第1,362話「夢見るマノン①」
「ようし! ついに私が待ち望んだ、授業の到来ですわっ!」
と、ある日の魔法女子学園。
2年A組マノン・カルリエは、気合が入りまくっている。
彼女が張り切っているのは、特別な理由があった。
本日午後に担当のルウが行う専門科目『魔道具研究』B組の授業内容が、
マノンの欲していたジャストな内容だからだ。
今日の日の為に、ばっちりと勉強、数日前から予習も行っていた。
そう、マノンは将来に向け、いろいろ人生計画を立てている。
いまのところ選択肢はふたつ。
ひとつが特に宝石鑑定に秀でた魔法鑑定士。
もうひとつは級友達から勧められた教師である。
実際、マノンは迷った。
どちらの職業も自分に向いていると思うのだ。
こういう場合、マノンは比較して、分析を行う。
まず宝石に特化した魔法鑑定士になった場合のメリット。
ひとつ、好きな宝石と存分にかかわって、思い切り仕事が出来る。
ひとつ、魔法鑑定士に定年はない。
年齢に関係なく、一生の間、仕事が出来る。
ひとつ、勤める努める職場にもよるが、宝石のような高額商品だと、比例して魔法鑑定士の収入も高い。
収入が高いと、実家に頼らず、自分の力で生活出来る。
またそこそこ贅沢も出来る。
次にマノンは、教師について分析する。
ちなみに、教師になる場合の就職先、マノンが選択する職場は、
魔法女子学園の一択である事はいうまでもない。
では、魔法女子学園の教師になった場合のメリットといえば。
ひとつ、心の底から大好きなルウと同じ職場で働ける。
教室は違えど、学園という狭い空間で、ともに存在出来る。
ひとつ、魔道具研究授業の一環として、2番目に大好きな宝石にかかわれる。
ひとつ、3番目に大好きな魔法の勉強を生徒に教えながら、継続出来る。
デメリットもある。
収入が魔法鑑定士よりも高くはない、多分。
魔法鑑定士と教師をつけあわせして、比較して、マノンはしばらく考えた。
結論を出すのは、そう時間がかからなかった。
だかだかだかだかだかだかだかだか……ど~ん!!
結論!
両方の良いとこ取り!
私は要領よく生きるの!
魔法女子学園の教師へ赴任。
教師をやりつつ、魔法鑑定士の腕を磨く。
もしも教師を途中で退職した場合、フリーになるか、好条件の職場へ転職する。
以上!
これがベストの選択だと、マノンはにんまりした。
やはり愛は、何よりも優先する。
愛するルウと過ごせない人生など全く考えられない。
現在は先にルウの妻となったライバルのオレリーに対し、
だいぶ後れを取っているが、魔法大学で巻き返す!
そして、一気に抜き去る。
自分と同じ教師志望のオレリーより遥かに上位、学年首席の素晴らしい成績で、
魔法女子学園に就職。
社会人になってもライバルの同僚教師オレリーに打ち勝ちながら……出世!
目指せ、校長!
否! 理事長を!
素敵な職場内恋愛で、ルウと結ばれ、晴れて結婚!!
堂々と、ブランデル家へ入るのだ。
家庭ではルウに愛されながら、先輩、同輩達と切磋琢磨し、自分を高めて行く。
いずれ、ルウの子を産む!
更に幸せとなる!
決定!
これが、私の人生設計!
明るい未来しか想像しないマノンは、意気揚々と、教室へ入って行った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
マノンが教室へ入り、しばらく経つと、授業が始まった。
冒頭のセリフ通り、今日の授業はマノンが心から楽しみにしていた、
魔道具研究の宝石――パワーストーンの授業である。
笑顔のルウが話し、始める。
「今日は、宝石を中心にしたパワーストーンの話をしようと思う」
「………………」
「まず、パワーストーンの概念だが、魔法に近い特殊な力が宿っていると考えられている石を、パワーストーンと呼ぶんだ。 真珠や珊瑚、琥珀等のように、厳密には石ではないものも含まれるぞ」
「………………」
「古の時代から、様々な願い事を叶えたり、怖ろしい災厄から身を護る、『お守り』として大切にされた鉱物のことを、総じて「パワーストーン」と呼んでいる」
「………………」
「パワーストーンを身に着けると、良き効果がもたらされるという」
「………………」
「現在、自分達が置かれている状況を考え、どのようなパワーストーンを身につけるのがベストなのか、じっくりと考えるのが望しい」
「………………」
「良し! ここまでは概論だ。次に主なパワーストーンの説明を行う」
「………………」
「主な、と言っても、パワーストーンは星の数ほど存在している。じっくり話したら夜が明けてしまう」
ルウの言葉を聞くマノンの瞳は燃えている。
夜が明ける?
ルウ先生と夜を明かす。
しっとりと愛されながら……それが、私の幸せ。
妄想と願望がカオス的に混在するマノンの思いをよそに、
ルウの授業は進んで行く……
「だから、いくつかのパワーストーンを、俺の独断と偏見でピックアップした」
いくつかのパワーストーンをルウの独断と偏見!?
「………………」
無言で授業を聞く他の生徒達とともに、マノンは授業に引き込まれ、身を乗り出したのである。
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