第1,377話「女傑3人⑨」
「来るぞ! ケルベロス!」
「うおん!」
天狼マルコシアスの呼びかけに、冥界の魔獣ケルベロスが短く応え、
ふたりは戦闘態勢へ入った。
ぼこぼこぼこぼこぼこぼこ、ぼこぼこぼこぼこぼこぼこ、
ぼこぼこぼこぼこぼこぼこ、ぼこぼこぼこぼこぼこぼこ、
ふたりの目の前の土中から、泥に塗れた手が突き出される。
「む? ゾンビ……否、グールか」
補足しよう。
マルコシアスが一瞬、ゾンビだと思ったのも無理はない。
ゾンビもグールも一見して同じ、『動く死体』である。
しかし、ゾンビが自我を失った意思なき死体であるのに比べ、
グールは違う。
命令に忠実ながら、自我を持つ意思ありき死体なのである。
グールは屍食鬼と呼ばれる怪物である。
不死者の範疇に入れる者が多いが、変わった特徴がある。
実は、グールは不死者ではない。
墓地の死体に低位の霊体化した悪魔、
もしくは邪霊が宿り、怪物化した存在なのだ。
死体に宿った悪魔グールは、屍食鬼という名の通り、墓場で死体を掘り返し、
貪り食う。
また、生きた人間でも、「自分より弱い」と見れば、容赦なく襲う。
更に変身能力も有しており、小型の肉食獣に擬態する。
女子のグールも存在し、グーラと呼ばれ、
魅惑の魔法で自身を美人に見せ、誘惑された人間の男子を喰い殺す。
グールは、悪魔が憑依した死体の怪物であり……
憑依が解ければ、元の死体に戻るのだ。
基本的には火が弱点ではあるが、通常の火属性魔法では、死体を焼くだけで、
本体の霊的悪魔を倒す事が出来ない。
前置きが長くなった。
グールは結構な強敵だが、マルコシアスとケルベロスにとって、
所詮、雑魚に過ぎない。
「おい! ケルベロス! 私は『炎のつらら』の威力をあげる! お前は冥界の魂吸いの炎を吐け! グールどもなど、奴らの魂ごと、一気に焼いてしまおう!」
「うおん!」
マルコシアスの呼びかけに、ケルベロスが応えた。
やがて土中から抜け出したグールどもの数は1,000体近くに及んだ。
「ふん、この数……始祖の直属たる眷属500体のどもではない。先ほど、廃墟で倒した亡霊やゾンビども同様、雑魚だ」
吐き捨てるように言うマルコシアス。
「うおん!」
同じく!
というように、ケルベロスがまたも応えた。
おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!
おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!
そのケルベロスの短い咆哮が戦いの開始を告げる合図のように、
グールどもも、おぞましく咆哮!!!!
マルコシアスとケルベロスへ向かい、一斉に襲いかかって来た。
「ふん! 雑魚どもが!」
「うおん!」
どしゅう! どしゅう! どしゅう! どしゅう!
どしゅう! どしゅう! どしゅう! どしゅう!
ごっはああああああああああああああああ!!!!
しかし!
マルコシアスとケルベロスは、魂をも破壊する魔力の炎を放ち、
襲って来たグールどもを全滅させていたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
一戦終わり、再び静まり返ったベリー。
マルコシアスとケルベロスが、魂ごと燃やし尽くしたグールどもは、
肉片のひとかけらも残っていなかった。
死体に憑依した低位の悪魔どもは、完全に浄化されたのである。
「ふむ……殺気が消えたな。奴らめ、誘いには乗って来ないか」
マルコシアスは、周囲の状況を見て、分析し、決断する
「すぐには襲っては来ないだろう。……今のうちに、ウッラとテオドラを後方から、こちらへ移動させる。……ケルベロス!」
「うおん!」
「念の為、古城を含め、前方を警戒しろ! 何か、動いたらそれは敵だ。容赦なく、お前の炎をぶちかませ」
「うおおん!」
マルコシアスの指示を聞き、ケルベロスは「了解!」とばかりに吠えた。
同時にマルコシアスは念話で、ウッラとテオドラが待機する後方へ呼びかける。
『ウッラ! テオドラ! 聞こえるか? マルガだ!』
呼びかけに対し、ウッラとテオドラからはすぐに返事が戻される。
『マルガ様!』
『聞こえます!』
『こちらは、私とケルベロスで、グール約1,000体を討伐した。敵は追撃して来ない。今のうちに、こちらへ移動せよ』
『了解です!』
『私が、ウッラ姉を抱き、飛翔します!』
『うむ! 索敵で、私とケルベロスの位置は分かるだろう』
『はい!』
『分かります!』
『念の為! 注意しておくぞ。絶対に私達より前方へ降下するな。警戒する、ケルベロスの猛炎の餌食となる!』
『はい!』
『重々、気を付けます! スタンバイOKです!』
会話をしながら、ウッラとテオドラは飛翔移動の準備を完了したらしい。
『よし! 来い!』
マルコシアスがGOサインを出した瞬間。
どひゅん!
という風を切り裂く音とともに、ウッラを抱いたテオドラが飛翔。
マルコシアスが居る位置後方へ降り立った。
と、その時。
「ははははは! 脳筋の悪魔狼に、駄犬、くされダンピール、そして、役立たずの、でく人形か。今のうち、命乞いの練習でもしておけい!」
3人とケルベロスには、聞き覚えのない声が重々しく、
ベリーに大きく大きく響いたのである。
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