第1,352話 「生涯唯一の嫉妬㊸」
長らくお読み頂いた今パート『生涯唯一の嫉妬』の最終話です。
※小説の最終回ではありません。
次回からは新パートが始まる予定です。
何卒宜しくお願い致します。
『ルウ様……罪深き我が父を宜しくお願い致します……どうぞ、お送りくださいませ』
トリトーンから引導を渡すよう言われ、頷いたルウは振り返り、
火柱となった海神王へ冷たい視線を向け、
『堕ちよ!』
と言い、指をピン!と鳴らした。
すると、燃え盛る火柱――海神王は跡形もなく、消え失せた。
父・海神王が完全に消え失せたのを見届け、トリトーンは嘆息した。
そしてルウへ振り向き、深々と頭を下げる。
『ルウ様、本当にありがとうございました。父も冥界の底で本来の自我、理性と誇りを取り戻し、犯した罪を償い、いつか母アンピトリテと再会して欲しいです』
『うむ……そうだな……』
『そして、いつか、両親が一緒に、仲睦まじく幸せな転生を果たせばと、切に願うばかりです』
『……………』
ルウの無言は、「そこまで同意出来ない」という意思の証である。
幸せな人生を破壊され、悲惨な末路をたどったスキュラ、メドゥーサを始めとした、
数多の女子達の不幸を考えれば、やはり諸悪の根源、海神王は絶対に許せない存在なのだ。
『……………』
『……………』
モーラル、テオドラも無言のまま、言葉を発さない。
ルウと同じ気持ちに違いない。
そんなルウの気持ちを見抜いてか、トリトーンは再びルウ達3人へ、
深々と頭を下げた。
と、その時。
ごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごご!!!!!
地の底深くから聞こえて来る『うなり』と『激しい振動』が至聖所を襲った。
そして、宙に浮いたまま、
これまで海神王の魂の残滓が宿っていた、
海の王者の証たる巨大なトライデントが、
ぱっき~~~んんんん!!!
と、呆気なく柄の部分がまっぷたつに折れ、
どどどん! と床へ落ちた……
その場の誰もが確信する。
海神王、そして女神アンピトリテの魂が完全に現世から滅した。
それゆえ!
至聖所が……否!
ふたりの魂に支えられて保っていた『海神王の神殿全て』が崩壊するのだ。
対して、ルウは全く動じない。
淡々と、モーラル、テオドラへ言い放つ。
『脱出するぞ』
『『はい!』』
モーラル、テオドラの返事を聞き、
頷いたルウ。
続いてトリトーンへ、
『10秒待つ……その間に、この至聖所の光景を心に刻め』
幼き頃から、両親、神殿とともにトリトーンは在った。
その想い出をルウは汲んでくれたのである。
『は、はいっ! ルウ様、ありがとうございますっ!!』
10,9,8,7,6,5……
たった10秒である。
されど10秒ともいえる。
各自が数える10秒間は……ひどく長く感じた。
……4,3,2,1……
『転移!』
10秒のカウントダウン終了直後、
ルウの転移魔法が発動。
巨大な魔力が4人を包み、その姿は崩壊する海神王の至聖所、
そして、同神殿からも瞬時に消えたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
………しばらくの間。
トリトーンは気を失っていたようである。
想い出の場所たる神殿崩壊のショックで、心にダメージを負ったらしい。
気が付けば……
神殿が在った場所から少し離れた何もない海域の底である。
ルウが起こすとともに、治癒の魔法もかけてくれたらしい。
目覚めた時、心身の不調は全く感じず、逆に爽快感さえあった。
目の前には、大気に包まれたルウ、モーラル、テオドラが浮かんでおり、
周囲には、数多の魚、海獣等々、トリトーンの眷属達が心配そうに見守っていた。
その後方には巨大な身体を見せるシーサーペント、クラーケンが控えている。
『ルウ様……皆様……』
ルウはトリトーンへ、柔らかく微笑みかける。
『気が付いたか、トリトーン。しばし、おとなしくしていれば、すぐ元気になるだろう』
『あ、ありがとうございます』
『海神王神殿の崩壊とともに、アトランティアル帝国帝都の遺構も、道連れとなり崩壊した』
