第1,356話「普通は絶対に出来ない、不可能なデート」
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ルウの記憶を夢として見せる魔法で……
ナディアが、『アトランティアル帝国帝都デート』をした翌週のとある日のヴァレンタイン王立魔法女子学園……
時刻は午後……
授業が終了した3年生のジゼルとナディアは、自宅へ帰る為に、
魔法女子学園の正門へ向かっていた。
正門の駐車場へは、誰かが迎えに来て、ブランデルの屋敷まで送ってくれる事となっている。
ふたりは既に魔法大学への推薦入学が決定していた。
1年生の時から学年首席と準首席のポジションをキープする才媛のふたりは、
「単位が不足して、卒業出来ないよ~」などという、不手際を起こさない……
内申書も完璧。
つまり絶対に『しくじらない』完璧な女子である。
魔法女子学園における学生生活も残りわずか……
そんなふたりは今日、まっすぐ帰宅。
王立魔法大学入学に向けて、ブランデル邸の自室で、それぞれ専門科目の勉強をする予定となっていた。
ジゼルは教師になる為、ナディアは考古学者になる為の勉強である。
夕陽に照らされ染まる魔法女子学園のキャンパスを、仲良く並んで歩くジゼルとナディア。
しかし、その表情はとても対照的であった。
ナディアが満面の笑みを浮かべるのに対し、
ジゼルは「面白くない!」という感じのしかめっ面である。
その理由は、はっきりしていた。
「ナディア、そんなに楽しかったのか?」
「ああ、最高だったよ」
「む~! 不公平だぞ、お前だけ!」
「だって! 前から約束してたじゃない。南の海から戻った日は、旦那様とボクが一緒に寝る事をさ!」
「そっちじゃない! お前が見たリアルな夢の方だ! 旦那様の見せてくれた『魔法の夢』のお陰で、お前には最高の夜となったじゃないかあ!」
「うわ! ダメだよ、ジゼルったら、声が大きい、し~」
ナディアが諫め、注意し、更に制止したのも無理はない。
下校時間で周囲には多くの生徒が歩いていた。
前・生徒会長として演説で鍛えたジゼルの声は「良く通る」のだ。
加えてジゼルとナディアは全生徒憧れの的。
学園内でも良く目立つのだ。
生徒達の視線が一斉に注がれ、ジゼルは慌てた。
手で口を隠した。
「あ!? うぐぐっ!」
いつもは沈着冷静で、颯爽とした麗人ジゼルも、
愛するルウに関しては、『恋に恋する少女』のようになってしまう。
『宿命のライバル』たるナディアが絡むと尚更である。
「……今更、手で口を押えても、遅いよ……もう、ジゼルったら……」
ルウがフランを始め、何人もの女子と結婚した事は、既に学園内の殆どの者が知っていた。
しかしその様子を学園内で声を大にしてしゃべっていいわけではない。
魔法女子学園の教育方針の基本は『淑女』育成なのだから……
「仕方がない! 開き直るぞ! 私はやましい事はしていないし、言ってもいない! 堂々と手を振って歩く!」
「あはは、そうするしかないよね」
数多の視線が降り注ぐ中……
ぎくしゃくし、少し顔をこわばらせたジゼル。
苦笑に近い柔らかい笑みを浮かべたナディア。
……は、堂々と手を振って歩いて行ったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ジゼルとナディアが正門へ到着すると……
正門から入った駐車スペースとなっている場所に、ブランデル家の、
漆黒の大型馬車が止まっていた。
ふたりを迎えに来た『御者役』はモーラルである。
最近は、同年齢のジゼル、ナディアとはフレンドリーに話している。
「他の者が手いっぱいで、私が来たわ……お疲れ様」
「うむ、モーラル、お疲れ。わざわざ申し訳ないな」
「うん! モーラルこそ、お疲れ様! 迎えに来てくれてありがとう」
「どういたしまして……先ほど、リーリャが来て、オレリー、ジョゼと3人は生徒会の仕事で遅くなるからまた5時に迎えに来て欲しいと言われたわ」
「あはは、生徒会か! 懐かしいね!」
「うむ、そうだな!」
ジゼルとナディアは生徒会の会長と副会長を務めていた。
後任の会長はオレリー、副会長は2年A組のマノン、
ジョゼフィーヌは会計、リーリャは広報担当。
だいぶ多忙のようだ。
「それにしても、ジゼル。王女のリーリャがパシリ、否! 伝言に走るとは……凄いよね」
「ああ、ナディア。ロドニアの国民が見たら、びっくりだぞ」
「だよね! もう自分の事は自分で出来るし、家事も上手くなって来たし……」
「うむ、私達もうかうかしておれん!」
話し好きなナディアから、ジゼルにふると、結構な長話となる。
ここは長引かせないよう、モーラルが制止して、帰宅の途につくべきだろう。
「さあ、そろそろ帰りましょう」
「あ、ああ! そうだね!」
「お、おお! 帰ろう!」
モーラルが身軽に御者台へ飛び乗ると、
ジゼルが扉を開けて乗り込み、ナディアが続いた。
扉が閉まったのを確認し、モーラルは馬車をひく馬へ合図をする。
……ゆっくりと馬車が動き出した。
馬車は正門を出て、帰途につく。
ゆっくり走る馬車の車窓から、ジゼルとナディアが外を見れば……
夕日に照らされ、魔法女子学園が綺麗に染まっていた。
もうすぐ卒業……
魔法女子学園へ通学する事もなくなる……
そう思うと感傷的となる。
夕焼けで染まった校舎を見ながら、ナディアが言う。
「ジゼル」
「ん?」
「旦那様がボクと同じように、嫁ズ全員へ夢を見せてくれるって! 旦那様が行った事のある場所なら、どこでも連れて行ってくれるって」
「おお、そうか! ならば私がまず最初に、連れて行って欲しい場所は決まっている!」
「へえ! どこかの遺跡?」
「全然違う! 魔法女子学園だ」
「え? 魔法女子学園?」
「うむ! 先ほどの注目でヒントを得た! 普通は絶対に出来ない、不可能なデートを夢の中で実行する」
「え? 先ほどの注目でヒントを得たの? 普通は絶対に出来ない? 不可能なデート? 夢の中で実行するの?」
「うむっ! 夢の魔法女子学園の中で! 先ほどのように、いやもっと凄く全員の!全生徒、いや全教師や職員も居る中で! 旦那様と熱々デートを実施する! 衆人環視の中で、旦那様とディープキスをしてだな! 更に更に! お姫様抱っこで運んで貰うのだあ!」
「うわ! それ最高に面白そう! ボクも乗った!」
「うむ! 嫁ズ全員へ周知し、情報を共有しよう!」
大いに盛り上がるジゼルとナディアを乗せ……
モーラルが御す馬車は、ブランデル邸への道をひた走っていたのであった。
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