第1,381話「女傑3人⑬」
巨大なドラゴンゾンビに続き、数多のスケルトン軍団と、デュラハン10体を一蹴した、
ウッラ達女傑3人と、魔獣ケルベロス。
風のようにベリーを走り抜け、モットの古城、入り口に到達した。
ここで、「うおん!」とケルベロスが吠え、
斥候、偵察を申し出た。
更に手を挙げたのが、テオドラである。
「ケルベロスとともに、私が斥候、偵察の任に就きましょう」
この古城は少し特殊な構造となっていた。
入口から10階建ての塔へ入り、上り切った10階から隣接する本館へ入る仕様となっていたのだ。
本館への入り口は他になく、窓は全て特殊な膠灰でふさがれていた。
ちなみに膠灰とは、ズバリ、セメントであり、
水や液剤などにより水和や重合し硬化する粉体を指す。
話を戻そう。
ウッラは迷った。
ルウの意向を汲み、斥候、偵察には、ケルベロスを単独で行かせようと思っていたからだ。
仕方なくウッラは、マルコシアスへ意見を求めてみる。
「マルガ様」
対してマルコシアスは笑顔。
「ウッラ」
「はい」
「テオドラの任務は、クランのリーダーである、お前が決める事だ」
「そ、そうですか」
「うむ! ルウ様の意向はそれほど気にするな。ケルベロスには基本的な命令だけ出されて、後は私達の指示に従えとおっしゃっているはずだ」
「な、成る程! で、マルガ様のご判断は?」
「うむ、私はテオドラのやる気を尊重し、ケルベロスに同行させても良いと思う」
「テオドラのやる気を……尊重するのですか」
「ああ、尊重する!」
ここでウッラは、テオドラを見た。
目が合った!
テオドラの目力は相当なものである。
普段物静かな分、内に闘志を秘めていた。
ウッラは決断した。
テオドラとケルベロスへ指示を出す。
「テオドラ! ケルベロスとともに、斥候、偵察を! もし敵と遭遇したら、無理のないレベルで、相手の実力、手の内を確かめて来い! 倒しても全然構わん!」
「はいっ!」
「但し! 安全が第一! 念話連絡は怠るな! けして最奥までは行かず、塔を上り切ったら一旦、戻る事!」
「心得ました!」
「よし! ケルベロス! お前にもテオドラと同じ命令を出す! その上で、テオドラを、しっかりとフォローしてやってくれ!」
「うおん!」
「マルガ様と私は、戦闘態勢のまま、ひとまずここで待機。テオドラの連絡次第で、どう動くか、検討しましょう。宜しいですか?」
「了解だ!」
これでウッラの指示は全員へ行き渡った。
すかさず、凛としたウッラの声が響く。
「作戦発動!」
「はい!」
「うおん!」
既に4人全員の索敵で、塔の入り口付近に敵の待ち伏せはないと判明していた。
テオドラとケルベロスはダッシュ。
ケルベロスが盾となり、塔の入口へ突撃したのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
テオドラとケルベロスが飛び込んだ塔は、石造り。
それも長い年月の間に所々、崩れ落ちていた。
長い階段の回廊が続いているが、常人では昇る事は不可能だ。
そして内部は全くの闇。
視界はさえぎられている。
しかし、テオドラとケルベロスの行く手を阻む事は出来ない。
ふたりとも、飛翔能力とともに、卓越した身体能力を誇り、階段が全て崩落していたとしても、問題がない。
真っ暗闇も全く問題はない。
夜目が利くどころではなかった。
失われた古代魔法王国、ガルドルド魔法工学技術の結晶ともいえるテオドラの瞳は闇を簡単に見通す。
冥界の魔獣ケルベロスも、このような闇は、生来の住処に近い環境だと、
言いたげに平気の平左だ。
闇にまぎれ、敵へ接近する事は、ふたりとも大楽勝だ。
しかし、テオドラはにっこり笑う。
ここは逆手を使う。
テオドラは念話で、言霊を唱える。
『ルークス!』
ぽわ!
ルウから伝授された照明魔法の言霊である。
魔力を抑えた『魔導光球』がそっと闇に浮かび上がった。
この『魔導光球』には3つの役目があった。
行く手を照らすのは勿論、魔力感知の発動体としてアンテナとなり、
更に囮の役目も果たすのである。
『さあ! 行きなさい! 光球!』
テオドラが命じると、光球は「ふわふわ」とゆっくりと飛んで行く。
『では、ケルべロス、私達も行きましょう』
テオドラが声をかけると、ケルベロスはじっと彼女を見た後、
無言で先頭に立ち、軽快な足さばきで、階段を昇り始めたのである。
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