第1,353話 「考古学プラスαの問答①」
南の海域へ赴き、スキュラ、カリブディスの魂を鎮め、
諸悪の根源たる海神王、
そして生涯唯一の嫉妬により、身を持ち崩したアンピトリテ。
ふたつの魂の残滓も冥界へ送ったルウは、モーラル、テオドラとともに、
ブランデル邸へ戻って来た。
転移魔法で、南方の海から瞬時に帰還したとはいえ……
全てを処理した時は、もう夕方……
ブランデル邸内、自分の書斎の隣り、転移ポートたる控室に現れたのは、午後4時過ぎ……
事前に、フラン、アリス、執事のアルフレッドへ念話で連絡を入れておいたので、
風呂と夕食の準備が出来ていた。
用意してあった風呂へ、手早く入ったルウは、フラン達と夕食を摂った。
全員が、ルウ、モーラル、テオドラから、今回託された案件の経緯と顛末を聞きたがった。
元々、使用人も一緒に、楽しくにぎやかに食事を摂るのが、ブランデル家の流儀である。
当然、エーコーのエレナ、ナーイアスのリゼッタふたりのニンフ、
今回ルウへ、スキュラ救済を依頼したふたりも同席していた。
本来、依頼したスキュラは勿論だが、偶然カリブディスも救えたと聞き、エレナもリゼッタも、
思わず涙ぐんでいた。
ルウの話がひと通り終わった後、質問タイムとなり、盛り上がったが、
あっという間に22時。
ブランデル邸の決まり――
ローカルルールで、特別な事情がなければ各自が自室へ戻る時間である。
ルウが話したのは、今回起こった事すべてではない。
詳細を省き、要点をかいつまんで話したものである。
当然、厳秘であり、聞いた内容は、たとえ肉親でも一部の者を除き、
外部の者には話す事は禁じられている。
但し、もう少し内容を知りたい者は、ルウに事前相談した上で、
ふたりきりで、内々に話して貰う事が可能である。
ルウの妻達は交代で、ルウと一緒に寝る順番を決めていた。
今夜はナディアとなっている。
ナディアは将来、考古学者になりたいと希望し、日々熱心に勉強している。
今回は、海神王――ガルドルド帝国と並ぶ、アトランティアル帝国の遺構を見れるかもしれないと、予想。
帰宅予定日から数日間、ルウとの同衾が可能なよう調整したのだ。
本来、今夜は『彼女の順番』ではない。
その後の数日間もそうだ。
しかし、ルウが南の海域へ赴き、
災難を被ったニンフ達を救うと聞いて、頼み込んだ上、順番を代わって貰ったのである。
ルウは予定通り帰って来た。
なので、ナディアの同衾は今晩のみ。
明日からは通常の予定へ戻る。
段取り良く、質問も事前にルウへ託してあった。
なので、主なやりとりは決まっていた。
追加質問があれば、内容次第で受ける事となっている。
「さあ、旦那様、行こうか♡」
「了解!」
ルウとナディアは寄り添い、ブランデル邸最上階にある、ルウの寝室へ消えたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ふたりは寝間着に着替え、一緒にベッドへ潜り込んだ。
いつもはマイペースでクール&ドライ、クレバーというボクっ子のナディアだが、
それはあくまで表向き。
家族の誰もが彼女の素――内面を知っている。
ナディアの素……
情に厚く、思いやりがある。
涙もろく、義理堅い。
計算など二の次で良く行動してしまう。
そう、彼女は真逆ともいえる内面を持っていたのだ。
そんなナディアが……
何故、考古学にはまったのか? といえば、『ある理由』があった。
……いつかナディアは、ルウへ言っていた。
やはりある晩、ふたりきりで眠った時である。
「旦那様、実はボク、子供の頃から昔の人達に興味があるんだよ。遺跡とか古文書とか大好きなんだ」
「そうか、昔の人達か……」
「旦那様は師匠にいろいろ話を聞いたんだよね?」
「ああ、聞いたな……」
「旦那様のお師匠様、アールヴ族のソウェル様、シュルヴェステル・エイルトヴァーラ様って、8千年余りも生きていらしたんでしょう? それって、昔の有名な人と同世代で生きていたんだよね」
「ああ、そうだな……」
「わお! それって、凄いよ」
ここでルウは少し考え、少し詳しい話をする事にした。
「うん! 俺も弟子入りした時、今のナディアのように聞いた」
「本当に? あはは、やっぱり旦那様とボクは似たもの同士、いや、結婚したから似たもの夫婦だね♡」
「ああ、ナディアの言う通りだ。俺は古文書に出て来る人と話したのかと聞いたよ」
「うおっ? そ、それで?」
「ああ、いきなりだが……古の魔法王ルイ・サレオンに会った事はあるかと聞いたんだ」
「うわ! いきなり超大物だね! そ、それで?」
「ああ、親友だった。……魔法の技能を切磋琢磨した仲だと言われた」
「うおおっ!! す、すっごいや! あ、あとは、お師匠様って、どんな人と知り合いだったの?」
「ああ、ヴァレンタイン王国建国の開祖、バートクリード・ヴァレンタイン様と同志だと言ってもいた」
「同志? じゃあお師匠様って、円卓の騎士って事? でも古文書に記載されている円卓の騎士の中に、お師匠様の名前はないよね?」
「ああ、ヴァレンタイン王国建国前に、自分の役目は終わったと言って去ったそうだ」
「すっご~い! かっこい~!」
……というやりとりがあり、以来ナディアは古代史に大いに興味を持った。
何故なら、シュルヴェステルの教えと記憶を受け継いだルウは、生きた歴史の証人なのだから。
結果、ナディアは、出来れば毎日、歴史の話を聞きたいとせがむようになった。
今回も、古の時代にあった幻の古代帝国アトランティアル帝国の話を聞きたいとせがんでくる事が確定していたのである。
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