第1,382話「女傑3人⑭」
『では、ケルべロス、私達も行きましょう』
テオドラが声をかけると、ケルベロスはじっと彼女を見た後、
無言で先頭に立ち、軽快な足さばきで、階段を昇り始めた。
そのテオドラとケルベロスの少し前方、
天井近くの空中を、魔導光球が「ふわふわ」と飛んで行く。
その魔導光球が淡く照らす上方への階段は、ところどころ崩れ落ちているが、
テオドラ、ケルベロスは「すっ」と軽く飛翔し、難なくクリア。
更に上へ上へと昇って行く。
ふたりは、しばらく昇ったが、
石造りの回廊は、ただ石を積み上げただけの仕様、単調で代り映えしない風景が続いて行く。
ふたりは注意深く進んではいるが、
今のところ、吸血鬼の始祖の眷属を始め、敵が潜んでいる様子はない。
テオドラ、ケルベロスの魔力感知、そして魔導光球の探知機能にも反応はない。
テオドラは、ケルベロスへ話しかける。
当然、心と心の会話、念話である。
『ケルベロス、敵の気配がないわね……まあ、奴らがスキルを使うのは、予想通りだけれど』
『………………』
対して、ケルベロスは沈黙で応えたが、『肯定』の波動を送って来た。
ふたりの会話にある通り、
吸血鬼一族には、放出する魔力を極力抑える『気配消し』のスキルがある。
一族の中でも最強たる始祖は勿論、その眷属どもなら、強力な『気配消し』を身につけているはずだ。
テオドラは思い切りが良い。
彼女は最初から照明魔法『魔導光球』を呼び出し、
敵に敢えてこちらの存在と位置を知らしめるという『逆手』を使っている。
更にこちらから仕掛けても所詮は同じ。
問題はない。
『上手く隠れてるみたいね。仕方がない……誘ってみるわ』
『………………』
今回もやはりケルベロスは、『沈黙は肯定の証』で応えた。
『うふふ……行くわよ、ケルベロス』
『………………』
『もしも眷属どもが隠れていたら、追い立ててやる! つまり勢子ね! 破邪と葬送の魔法を追加するけど、問題はないわね』
『………………』
テオドラは念話で、言霊を唱える。
『ルークス!』
ぽわ!
ルウから伝授された照明魔法の言霊である。
先行させたのは魔力を抑えた『魔導光球』ひとつなのだが、
今度はまばゆいばかりに輝く『魔導光球』が『10個』も闇に浮かび上がった。
本来、この『魔導光球』には3つの役目があった。
行く手を照らすのは勿論、魔力感知の発動体としてアンテナとなり、
更に囮の役目も果たす。
そして更に更に、今回は『勢子』の役目もテオドラは課した。
『魔導光球』へ不死者が苦手とする破邪、葬送の魔法も込めて、生成したのである。
『さあ! 行きなさい! 光球達!』
テオドラが命じると、光球は今度は「びゅん」と高速で飛んでいったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
淡く照らしていた『魔導光球』に、
まばゆいばかりに照らす『魔導光球10個』が加わり、
テオドラとケルベロスが進む階段は昼間のように明るくなった。
そして!
ただ明るいだけではない。
べたな表現だが……
害虫を燻し出す薬剤の煙のように、破邪と葬送の波動が階段に満ち、
邪なる者達は、苦痛のあまり、姿を現すはずなのだ。
強化し、パワーアップした『魔導光球』の効果はすぐに表れた。
ぐぎがごごごごごご!!!
がああああああああ!!!
ぎいえええええええ!!!
うがおおおおおおお!!!
苦し気な声が響いたかと思えば、魔導光球が照らす白光を避けるように、いくつもの黒い影が動いたのだ。
『追い出し成功! 今よ! ケルベロス! 奴らへ灼熱の炎を吐け!』
『うおん!』
逃げ惑う黒い影へ向け、かっと真っ赤な口を大きく開いたケルベロス。
ごぐはああああああああああああああああああああ!!!!!
がん!と、頬を叩かれるような強烈な熱き炎が、凄まじい速度で吐き出され、
黒い影どもへ襲いかかった。
ぎゃあああああああああああああああああああ!!!!!
ケルベロスの吐く激しい炎が何体かの黒い影を捉え、飲み込み、焼き尽くして行き、
断末魔の悲鳴が響きわたる。
同時に!
テオドラは飛んでいた。
当然、逃げ隠れる黒い影……始祖の眷属どもを捕らえ、討伐する為だ。
テオドラは、眷属どもに対し、まともに攻撃などしない。
先ほど、ドラゴンゾンビに大ダメージを与えたのと同様。
軽く触るだけで、奴らの魔力の99%を吸収してしまうのだ。
残存魔力が残りたった1%になった眷属どもは、少し動くだけで消失して行く。
ぼしゅっ!ぼしゅっ!ぼしゅっ!ぼしゅっ!ぼしゅっ!ぼしゅっ!ぼしゅっ!
ぼしゅっ!ぼしゅっ!ぼしゅっ!ぼしゅっ!ぼしゅっ!ぼしゅっ!ぼしゅっ!
魔導光球に照らされ、昼間のように明るい階段には、
眷属どもが消失する音が連続で鳴り響いていたのである。
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