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第191話 「新たな決意」

 翌朝(日曜日)午前6時……


 ルウは目を覚ますと傍らにジゼルが寝息を立てているのを確かめる。

 ウエーブのかかったジゼルの豊かな金髪がルウの目に映える。

 その乱れが昨夜の営みの激しさの名残りを示していたが、彼にはかえって魅力的に感じてしまう。

 ルウは乱れた金髪を丹念に梳き始める。

 うつ伏せになったジゼルの身体は息を呑むほど美しい。

 真っ直ぐで綺麗な背中、見事に括れた腰、そして形の良いお尻まで流れるような曲線はまるで芸術品である。

 思わずルウが指でなぞっていると、寝ていてもさすがにくすぐったかったのであろう。

 目を覚ましたジゼルが吐息を洩らし、身体をよじらせた。


「もう……旦那様ったら、くすぐったいぞ」


「お前の身体が余りにも綺麗だったからな」


 ルウの言葉に驚いたように目を見開いたジゼルは一瞬の間を置いて「嬉しい」と小さく叫ぶとしがみついて来る。


「私は旦那様の妻だ。私の全ては旦那様のものだ……だから」


 ジゼルは上目遣いにルウを見て恥ずかしそうに囁いた。


「も、もう1回……抱いて欲しい」


 ルウはそんなジゼルが愛おしくて、彼女をそっとベッドに横たえるとゆっくりと身体を重ねたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 1時間後(午前7時)……


「う~っ、まだまだ旦那様と一緒にベッドに居たいぞ」


 ジゼルが駄々を捏ねるがルウは首を横に振った。


「ははっ、今日は少しでも荷物の整理をやってから、また異界へ鍛錬に行くぞ」


「た、鍛錬!」


 愚図っていたジゼルが『鍛錬』と聞いてバネ仕掛けの人形のように跳ね上がる。


「ああ、皆が身体強化の魔法を覚えたら『魔導拳』の初歩を教えようと思っている」


「それなら話は別だ。私は起きるぞ! つう!」


 ベッドに降り立ったジゼルは鈍痛を感じた。

 それは初めて男性に抱かれた乙女の痛みがまだ残っているのである。


「ジゼル、大丈夫か。治療キュアーの魔法を掛けよう」


 回復魔法を掛けようとするルウをジゼルは手で制した。


「だ、旦那様。御免なさい! 申し訳ないが、この痛みは今日はこのままにして欲しいのだ」


「このままにか?」


「ああ、私は旦那様に抱かれて『女』になった。その事を実感していたいのだ。駄目か?」


 ジゼルは必死な眼差しで見上げて来る。

 そんなジゼルがルウはいじらしい。


「騎士としては失格かもしれないが、私はその前に『貴方の女』なのだ」


 そんなジゼルをルウはもう1度強く抱き締めたのであった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「ははっ、みんなお早う!」


「お早うございます! つ、つう!」


 大きな声を出して痛がるジゼルにフランは微笑んだ。

 どうやらジゼルがどうして痛がっているかピンと来た様である。


「さあ、ジゼル。席につこうか」


 ルウは優しく囁くとジゼルを支えて椅子に座らせてやる。


「あ、ありがとう。旦那様」


 ルウはジゼルがそっと座るのを確認するとオレリーとアルフレッドが作った朝食を率先して運ぶ。

 それを見た他の妻達も昨夜の片付け同様てきぱきと動いた為、セッティングは簡単に終わった。

 いつものように食事前の黙祷を終えた後、食事開始となる。


「頂きます!」「頂きます」


 焼きたての数種類のパンに、いくつもの野菜が煮込まれたの甘味たっぷりのコンソメスープ、そして新鮮な鶏卵を使用したプレーンオムレツが並んでいる。

 朝早く執事兼料理長のアルフレッドが市場や店に行って仕入れた食材をアルフレッドはもとよりオレリー、モーラルが協力して腕によりをかけて作った朝食だ。


「美味しいっ!」「こ、これは!」

「朝からこんな凄い食事をして良いのだろうか?」


 様々な感嘆の声が上がる中、フランだけが真剣な表情でオレリーにいろいろと聞き取りをしている。

 これはフランの料理に対する意欲がとても高い事を表していた。


 ――30分後


「皆、良いか? 今日の予定の相談だ」


 食事がひと段落して皆が紅茶を啜っているとルウが話を切り出した。

 日曜日という事で魔法女子学園はお休みだが、屋敷の中の片付けをした後で何をやるのかと妻達は耳を傾ける。


「午前中一杯を屋敷の片付けに充てる。頂いた品物は俺とアルフレッドが検品して個人宛の物は届けてやるから皆は自分の部屋の片付けを中心にやってくれ」


「分かりました。ではそのように致します。皆、異議は無い?」


 フランがすかさず他の妻達に問い掛けるとナディアが手を挙げた。


「はいっ! 自分の部屋の整理がついたらボク、旦那様達を手伝います」


「私もだ!」「私もそうする」「私もそうしますわ」

「ちゃっ、ちゃっと片付けますよ」


 これまでのいろいろな行動から皆で協力し合って暮らして行く事を妻達は学習しつつあった。


「それで午後だが昼食後にまた俺の異界で鍛錬をしたいと思う。まずは身体強化の魔法の習得と俺が使っている魔導拳も教授したいと思う」


 それを聞いたジゼルが大きな声で叫んだ。


「私達は個々がレベルアップしなければいけない。ロドニアから留学生としてリーリャ王女が来る事に対して皆で旦那様やフラン姉を助け、そして学園や国を支えるのだ」


 そしてルウに向き直ると「宜しくお願いします」と深く頭を下げたのだ。


「親しき仲にも礼儀あり……ね。旦那様は愛する人であると同時に魔法や体術の師でもあるのだから」


 フランが納得したように頷き、ジゼル同様「宜しくお願いします」と頭を下げると、それを見た他の妻達も「師匠、お願いします!」と一斉に頭を下げたのであった。

ここまでお読みいただきありがとうございます!

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