第1,357話「ジェラール・ギャロワの幸せ①」
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とある日、ここはヴァレンタイン王国王宮、
王弟で宰相たるフィリップ・ヴァレンタインの執務室である。
財務大臣代行兼財務次官のジョゼフィーヌ父ジェラール・ギャロワは、
フィリップの前に、直立不動で立っていた。
内々で重大な連絡があると言われ、期待と不安を胸にして、
フィリップの下へ赴いたのだ。
そのジェラールへ、フィリップは厳かに言い放つ。
「ジェラール、ギャロワ伯爵! 正式な辞令は改めて、となるが……ここで内示を申し渡す」
「はっ!」
「この件は既に陛下のご了解を得た。そしてそなたの寄り親エドモン・ドゥメール公爵の了解も取ってあるぞ。正式な決定だと心得よ!」
「は!」
前振りが2回あった後、フィリップから改めて通達が為される。
「心して聞け! ジェラール!……そなたを、来月1日付けでヴァレンタイン王国財務大臣へ任命する!」
いよいよ!
いよいよという感があった!!
但し、代行を務めてから、そんなに間を置かず決定した!!
そう、数か月で代行が取れたのだから。
当然、答えは決まっている。
「はは~っ! 謹んでお受け致します!」
ここからは、フィリップからの『付帯説明』である。
「ふむ、良き返事だ……ジェラールよ、重きプレッシャーを感じる事無く、財務大臣の職務に励んで欲しい」
「は!」
「ヴァレンタイン王国の現状は、当然、認識し、理解しておろう」
「は!」
「ルウ・ブランデルの大が付く活躍、レオナール・カルパンティエ公爵が率いた王都騎士隊、王国軍の活躍があり、被害は最小限に食い止められたが、先日の『大破壊』――邪竜襲来により、王都セントヘレナは大きなダメージを受けた」
「は! 重々承知しております!」
「うむ! 王都の立て直しと活性化、そして地方の活性化がヴァレンタイン王国の建て直しに直結するぞ。責務は重いが、そなたの努力を期待する!」
「はは~っ!」
「幸い、隣国ロドニアのボリス・アレフィエフ王も、我が国にとても好意的であり、多大な援助もあった。これもルウの妻となった王女リーリャ様、そなたの妻、元侍女頭ブランカふたりとの関係も大きいと思う」
「は、はい! 確かに……」
「リーリャ様同様に、そなたの妻ブランカが生むギャロワ家の跡取りが、ロドニアとの、新たな絆たる存在になろう」
「は!」
「そして、これも陛下、エドモン殿と話したが……」
「は!」
「そなたの働き、そしてあげた実績いかんでは、陞爵も考えておる!」
「しょ! 陞爵! で、では!」
捕捉しよう。
陞爵とは、
『公爵・侯爵・伯爵・子爵・男爵』の爵位制度を前提にし、
男爵から子爵、子爵から伯爵へ「爵位が上がる事」だ。
いわゆる昇進である。
ジェラールは現在は伯爵。
なので『侯爵』へ昇進する事となるのだ。
フリップは微笑みながら、ズバリ告げる。
「ああ! そうだ! ジェラール、そなたをいずれ侯爵にと期待しておるのだ」
ジェラールの胸は感動でいっぱいになった。
俄然やる気が出る!
「お、おお! 私が侯爵に! は、はい! 陞爵させて頂けるよう、精一杯、頑張ります!」
「うむ……ちなみに、そなたの後任の財務次官は、適材適所の人選を考え、私へ提案して欲しい。その上で相談するとしよう」
「はっ! はいっ!」
「うむ、話は以上だ。今回の内示は家族に伝えるのは構わないが、それ以外は内密としておいてくれ」
家族以外は内密に……
念を入れ、ジェラールは確認を取る。
「で、では! ルウとジョゼフィーヌ、リーリャには……」
恐る恐るの確認を聞き、フィリップは高らかに笑う。
彼にとっても、ブランデル家はお気に入りであると同時に、
王国の要と認識しているのだ。
「ははははは、ブランデル家はそなたの家族であろう。大喜びするに違いないから、厳秘を言い含めた上で、伝えてやるが良かろう」
「はは~っ! ありがたき幸せ!」
というジェラールの期待以上の大きな通達が為された。
当然、ジェラールは満面の笑みを浮かべ、宰相執務室を辞去したのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
王宮を出る時も、ジェラールの満面の笑みは変わらなかった。
ギャロワ家専用馬車を駐車場へ停め、待機していた御者も、
主人がたいそう上機嫌なのを見て、やはり笑顔となる。
但し、さすがに「何か、良い事があったんですかあ?」
などと尋ねたりはしない。
「どちらへ参りますか?」
とだけ聞いた。
「当然、自宅だ」
……ブランカと結婚する前であれば、速攻でブランデル邸へ赴き、
愛娘ジョゼフィーヌへ吉報を伝えたに違いない。
だが亡き妻ベルティーユの忘れ形見愛する『ジョゼ』は、今やルウの妻となり、
自分の庇護下から、旅立って行った。
ジェラールにとって、ジョゼが愛する娘で、大事な家族なのに変わりはない。
しかし……
新たな家族と暮らすジョゼをそっと見守るのが自分の役割だと割り切り……
ジェラールは完全に子離れした。
今のジェラールにとって、妻ブランカと生まれて来る子供が、自分の守るべき存在なのだ。
そもそもブランカは隣国ロドニア生まれの異邦人。
かつての主リーリャや仲間のラウラ、
義理の娘となったジョゼという『家族』は居るものの……
ブランカと我が子が頼る者は自分だけという矜持を、ジェラールは持っている。
なので、吉報も第一にブランカとお腹に居る我が子へ聞かせたい!
そう思うのだ。
自宅へひた走る馬車に揺られながら……
ブランカも我が子もきっと喜ぶに違いない!
ジェラールはそう確信していたのである。
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