第1,378話「女傑3人⑩」
「ははははは! 脳筋の悪魔狼に、駄犬、くされダンピール、そして、役立たずの、でく人形か。今のうち、命乞いの練習でもしておけい!」
3人とケルベロスには、聞き覚えのない声が重々しく、
ベリーに大きく大きく響いた。
肉声なのに、やけに大きく響くのは、魔法か何かを使っているのだろうか。
謎めいたこの声が言ったのは、『捨てゼリフ』『挑発』に他ならない。
「何だと! このくされ外道が!」
対して、プライドの高いウッラが悔しがり、拳を固く握っていきり立つ。
だが、マルコシアスが手を「さっ」と出し、ウッラが『勇み足』に及ぶのを制する。
「構わんぞ、ウッラ。あんな奴など放っておけ。好き勝手に言わせておけよ」
「し、しかし! マルガ様!」
ウッラはびっくりした。
自分以上に、戦士マルガリータこと天狼たる悪魔マルコシアスは天高くそびえる山ほど誇り高い。
侮辱される事も絶対に許さない。
倍返し、否! 1億倍返しのはずだ。
それが、なぜ!!??
その時、突如視線を感じた。
これは、テオドラ!?
ハッとしたウッラがテオドラを見れば、
「…………………」
表情を全く変えず、無言のまま、ウッラを見つめており、小さく頷いた。
やはり、何かある!
ウッラも小さく頷き返した。
マルコシアスは更に言う。
謎めいた声へ呼びかけたのである。
「おい! お前は吸血鬼の始祖だろう?」
「……………………」
しかし、謎めいた声は答えなかった。
だが、沈黙は肯定の証である。
謎めいた声は、今回標的たる『吸血鬼の始祖』に違いない。
「聞け! 始祖よ! どうせキサマは、手下どもを次々と瞬殺され、いつ、自分の番が来るのかと、恐れおののいている。私達への罵詈雑言など、単に虚勢を張っているだけだ」
マルコシアスは、ニヒルに笑った。
しかし、謎めいた声も負けじとばかりに言い返す。
「手下どもだと? ははははは! 笑止!」
「ほう、笑止か?」
「うむ! お前達が倒したのは、この我が魂を縛った、単なる奴隷どもにすぎぬ。ここからが本番だ!」
「ここからが本番? はったりだろ? そんなの」
「ははははは! 果たしてそうかな? ……はったりかどうか、見ているが良い!」
「…………………」
ふっ! ちょろいぜ!
無言のままのマルコシアスであったが、形の良い彼女の唇がそう動いたのを、
ウッラとテオドラは、はっきりと見た。
やはりマルコシアスが、侮辱に対し、
『1億倍返し』しなかったのには、理由があった。
敢えて無視した上、今度はマルコシアスから挑発。
「戦闘上等! 大歓迎!」という、『天狼のリング』へ、
敢えて引きずり込んだのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
謎めいた声……『吸血鬼の始祖』は、マルコシアスの挑発に乗ったようだ。
いきなり!
ベリーが昼間のように明るくなった。
「ふん! 演出のつもりか?」
鼻で笑うマルコシアス。
ウッラ、テオドラ、マルコシアス、そしてケルベロスが位置するベリーの上空には、
人魂、鬼火と呼ばれる、
大量のウィルオウィスプが、青白い光を放ちながら、ゆらゆらと飛び回っていた。
このウィルオウィスプ、もしくはウィル・オー・ザ・ウィスプには、
こんな逸話がある。
某所に『ある男』が居た。
その『ある男』は自ら揉め事ばかり起こし、挙句の果てに殺されてしまう。
しかし弁悦に長けたその男は、聖人を騙し、生き返るがまたも悪事を働き、
遂には冥界へ堕とされた。
その冥界で、悪魔が『ある男』に同情し、
自分が管理する『冥界の業火』を少し分けてやったという。
『ある男』は結局、昇天出来ず、現世をさまよう魂となった。
それが、ウィルオウィスプなのだというのだ。
『吸血鬼の始祖』の命を受けてか、
ウィルオウィスプからは、はっきりとした悪意が感じられる。
そして突如現れたのと同様、ウィルオウィスプはいきなり攻撃して来た。
ぼしゅ! ぼしゅ! ぼしゅ! ぼしゅ! ぼしゅ! ぼしゅ!
ぼしゅ! ぼしゅ! ぼしゅ! ぼしゅ! ぼしゅ! ぼしゅ!
ぼしゅ! ぼしゅ! ぼしゅ! ぼしゅ! ぼしゅ! ぼしゅ!
ぼしゅ! ぼしゅ! ぼしゅ! ぼしゅ! ぼしゅ! ぼしゅ!
彼らの得意技、『炎弾』の大乱射である。
しかし!
「ここは、私に任せてくださいっ!」
小柄なテオドラがぱっと飛び出し、大量に降り注ぐ『炎弾』へ向け、
両手を差し伸べる。
すると、
しゅおおおおおおんんん!!!
と、大きな異音がして、大量に降り注ぐ『炎弾』は、
全てテオドラの手に吸収されてしまった。
テオドラの得意技のひとつ、魔力吸収である。
ウィルオウィスプの『炎弾』は魔力により生成されている。
吸収は、容易であった。
だが、こんなものはほんの挨拶代わり。
やがて、
ごごごごごごごごごごご!!!!
地の底から響いて来るような、不気味な地鳴りが、ベリー全体を揺るがしたのである。
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