第1,379話「女傑3人⑪」
やがて、
ごごごごごごごごごごご!!!!
地の底から響いて来るような、不気味な地鳴りが、ベリー全体を揺るがした。
瘴気が!
おぞましい気配が辺りに満ちた!
そして、いきなり!
ずぼしゃっ!
腐りきった巨大な腕が!
そして更に!
ずぼしゃっ!
またも腐りきった腕がもう1本突き出された。
「何だ!? これはっ!!」
土中から突き出され、腐りきった巨大で2本の腕。
目の当たりにしたウッラは大いに驚き、テオドラは冷静に見極めようとする。
「なんだ? 巨人か……いや違うな。でもやけに巨大な不死者だ!」
「ふむ……これは、もしや」
同じく腕2本を見て、眉間にしわを寄せたマルコシアス。
突き出された腕は腐りきっていた。
大きさから勿論人間族とは違うが、太古に滅んだという巨人族の腕でもなかった。
残された皮膚の表面にはいくつもの硬いうろこが、
指先には竜族独特なとがった長い爪がついていたからだ。
やがて、土中からは巨大な2枚の羽根が、
そして長い尻尾も突き出される。
残るは頭のみ。
しかし、ウッラ、テオドラ、マルコシアス、そしてケルベロスはその正体を見抜いていた。
そしてすぐに、頭も突き出された。
やはり現れた頭は『ドラゴン』である。
「ぐはああああああああああああ!!!」
腐りきったドラゴンは不気味な声で咆哮した。
全身腐りきった死骸であったが……死骸は生きていた。
生ける死骸……不死者であった。
やがて全身を現し、ウッラ達と戦おうとしていたのは、
ドラゴンゾンビである。
補足しよう。
ドラゴンゾンビとは……死してアンデッドモンスターと化したドラゴンを指す。
自然死して、不死者化する事はあまりなく、
第三者……多くはネクロマンサーの死霊術により忌むべき存在となり、
使役される事が殆どだ。
生前と死後で比較すると、戦闘能力はそのまま受け継がれる事が多い。
飛行能力は失われ、空を飛べなくなる事も多い。
だが、全身に強力な毒性を帯びたり、おぞましい瘴気を吐き散らすという、
生前にはない攻撃方法も使うのは、討伐者にとっては大きな脅威となる。
他の不死者同様、痛覚が鈍いので、
討伐者の攻撃にひるまずに攻撃もするのが厄介だ。
並みの武器も通用しにくい。
ちなみに骨だけの状態になったドラゴンゾンビをボーンドラゴンとも呼ぶ。
このような強敵たるドラゴンゾンビであるが……
ウッラ、テオドラ、マルコシアス、そしてケルベロスは全然臆さない。
ある意味想定内だ。
「ふっ、少しは歯ごたえがありそうな奴が出て来たな。ウッラ! 今後の事もある!指揮官として、我々の特性を考え、指示を出してみよ」
「はい!」
マルコシアスが促すと、ウッラは大きな声で返事をし、力強く頷いたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
マルコシアスから指揮権を渡されたウッラ。
元々本案件を受諾したのはウッラ。
テオドラは勿論、マルコシアスもケルベロスも助っ人である。
しかし、ウッラはマルコシアスとは師弟関係。
傍に居ると、つい頼ってしまうのだ。
マルコシアスも、ウッラのそんな性癖を考え、敢えて強敵との戦いに臨ませたのだ。
さてさて!
ドラゴンゾンビの討伐方法はいくつかある。
不死者化しているので、一般的な対不死者攻撃が効果を及ぼす。
術者が魔法で制御している場合は、おおもとの術者を倒すのは効果がある。
だが、半永久制御をかけていた場合、術者が倒されても活動が止まらない場合も多い。
強力な火力で燃やしてしまうのも有効である。
しかし、決め手はやはり破邪、葬送の魔法であろう。
出現したドラゴンゾンビに対し、どう戦うのか、ぱぱぱぱぱ! と考えたウッラ。
軽く息を吐き、真剣な表情で指示を出す。
「マルガ様! ケルベロス! 炎のつらら、火炎攻撃、お願いします!」
「了解だ!」
「わおん!」
凛とした声で命令したウッラ。
打てば響けとばかりに、マルコシアスとケルベロスが応えた。
どしゅう! どしゅう! どしゅう! どしゅう!
どしゅう! どしゅう! どしゅう! どしゅう!
ごっはああああああああああああああああ!!!!
マルコシアスとケルベロスは、魂をも破壊する魔力の炎を放った。
的としては大きすぎる為、外す理由がない。
放たれた攻撃は、全てドラゴンゾンビへ吸い込まれた。
!!!!!!!!!!!!!!
不死者は痛覚に乏しい。
しかし、身体とともに魂へ攻撃を受けてはたまらない。
ずちゃりずちゃりずちゃりと、迫っていた動きが止まっている。
「よし、行くぞ。突撃だ! テオドラ! 先行して破邪魔法『昇天』を乱射し、魔力を吸引してしまえ! 私がとどめを刺す!」
「了解です! ウッラ姉!」
テオドラは大きな声で応えると、だん!
と弾むように走り出した。
あっという間に、ドラゴンゾンビに肉薄したテオドラ。
至近距離から、素早く昇天を乱射!!
更に吸魔能力で、ドラゴンゾンビの体内魔力99%を吸い取った。
「今です! ウッラ姉!」
テオドラが叫んだ時、すでにウッラはドラゴンゾンビの至近距離に居た。
体内魔力を完全に喪失し、行動不能となると、どのような者も瀕死の状態となる。
ウッラが、ルウから授かった、
聖なるオリハルコン製、破邪の魔剣の刀身が風を切り、唸る。
ひょおおお!
ぐばはっ!
オリハルコンの輝く刀身が腐り切った身体をあっさりと貫き、
破邪の魔法が、ドラゴンゾンビの魂へとどめを刺した。
ぼっしゅううううううう!!!
とんでもない異音とともに、ドラゴンゾンビの身体はあっさりと、
消失していたのである。
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