第1,358話「ジェラール・ギャロワの幸せ②」
貴族街区にあるギャロワ伯爵邸……
王宮における宰相フィリップとの謁見が終了。
当主ジェラールを乗せた専用馬車は無事走り、閉ざされた正門前に到着した。
御者が馬車を止め、大きな声を張り上げる。
「ご主人様の、ご帰還で~す!」
この屋敷の主が戻って来た。
客室の窓から、主ジェラールがにこやかな表情で手を振っているのを確認してから、
正門前の詰所に待機していた護衛の騎士達3人が正門をゆっくりと開けた。
馬車が邸内へ入ると、正門がすぐに閉められ、騎士達3人は再び配置へ戻った。
怪しい者が居ないか、辺りを睥睨する……
明日の朝、交代の騎士が来るまで、この3人が交代で仮眠を取り、夜通しギャロワ邸を守るのだ。
一方、馬車は玄関前のロータリーへ……
馬車が止まり、御者が素早く降りて、扉を開くと……
ジェラールは急いで降り、玄関へ向かう……
瞬間!
「ひゅっ!」と一陣の強き風がジェラールを包んだ。
何か、ささやかれたような気がした。
何か、尋ねられたような気もした。
お前には何か、『良い事』があったのか?と。
しかしジェラールはスルーし、おかまいなく先へ進む。
少しでも早く、妻ブランカ、そして彼女のお腹に居る我が子へふたりへ『吉報』を聞かせたい。
そんな思いがジェラールの足取りに、はっきりと表れていた。
ここで玄関が開き、家令のアルノルトが姿を見せた。
アルノルトはギャロワ伯爵家に長年仕える忠実な家令である。
亡き妻ベルティーユに代わって、多忙なジェラールを助け、愛娘ジョゼフィーヌを育ててくれた功労者だ。
「お帰りなさいませ、ご主人様」
深々と礼をし、帰って来たジェラールを労わる老齢の家令をほぼスルー。
ジェラールは、出迎えに出て来ないブランカの所在を尋ねる。
「おう、アルノルト、今戻った。ブランカは?」
「奥様は、居間にいらっしゃいますよ」
あ、ああ!
そうだった!!
妻は身重である。
身体にさわるからと、自分が『出迎え』を止めた事を思い出したのである。
「うむ! アルノルトよ。お前は本当に良く尽くしてくれる。いろいろとありがとう!」
含みを持たせる言い方で、忠実な執事へ礼を言い、ジェラールは大広間へ入った。
妻ブランカは、ゆったりした長椅子に座っていた。
ジェラールを見て、柔らかく微笑む。
「ブランカ! 今、帰ったぞ!」
いつもとはだいぶ様子が違う夫に、
ブランカは「何かあったのだ!」そう、ピン!と来た。
ジェラールの表情は柔和で、目がきらきら輝いていたからだ。
「何か良い事が、おありになりましたか?」
「ああ、あった!」
即答する夫。
ブランカは記憶をたぐった。
「今日は確か……フィリップ様から呼ばれたとおっしゃっていましたね」
「ああ、そうだ。……うむ、私は少し興奮しているようなんだよ」
「あらあら、興奮なんて……うふふ、よほど良き事がおありになったのですね?」
「……うむ! ようやく呼吸が整ったぞ……では言おう、ブランカ。お前のお腹の、我が子へも届くようにはっきりとな」
「あまり大きなお声は……この子がびっくり致しますわ」
「ははは、分かっておる。ふうう……良し、では単刀直入に言うぞ……私の代行が取れた!」
「代行が取れた? と、という事は?」
「うむ! まだ内示の段階だが、来月1日付けで、私は財務大臣となる」
夫が財務大臣に!
王国の要のひとつたる役職である。
本当に本当に喜ばしい!
