第1,386話「女傑3人⑱」
『さあ! 決戦だ! 全員出撃!!』
『はいっ!』
ウッラの大号令とともに、全員が、本館へ突入した!
うおおおお~んんん!!!
まず先陣を切ったのは、冥界の魔獣ケルベロスだ。
大いに気合の入った声で咆哮するが、全く攻撃心が込められていない為、
咆哮を聞いても麻痺をする事はない。
健全な鼓舞だといえよう。
続いて、少し距離を取って、テオドラが続く。
彼女はウッラから、雑魚には目もくれず、
ピンポイントで始祖を仕留めるよう命じられ、一層気合が入っていた。
その10mほど後ろにウッラ、マルコシアスが走る。
しばらく『空白地帯』が続く。
始祖と側近は勿論、配下の眷属どもも見当たらない。
敵は全くの無抵抗。
ウッラ達は、まるで「無人の野をゆくがごとく」である。
そのウッラが、念話で心の声を張り上げる。
『マルガ様! 目標たる始祖の所在を基に、進軍指示をお願い致します!』
ウッラの要望を受け、マルコシアスは思念を集中する。
テオドラの破邪葬送の魔力を込め、100個に分けて放った魔導光球は、
今のところ全て無事であり、始祖とその側近を執拗に追っている。
『了解だ! 奴らは、現在本館の最下層に居る! まずは突き当りの階段を下に行け!』
『テオドラ! ケルベロス! 突き当りの階段を下だ!』
『了解!』
わお~ん!
マルコシアス~ウッラから伝わった指示通り、
テオドラとケルベロスは突き当りの階段を下へ。
階下にも敵の姿は見当たらない。
既に撤退したらしい。
ケルベロスとテオドラは更に進む。
ここでようやく、敵3人が現れた。
一見、筋骨隆々なたくましい人間の男性達のようである。
しかし!
まともな人間男子が、吸血鬼の巣窟たるこの旧き砦に居るわけがない。
ううううううう!!!
ケルベロスが唸る。
そしてテオドラはふっと笑った。
肉声で言う。
「お前達は……吸血鬼の一族ではないわね。……名乗りなさい」
ここで、ウッラとマルコシアスが追いついた。
念話でテオドラへ問う。
『どうした、テオドラ』
『妨害者か?』
『はい、マルガ様、ウッラ姉、妨害者です。しかし、吸血鬼ではない人外です』
『ふむ……どうやら始祖の配下、それも時間稼ぎの駒……小物のようだ』
『ふむ。手を貸そうか? テオドラ』
『いえ、私ひとりで問題ありません。……排除します』
3人とケルベロス、念話のやりとりは一瞬である。
一見黙り込んだ女子3人、そして灰色狼風のケルベロスに男3人はいらだった。
「おい! 姉ちゃん達、結構暴れてくれたじゃないか! モースト様はお怒りだ」
「償って貰おうじゃないか!」
「お前らの……命でな!」
3人目の男が吐き捨てるように言った瞬間。
男達全員の容姿が著しく変貌した。
身の毛もよだつような雄たけびも響き渡る。
いえおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!
くわあおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!
ひへいおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!
3人の姿は狼の獣人……人狼へと変化したのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
3人の女子とケルベロスの行く手を阻み、妨害。
命を奪おうとしている男3人の正体は……
半人半獣の魔物、ウェアウルフである。
補足しよう。
ウェアウルフとは、いわゆる『人狼』である。
ライカンスロープとも言うが、いずれも人、狼の合成語だ。
抜きん出た身体能力、鋭い爪と牙を持つウェアウルフは、
人間を襲い、喰らう人外の捕食者である。
満月の夜、最大限、能力を発揮。
噛まれると、被害者も同族化、ウェアウルフ化するとも言われている。
ウェアウルフは一般的に、夜間人間から、狼に変身するのだが……
この世界のウェアウルフは、恒久的に狼の姿をした、
二足歩行の人型魔物ヒューマノイドなのである。
人狼の姿を見るだけで人は恐怖するという。
しかし!
ケルベロスは勿論、
テオドラ、ウッラ、マルコシアスが人狼を怖れるわけがない。
その理由を人狼どもは知る由もない。
どうやら3人の女子の正体を知らぬようなのだ。
その事実からしても、マルコシアスの言う通り、人狼どもは単なる時間稼ぎ。
単なる駒に過ぎない。
しかし……
無知というものは怖ろしい。
根拠のない自信を振りかざすのも無知から来るものだ。
「おい、姉ちゃんども、男の大人をなめるんじゃねえぜ!」
「ひひひひひ! 俺達の牙と爪で! 噛み砕き! 引き裂いてやる!」
「獣人化した俺達の動きは人間の3倍だ。ついて来れるわけがないぜ!」
人狼3人の吐く言葉を、テオドラは無表情で聞いていた。
そして、淡々と言う。
「……そうですか? じゃあ、試してみましょう!」
言葉が終わると同時に、
しゅば!
テオドラの身体がぶれたようになり、消えた!
どしゅ! がん! どかかっ!
そしてほぼ同時に肉を打つ鈍い音が鳴り、人狼3体はあっという間に倒れ……
絶命していたのである。
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