺境伯の次女で年齢は今年で23歳。フラン姉と同じですね。子供の頃から占術の才があってヴァレンタイン魔法大学を優秀な成績で卒業されたと聞きました……身体は健康そのもの、性格は到って真面目……だそうですわ」
アドリーヌの事をすらすらと述べるジョゼフィーヌに今度はオレリーが吃驚した。
「ええっ、ジョゼ! 何で彼女の事がそこまで分るの?」
思わず問い質すオレリーにジョゼフィーヌは鼻を鳴らして当り前といった面持ちで答える。
「オレリー、当り前ですわ。立場的に表立って反対は出来ませんけど私達の『家族』になる可能性のある方でしたらジョゼは自分の『目と耳』を使って徹底的に調べますの。その方が後々お互いの幸せの為ですから」
きっぱりと言い放つジョゼフィーヌにオレリーとリーリャは若干引き気味だ。
そんな2人に対してジョゼは諭すように言う。
「2人とも良~く考えてみて下さい。人間には元々相性というものがありますの。家族として迎える私達も相手の事を最大限理解した上で努力すべきです。まあ私が見て、アドリーヌ先生は今の所『合格』……ですけど」
2人とも段々、ジョゼの言う事が分って来たようだ。
「わ、分ったわ……私も相性が悪いのは困るけど……万が一性格が合いそうじゃない人でも事前に相手の事が良く分っていればやり易いものね」
「未だ正式な立場ではない私は偉そうな事は言えませんが、た、確かにそうですね」
オレリーとリーリャが納得したと言うと、ジョゼフィーヌは満足そうに頷いた。
「分って頂ければ良いのです。ただ、これは全てに言える事ですわ。私達はジゼル姉の言う通り、つい甘えて依存してしまいます。自分で出来る事は自分でやらなくてはいけませんし、それが家族全体の幸せに繋がりますもの」
オレリーはその言葉を聞いて、まじまじとジョゼフィーヌを見た。
リーリャはそんな風にジョゼフィーヌを見るオレリーが不可解らしい。。
オレリーは思う、これがかつて『ギャロワのじゃじゃ馬』と呼ばれた我儘娘だろうか?
ジョゼフィーヌはそう思われているとも知らず、きょとんとした表情を浮かべるのであった。
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