ブランカも満面の笑みとなる。
胎教にも良いだろうと考える。
「うわあ! それはそれは! おめでとうございます!」
「ああ、フィリップ様からは、陛下とエドモン様にはご了解を取られたとおっしゃられた」
「ではもう確定でございますね」
「ふふふ、サプライズはまだあるのだ」
「サプライズがまだおありなのですか?」
「うむ……フィリップ様からは、王都の立て直しと活性化、そして地方の活性化がヴァレンタイン王国の建て直しに直結する。責務は重いが、そなたの努力を期待する! と檄を飛ばされた」
「あらあら、責任重大でございますね」
「そしてこうもおっしゃられた。リーリャ様同様に、そなたの妻ブランカが生むギャロワ家の跡取りが、ロドニアとの、新たな絆たる存在になろうと」
「まあ、この子が……ヴァレンタイン王国と我が祖国ロドニアの新たな絆に……そうなって欲しいですね」
「うむ、なってくれればと願うが……母子ともに健康であれば構わない。身体をいとえよ、ブランカ」
過度のプレッシャーをかけない優しい夫……
そんなところが好きになったとブランカは思う。
「ありがとうございます、貴方。はい、貴方と子供の為、いっそう自分の身体を大切に致します」
「よし! でだ! 話を戻そう、まだあるというサプライズにな」
「まだあるサプライズに?」
「うむ! 私は大いに期待されている証拠を突きつけられた」
「大いに期待されている証拠を? フィリップ様からですか?」
「うむ! 財務大臣としての働き、そしてあげた実績いかんでは、陞爵も考えておる! とおっしゃられた」
「陞爵!? と、い、いう事は!?」
「ああ! 侯爵に! 私は侯爵に昇進出来る! 我がギャロワ家は、侯爵家となるのだ」
「侯爵に!? あ、貴方! ほ、本当に!?」
「ああ、嘘を言ってどうなる? お前とお腹の子に嫌われてしまう」
「そんな! でも……ここまで、良く頑張りましたね」
「ああ、そして、いろいろな人に支えられて来たお陰だ」
「ええ、本当に……」
「ブランカ」
「はい」
「フィリップ様から、この件は家族以外には内密だと厳命された」
「そうでしょうね」
「厳秘にと言われたが、ルウ、ジョゼ、リーリャ達へ伝える許可は貰ったよ。後、アルノルトだけには『内緒だぞ』と念を押した上で伝えようと思う」
「ええ、皆、絶対に喜びますわ」
「うむ! 今夜はふたり、いや3人だけででささやかな内祝いを行い、明日以降、ルウの……ブランデル家へ伝えに行こう」
「はい」
「内緒にしておいて、ブランデル家の皆をいきなりびっくりさせよう」
「うふふ、ですね♡」
ジェラールは身重の妻を気遣い、抱きしめたりしなかった。
温かい手を伸ばし、きゅっと妻の手をにぎったのである。
いつもご愛読頂きありがとうございます。
※当作品は皆様のご愛読と応援をモチベーションとして執筆しております。
宜しければ、下方にあるブックマーク及び、
☆☆☆☆☆による応援をお願い致します。
東導号の各作品を宜しくお願い致します。
⛤『魔法女子学園の助っ人教師』
◎小説書籍版既刊第1巻~8巻大好評発売中!
《ご注意!第8巻のみ電子書籍専売です》
(ホビージャパン様HJノベルス刊
宜しければ、第1巻から8巻の一気読みはいかがでしょうか。
HJノベルス様公式サイトでは試し読みが可能です。
お気軽にどうぞ!
◎コミカライズ版コミックス
(スクウェア・エニックス様Gファンタジーコミックス刊)
既刊第1巻~5巻大好評発売中!
コミックスの第1巻、第3巻、第4巻は重版しました!
皆様のおかげです。ありがとうございます。
またこちらの「Gファンタジー」様公式HP内にも特設サイトがあります。
コミカライズ版第1話の試し読みが出来ます。
WEB版、小説書籍版と共に、存分に『魔法女子』の世界をお楽しみくださいませ。
マンガアプリ「マンガUP!」様でもコミカライズ版がご愛読可能です!
お持ちのスマホでお気軽に読めますのでいかがでしょう。
最後に、
新作を公開しました。!
⛤『騎士をやめて花嫁修業しろと言われた私は、公爵家お嬢さま御付きの騎士メイドとなりました!』
更に他作品のご紹介を。
⛤『外れスキルの屑と言われ追放された最底辺の俺が大逆襲のリスタート! 最強賢者への道を歩み出す!「頼む、戻ってくれ」と言われても、もう遅い!』
⛤『帰る故郷はスローライフな異世界!レベル99のふるさと勇者』《連載再開!》
⛤『気が付いたら下僕!隙あらば支配!追放大歓迎!実は脱出!マウントポジション大好きな悪役令嬢よ、さようなら!の俺が幸せになるまでの大冒険物語!
⛤『頑張ったら報われなきゃ!好条件提示!超ダークサイドな地獄パワハラ商会から、やりがいのある王国職員へスカウトされた、いずれ最強となる賢者のお話』《完結》
他の作品もありますので、何卒宜しくお願い致します。




