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第216話 「様々な経験」

 ルウ達3人が戻ってから5人で摂った食事は今迄リーリャが経験した事の無い楽しいものであった。

 皆、王女と言うより自分に対して生徒として、友人として接してくれるのだ。

 それにしても自分以外の4人は驚くくらい仲が良い。

 余りの仲の良さに羨んでしまう程だ。

 リーリャはふとそんな事を思ったが、ただの気のせいだろうと思って苦笑し首を横に振る。

 そして頭を切り替えると、楽しく話をしながら食べるひとときを料理と共に味う。


 リーリャが暮らしていたロドニアの王宮では家族揃って食べる事自体が稀であり、多くの場合は母と2人か、個々に食べる事が殆どであった。

 母のラダはしつけに厳しく、食事中の私語は厳禁であり2人はいつも黙々と料理を食べていたのだ。


 それがここでは!


 オレリーという平民らしい少女が冗談を言うとジョゼフィーヌといういかにも貴族の令嬢が楽しそうに笑うのだ。

 その様子をルウとフランの先生2人が注意もせずに微笑みながら見守っているのである。

 リーリャは不思議に思ってついフランにその事を指摘した。


「ええ、確かに貴女の言う通りね。淑女としてはこんなに喋りながら食事を摂るなんて普通、いけないわ」


 フランはリーリャの言葉を素直に肯定した。

 リーリャはフランの言葉に可愛く首を傾げる。

 行動と会話が矛盾しているのはどうしてと、いった疑問の仕草だ。

 そんなリーリャにフランは優しく微笑む。


「でもそれもケースバイケースよ。今日の昼食の趣旨は貴女と楽しく食事を摂る事。それを考えたらこの答えは正解ね」


 そうか!


 咄嗟にリーリャは判断したのだ。

 ここ魔法女子学園では言われたままではない、各自が臨機応変に対処し考えて様々な答えを導くのだと。


「それって!」


 リーリャは思わず声を出す。

 彼女にとってそのような勉強方法は食事同様今迄に経験した事のない新鮮なものだったからだ。


「そう……凄く楽しそうですね」


 彼女は納得し大きく頷くと、再び料理を美味しそうに食べ始めたのであった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「じゃあ、リーリャの学園の案内の残りはルウ先生がやります。先生、後は宜しくね」


 フランはリーリャに対してすまし顔で言うとルウに片目を瞑ってみせた。


「私は午後の授業がありますので。ところでリーリャ、3日後の木曜日に貴女の魔法使いとしての実力が現在どれくらいか、試験テストさせて貰うから準備をしておいてね」


「え、ええっ!? 私の実力?」


 いきなり試験をすると言われたリーリャは戸惑う。


「そうよ。貴女は2年C組に編入するんですからね。他の2年生達と余り実力差があっても困るし……そう、良い意味でも悪い意味でもって事」


 じゃあねと手を振るフランと2人の生徒達が自分を見る視線が少し痛い。

 リーリャはそれが何故だろうとぼんやりと考える。

 やがて3人は2年C組の教室に戻って行った。


 学生食堂に残ったのはルウとリーリャの2人である。

 あれから先程の視線の事も考えられないくらいリーリャの頭の中は今、フランに言われた試験の事で一杯だ。


 試験か……試験って一体何をするのかしら?


 リーリャが必死に考えているといきなりポンと肩が叩かれる。


「あ、ああっ!?」


 思わず大きな声をあげたリーリャを何事かと学生食堂を出ようとしていた何人もの生徒達が振り返る。


「どうした、リーリャ!?」


「やっぱり! ルウ先生って……悪魔様です。あの時肩を叩いて励ましてくれた、大きくて温かい手……今の貴方の手と全く同じです」


 頬を膨らませて可愛く睨むリーリャであったがルウの穏やかな表情は変わらない。


「ははっ、お前にもし嫌われたら教師としては不味いだろうから、そう思ってくれていて良いぞ」


 ルウにビジネスライクに言われてますます意地になるリーリャ。


「そんな!? 先生を嫌うなんて……絶対にしません」


「そりゃ、嬉しいね。さあ行こうか」


 ルウは相変わらず飄々として掴みどころがない。

 リーリャは口を尖らせて軽く睨むと小さく頷いたのであった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 魔法女子学園キャンパス、午後1時過ぎ……


 アデライドはリーリャを本校舎の中のみ案内したというので、ルウはリーリャをそれ以外の場所に連れて案内する事にした。

 それはほんの数ヶ月前にフランが自分にしてくれた事だ。

 寄宿舎、実習室棟と案内して行くうちにリーリャが図書室に入りたいと言ったのでルウは研究室棟1階にある図書室に入った。

 広い図書室は重厚な木製の大きな書架がいくつも並び、その中には新旧様々な魔導書が並べられている。

 更に地下1階と地下2階にも蔵書が大量に置いてあるのだ。

 手前のカウンターに居た女性の司書が見知ったルウに軽く会釈するが、連れているのがリーリャと知って更ににっこりと微笑む。

 室内に進んだ2人だが、リーリャはこれほどの魔導書を今迄見た事も無く唯唯圧倒されている。


「わぁ、魔導書がこんなにたくさんあるわ!」


 思わず叫ぶリーリャに対してルウは人差し指を唇に当てた。

 1番奥にあるスペースに多くのテーブルと椅子が並べられていた。

 自習の指示が出た場合、教室ではなくここで調べ物をしながら勉強する生徒もかなり居るのだ。

 今のこの時間でも10人程が熱心に本を見ながら勉強している。

 他の生徒達の集中を乱してはいけないとルウは教えたのだ。

 リーリャも直ぐ理解したようで「御免なさい」と小さく呟いている。

 その時ルウとリーリャの背後から声が掛かった。


「よかったら何か本をお持ちしましょうか?」


 2人が振り返ると先程の女性司書が満面の笑みを浮かべて立っている。


「ああ、悪いな。じゃあ召喚、そして攻撃、防御のそれぞれの基礎の魔導書をお願い出来るかな?」


「お安い御用よ、少し待っていてね」


 基礎の魔導書と聞いて直ぐにルウの意図を察した司書は書架の方に向って行く。


「頼んだのが召喚と攻撃、防御の魔法って何故ですか?」


 ルウが頼んだ魔導書のジャンルの意図が一瞬分からなかったリーリャだが、ルウの次の言葉を聞いて納得した。


「フランシスカ先生が言っていただろう? 試験対策さ」


 試験!? 


 それを聞いたリーリャは真面目な顔をして「お願いします」と大きく頭を下げたのであった。

ここまでお読みいただきありがとうございます!

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