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第1,360話「ジェラール・ギャロワの幸せ④」

場面がまたまた変わって、ここはギャロワ伯爵邸……


相変わらずひとつのベッドで、ぴったり寄り添い、仲良く眠るジェラールとブランカなのだが……

まか不思議な事が起こっていた。


何と!

仲睦まじいふたりは同じ夢まで一緒に見ており、

ふたつの魂は今、夢の世界、美しい異界に存在していたのだ。


ジェラールとブランカが、気が付けば、周囲は美しく深い森である。

林立する木々は青々と茂り、密集した葉に邪魔されて、けして見通しは良くなかった。


そう、ふたりは寄り添い、森の中に立っていたのである。


「夢だ」と言われれば、

確かに現世(うつしよ)と違って曖昧(あいまい)な感覚である。


しかし、「これが現実なのだ」と言われれば、

穏やかな風に揺られる木々のそよぎがやけにリアルに感じられる。


「どちらでも納得出来る」そんな不思議な世界であった。


普通なら、戸惑い、慌てふためくところである。


しかし、ふたりは落ち着いていた。


何故ならば、今の状況は既に体験し、ルウの魔法で見せられた、

夢だと分かっているからである。


今居る場所も、ジェラールとブランカにとっては『記念すべき場所』なのである。

笑顔のふたりは頷き合う。


「ははは、懐かしいな、ブランカ。これはもしやルウの仕業(しわざ)か?」


「ええ、貴方。これは以前も見せられたもの、間違いなく魔法の夢ですよ。……貴方、もしや、内緒にしている事が?」


「ははは、かもしれないな」


明晰夢(めいせきむ)という言葉がある。

睡眠中にみる夢において、

自身がはっきり、「夢である!」と自覚しながら見ている夢の事だ。


また、明晰夢(めいせきむ)は、充分な休息が取れず、

睡眠の質を著しく低下させる恐れのある夢なのだが……

上手く制御コントロールする事が出来れば、

現実世界でのトラウマ克服やイメージトレーニングに役立つとも言われている。


「よし、リアルでは、多忙だったから……しばらくあの思い出の場所へ行けていないが、確か、この夢は危険がないとルウから聞いたな……」


「ですね! 私もそう聞いたおぼえがありますわ」


「うむ、では、ふたりで行ってみようか。私達の一番の思い出の場所へ」


「はいっ! ぜひ!」


ジェラールとブランカは、『記念すべき思い出の場所』に移動しようと、歩き始めた。

迷うことのない、しっかりとした足取りである。


ジェラールとブランカがしばし歩くと、森が途切れて開けた場所に出た。


「うむ、着いたぞ! ブランカ!」


「ですわね! 貴方!」


景色を見たふたりは満面の笑みを浮かべていた。


どうやら……『ここ』が目的の場所らしい。


ふたりの視線の先には、小さいが綺麗な池があり、

周囲には、陽を遮るものがほとんど無い為に、明るい光で満ち溢れていた。


ジェラールとブランカの鼻腔(びこう)へ、爽やかな空気が流れ込んで来る。


空気には、(かぐわ)しい花の香りが混ざり、ふたりの魂を「そっ」とくすぐった。


ジェラールが改めて周囲を見ると、池にはこんこんと清水が湧き出て小魚が楽しそうに泳ぎ、岸には色とりどりの花が咲き乱れ蜜蜂が忙しそうに飛び回っている。

傍の木々には小鳥が止まってのんびりと囀さえずっていた。

そして、ふたり以外、誰も居なかった。


この場所で、ジェラールはブランカへプロポーズし、

ブランカは愛を受け入れたのだ。


ふたりはしっかりと手を握ったまま、景色を眺め、感慨にふけっていた。


それからまたしばし時間が経った。


どこからともなく声が聞こえて来る……女子の声だ。


『お父様、お母様』

『ジェラールお父様、ブランカお母様』


ふたりには聞き慣れた声である。

誰だと迷ったり、間違えるはずがない。


「ジョゼ! リーリャ!」


ジェラールは叫び、ブランカも、


「ジョ、ジョゼ! リーリャさ……!」


少し噛み、リーリャを主として呼びそうになり、慌てて言葉をさえぎった。

ブランカは少し前に、ようやくジョゼフィーヌを愛称で、

かつてのあるじリーリャを呼び捨てにする事に慣れたのである。


ジョゼフィーヌと、リーリャは更に言う。


『お父様とお母様が、私達ブランデルの家族へ内緒にしたお話は、仲の良い風の精霊シルフが、こっそり私に教えてくれました。知ってしまったからには、おふたりへお祝いを申し上げますわ』


『ええ、私もジョゼから聞きましたから、おふたりへお祝いを申し上げますね』


ふたりが息を吸い込む気配がした。

そして、


『『財務大臣内定! おめでとうございまあす!!』』


愛娘ふたりからのお祝いを聞き、ジェラールとブランカは破顔する。


「お、おお! あ、ありがとう!」


「あ、ありがとう! ふたりとも!」


更に、ジョゼフィーヌとリーリャの祝辞は続く。


『お父様! ここは勢いに乗るしかないですわっ! 更に昇進ですっ!』


『そうですっ! 一気に陞爵しょうしゃくして、侯爵ですわあっ!』 


対して、ジェラールとブランカは苦笑。


「おいおい、陞爵しょうしゃくの事まで知られているのか?」


「シルフさん、本当にジョゼと仲が良いのですねえ」


ここで、ジェラールが尋ねる。


「しかし、ジョゼ、リーリャ、どうしてお前達は、声だけの出演なのだね? そしてなぜ、夢で私達と逢うなどと……」


だが、ブランカは全て分かっていたようである。


「貴方、ルウ達は、私達に凄く気を(つか)っているのですよ」


「え? 凄く気を遣っている?」


「はい、この素敵な思い出の場所で、私達ふたりきりでお祝いをしてください、というのと、身重の私を、大いに気遣ってもくれたのですわ」


「そ、そうか! それは!」


「はい、私達、良き家族が大勢居て、本当に幸せなのですわ」


こうなったら、ジェラールとブランカの願いは決まっている。


「ルウ、ジョゼ、リーリャ、そしてブランデルの家族達よ! 私の前に現れておくれ! そして全員で、大いに祝おうではないかっ!」


『了解!』


ジェラールの申し入れに対し、即座にルウの返事が返され、空間が割れた。

そして、割れた空間の中から、ルウ、ジョゼフィーヌとリーリャは勿論、

ブランデルの家族が全員現れたのだ。


こうして……

夢の世界の静かな森は、喜び祝う声で満ちたのである。

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