第1,354話 「考古学プラスαの問答②」
今回の依頼遂行でルウが目の当たりにした、
古の時代に栄えた、幻の古代帝国アトランティアルの話を詳しく聞きたい。
考古学者を志望する、妻のナディアは甘え、せがんでいた。
しかしルウは、笑顔で首を振る。
「ナディア、今回の経緯、顛末を俺から話す前に、まずはお前の話から聞こう」
ルウの言葉を聞き、ナディアはにっこりと笑う。
「うふふ♡ ボクの話から聞くの? それってよ~く分かるよ、旦那様。ボクがどこまで、アトランティアル帝国の事前勉強――予習をしているかって事だよね?」
「ああ、そうだ。ナディア、お前こそ、良くわかるな」
「あったり前! ボクは旦那様の妻なんだも~ん! それに勘の鋭さと裏読みならね、ボクは嫁ズの中でも優秀な方だと思うよ」
「嫁ズ?」
「うん! 最近は、ボク達『妻』全員をそう呼ぶのがブランデル家のブームなんだ」
ナディアは、そう言うといたずらっぽく笑った。
「それで、旦那様。話を戻せば、アトランティアル帝国に関してボクが有する知識だったよね」
「ああ、そうだな」
「うふふ♡ じゃあ話すよ。……記載された古文書には諸説あるから、ボクの私見で選んだ説を基に話していくね♡」
「ああ、それでOKだ。お前が話し終わるまで、俺は黙って聞いていよう」
「OK、旦那様。……ええっと、全宇宙の支配者、創世神様から、この世界の南の地と海を管理するよう命じられた、南の大神、海神王を始めとする南の神々……その中で、海の女神アンピトリテをめとった海神王には、当時は名前のなかった地、後に『アトランティアル』となる地が与えられたんだ」
「………………」
「与えられた『アトランティアル』は、四方を海に囲まれた大きな島だった」
「………………」
「海神王は自分を崇拝する忠実な国民を創る為、元々アトランティアルに住んでいた数多の人間族の中から、容姿端麗な女子を探し、側室として、これまためとった。確か、彼女はクレイトオという名だった」
「………………」
「アトランティアルは、世界の中でも有数な風光明媚な地で、中央から平野が広がり、肥沃だった」
「………………」
「海神王は神力で、温水と冷水の泉を発生させ、アトランティアルの地を更に豊かにした。民となる人間は更に増えて行った」
「………………」
「やがて、海神王とクレイトオの間に子が生まれた。5組の双子の男子だった。その10人の男子が育った後、海神王はアトランティアルの地を10に分け、王として、それぞれ治めさせた」
「………………」
「海神王は側室クレイトオの住処も含め、長男の王に『アトランティ』と名をつけ、最も肥沃で広大な土地を与え、子供達を統括する『大王』とした」
「………………」
「長男の名を取り、その地は『アトランティアル』と正式に名付けられ、その周辺の海域も同様に『アトランティアル』と名付けられた」
「………………」
「『アトランティアル』は、全体的に山岳が多い島であり、海面からそびえたち、天然の要害という雰囲気だった。但し、造られた町の周囲には平野が広がっていた」
「………………」
「平野は東西500km、南北350kmに広がり、周囲には深い濠をめぐらせた。島の南方に在った為、北風の影響はほぼなかった」
「………………」
「平野には更にたくさんの運河が通され、アトランティアルは豊かになり、更に人も増えた」
「………………」
「アトランティアルの地は肥沃なだけでなく、自然にみちあふれ、地下資源も豊富だった。人々は数多の農作物を育てながら、狩りをし、やがて家畜を飼うようになった。また、たくさんの鉱物が掘り出され、加工された」
「………………」
「アトランティアルの人々が生み出した生産物で、国は豊かになった。町は石造りの整然とした堅固な町となった」
「………………」
「人々は自国の発展を感謝し、海神王と正妻アンピトリテ、そして国民の母たる側室クレイトオの神殿を造り、日々、祈りをささげた」
「………………」
「神殿はアクロポリスと名付けられ、アトランティアル帝国における海神王信仰の中心となった」
「………………」
「アクロポリスは、オリハルコンで覆われ、神殿の中心である至聖所には、海神王の力の証、トライデントのレプリカが飾られていた」
「………………」
「アクロポリスに向かって日々祈る国民の熱い信仰は海神王の大きな力となり、アトランティアルの発展とともに喜んだ海神王は、国民を祝福し、神力で援助した」
「………………」
「結果、アトランティアルはますます栄え、戦車1万台、また軍船1,200隻を有する、当時の世界では有数の強大な軍事国家となった」
「………………」
「少し、はしょったけど、……と、いうところかな。とりあえず疲れたから、ちょっと休憩♡ どうかな? 旦那様」
「ああ、良いんじゃないか」
「うん! ありがと♡」
ルウからOKを貰い、笑顔のナディアはベッドの脇のサイドテーブルへ手を伸ばし、
水差しから冷たい水を飲む。
こくこくと、ナディアの喉が鳴り、水が流し込まれた。
「ふう……でも、旦那様。ここから、アトランティアル帝国は徐々に、滅びの道を歩むんだよね」
「ああ、そうだな」
ルウを見つめていたナディアの瞳が少し憂いの色を帯びた。
こんな時のナディアは『愛されたい少女』となる。
抱かれているルウの胸に顔をうずめ、すりすりと、猫のように甘えたのである。
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