『そ、そうだったのですか! で、でも帝都遺構付近に居た眷属達は全く無傷です! な、何故!?』
『……俺が念話で事前退避を指示した。全員素直に従ってくれたよ』
『あ、あああ! ありがとうございます!』
『……神殿の守護者だったシ-サーペントとクラーケンは俺の収納の腕輪内に収めておいたから、無事だった。先ほどお前同様に目が覚めた』
『お、おおお!』
『同じく、守護者だったリヴァイアサンは、本人の希望もあり、俺が従士として召し抱える』
『わ、分かりました! あ、ありがとうございます!! な、何から何まで!! 感謝致しますっ!!』
『それと、これだ。お前が気を失った時に手放したから、一緒に転移させておいた』
ルウが「ピン!」と指を鳴らすと、海中にトリトーン愛用のトライデントが現れた。
そのまま「ふわふわ」と進み、トリトーンの傍らに浮く。
『あ、ああ!! わ、わ、私のトライデント!!』
『……このトライデントは、海の王たる証。そしてトリトーン、お前と両親の想い出の品でもある』
ルウの言葉を聞き、トリトーンは無言で泣いている。
『……………』
『トリトーン。……お前の両親は逝った』
『……………』
『……今後は、お前が眷属達とともにこの海域を治めて行け。……両親が犯した過ちを二度と繰り返してはいかんぞ』
『は、はい! 両親の犠牲となった者達の冥福を祈りつつ、眷属達とともに! この海域をしっかりと治めて行きますっ!』
ルウを見るトリトーンの眼差しは真剣であった。
対して、ルウは柔らかく微笑みながら、
『約束したぞ。違えるなよ……』
そして、
『トリトーン……今後、何か、あれば念話を送ってくれ。……いつでも相談に乗ろう』
と、フォローも約束してくれた。
トリトーンはまたも涙ぐむ。
『あ、ありがとうございます!』
ここで、モーラルとテオドラが、笑顔で手を振る。
『じゃあ、さよならね。私達、そろそろ失礼するわ』
『さようならあ!』
別れの言葉を告げた女子ふたり。
しかしルウは、
『またな!』
と短く言葉を残し、3人はまた転移魔法で消え失せたのであった。
いつもご愛読頂きありがとうございます。
※当作品は皆様のご愛読と応援をモチベーションとして執筆しております。
宜しければ、下方にあるブックマーク及び、
☆☆☆☆☆による応援をお願い致します。
東導号の各作品を宜しくお願い致します。
⛤『魔法女子学園の助っ人教師』
◎小説書籍版第8巻が2/19に発売されました!《ご注意!第8巻のみ電子書籍専売です》
(ホビージャパン様HJノベルス)
既刊第1巻~7巻大好評発売中!
第1巻から8巻の一気読みはいかがでしょうか。
◎コミカライズ版コミックス
(スクウェア・エニックス様Gファンタジーコミックス)
☆最新刊第5巻が4/27に発売されました!
コミカライズ版の一応の完結巻となります。
何卒宜しくお願い致します。
既刊第1巻~4巻大好評発売中!
コミックスの第1巻、第3巻、第4巻は重版しました!
皆様のおかげです。ありがとうございます。
今後とも宜しくお願い致します。
また「Gファンタジー」公式HP内には特設サイトもあります。
コミカライズ版第1話の試し読みも出来ます。
WEB版、小説書籍版と共に、存分に『魔法女子』の世界をお楽しみくださいませ。
マンガアプリ「マンガUP!」様でもコミカライズ版が好評連載中です。
毎週月曜日更新予定です。
お持ちのスマホでお気軽に読めますのでいかがでしょう。
最後に、他作品のご紹介を。
新連載『気が付いたら下僕!隙あらば支配!追放大歓迎!実は脱出!マウントポジション大好きな悪役令嬢よ、さようなら!の俺が幸せになるまでの大冒険物語!』
※旧作品の大幅加筆改稿リニューアル版です。
連載中である
⛤『外れスキルの屑と言われ追放された最底辺の俺が大逆襲のリスタート! 最強賢者への道を歩み出す!「頼む、戻ってくれ」と言われても、もう遅い!』
⛤『帰る故郷はスローライフな異世界!レベル99のふるさと勇者』《連載再開!》
⛤『頑張ったら報われなきゃ!好条件提示!超ダークサイドな地獄パワハラ商会から、やりがいのある王国職員へスカウトされた、いずれ最強となる賢者のお話』
も何卒宜しくお願い致します。




