第1,376話「女傑3人⑧」
始祖のメンタルにも、とどめを刺し、徹底的に討伐する。
マルコシアスの言葉にウッラ、テオドラは同意し、頷いた。
では、一体、作戦をどうするのか?
すかさず、マルコシアスが言う。
「ふむ……では、この戦い方にこだわる、言い出しっぺの私が責任を取る!」
対して、ウッラとテオドラも答える。
「この戦い方にこだわると」
「言い出しっぺの私が責任を取るのですか?」
「うむ、私が単独で突出して、先陣を切る!」
天狼マルコシアスの強さならば、単独で突出しても問題ない。
と、ウッラとテオドラは確信していた。
それも始祖本人ではなく、たかが眷属風情だ。
油断はしないし、全く心配はない。
「おお! マルガ様が先陣を!」
「単独で突出しますか!」
「うむ! 先んじた私は敢えて囮となり、前庭……ベリーに潜む、始祖の眷属どもをかく乱し、おびき出す。ウッラ、テオドラ、お前たちふたりは、私の後に続け」
「成る程」
「了解です」
「うむ! 奴らがおびき出され、のこのこ出て来たところを、我々3人で、ガンガン掃討する。抵抗する間もなく、瞬殺してやろう。そして偉そうにしているであろう、始祖を『ぼっち』にし、恐怖のどん底へ突き落してやるのだ」
「「了解です」」
返事をしたウッラとテオドラは、改めて『堀』を見た。
小さな城に似合わぬ巨大で深い堀である。
辺りは闇に近くなっているが、夜目の利くふたりは月明りで堀の全容が見えた。
堀から向こう岸のベリーまでは、30m以上あるだろう。
人間離れしたウッラの跳躍力でもぎりぎりというところ。
そして深さも、間違いなく40m近くある。
改めて見ても、目の前の堀には、水が殆どない。
万が一落下したら、ダンピールゆえ、この深さで落ちても死ぬ事はない。
しかし、相当のダメージを受ける。
戦闘能力に影響が出るのは必至だ。
結果、マルコシアスとテオドラに迷惑をかけてしまう。
先ほど、ウッラを「運んでくれた」マルコシアスは、
単独先行して、眷属どもをかく乱するという。
次の作戦では、ウッラを運べない。
ウッラは、誇り高く、強情っ張り。
このような時、素直にテオドラへ、頭を下げたりしない。
そんなウッラの性格を、テオドラは良く分かっているのだ。
少し顔をしかめるウッラを見て、テオドラが申し出る。
「では、ウッラお姉様」
「お、おう」
「城内へ入る際は、私がお姉様を抱え、飛翔しましょう」
「おお、申し訳ないが、頼む!」
しれっと、当然のように言うウッラだが、
はっきりとした歓びが伝わって来る。
そんなウッラが、テオドラは愛おしい。
当然OKの返事を戻す。
「はい、お任せください!」
モットの古城は静まり返っている。
ベリーの中庭も静まり返っている。
しかし始祖も眷属どもも、強敵たる3人の女傑が城内へ入ろうとしているのに、
気がついているはずだ。
と、ここで!
いきなり、3人の女傑のそばの地面が光り出す。
これは、魔法光である。
魔法光は、不可思議かつ複雑な文字が記された魔方陣を浮き上がらせた。
これは!
転移魔法の魔方陣だ。
魔法陣の中からは、何と!
灰色狼のような体長3mほどの巨大な犬が現れたのである。
3人の声が一致する。
「「「ケルベロス!」」」
そう!
現れたのは、ルウの従士たる冥界の魔獣ケルベロスであった。
本体では目立ちすぎるので、灰色狼風に擬態しているのだ。
まあ、これでも目立つのだが、本体よりはマシなのである。
いつもなら、咆哮するケルベロスだが、ぐるるるると、低く唸るだけであった。
敵の目前だと、認識し、静かにしているようだ。
3人の心にルウの念話が響く。
『今、ケルベロスを応援に送った。何でも命じてくれ……全員、無事に帰還してくれよ』
『『『了解!』』』
3人は、ルウの声に対し、即座に応えたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ケルベロスの参戦で、作戦には若干の変更が加えられた。
マルコシアスが先行し、突出。
囮になるのは変わらないが、ケルべロスを伴う事になった。
つまり囮&かく乱役は『ふたり』である。
先にマルコシアス、ケルベロスがベイリーへ突撃。
そこへウッラとテオドラが乱入するのだ。
「よし! これで戦力も万全だ。先に行くぞ!」
マルコシアスはそう言うと、凄まじい速度で飛翔。
負けじとケルベロスも、宙を弾丸のように駆けて行った。
「ウッラ姉、私達はしばし待ちですね」
「だな! 私達が討伐する分も、眷属どもを残しておいてくれれば良いが」
「ですね!」
一方……
前庭ベリーに降り立ったマルコシアスとケルベロス。
だが、見渡しても、ベリーには何もない。
住居跡だと思える、石造りの廃墟がいくつか並んでいるだけだ。
しかし見た目には何もなくとも、
このベリーにはおぞましい気配と怨念が立ち込めている。
しかし!
マルコシアスとケルベロスが降り立ってから、気配が急に変わった。
よそ者を追い出せ!
排除せよ!
出て行かぬなら、殺してしまえ!
という殺意に等しい声が満ちて来たのである。
「来るぞ! ケルベロス!」
「うおん!」
マルコシアスの呼びかけに、ケルベロスが短く応え、
ふたりは戦闘態勢へ入ったのである。
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