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第1,350話 「生涯唯一の嫉妬㊶」

神たる高貴な立場と巨大な力を本能と私利私欲の為だけに使い、己を全く顧みず、

遂に創世神に滅ぼされた南の神々……


その南の神々の第二神、海神王。


南の神々が粛清された後、その彼ら彼女達の魂の殆どが冥界に堕ち、今や現世に在るのは、

残滓に過ぎない欠片のみの海神王ではあったが……

絶対に身内しか立ち入らせない神殿の聖なる最奥、『至聖所』へ、

下等と見下すルウ達、人間が入り込んだのが、よほど許せなかったのだろう。


魔力があまりない魂の|欠片とはいえ、神としてこの南方の海域に君臨した海神王としては最後の意地を見せるつもりなのだ。


ルウ達の目の前に、筋骨隆々の巨大な偉丈夫が立ちはだかる。

髪は明るい茶色。 右目にアイマスクをしている。


背中には巨鳥の翼のような純白の派手な羽飾りをつけ、

白布で造られた、極端に露出度の高い衣装を身に着けている。


魔力で造られた虚像であるとはいえ、ひどくリアルな質感であった。


この『偉丈夫』こそ、息子トリトーンが生まれてから長年見続けて来た、父・海神王の勇姿に間違いない。


『ち、父上ぇぇ!!』


心が打ち震えるような懐かしさ……

そして優しい母を追い詰めた父に対する激しい激しい憎しみの感情が、

トリトーンの心の中で複雑に交錯する。


しかし!

絶叫するトリトーンの心の叫びは、やはり届かない。


それどころか、『神体』として宿らせていた巨大なトライデントが、

ふわっと浮き上がり……

水平となって、叫ぶトリトーンへその切っ先がぴたりと向けられた。


トライデントには『殺気』がみなぎっている。

息子トリトーンを殺す気満々という雰囲気であった。


海神王の残滓は全く躊躇しなかった。


ひょおおおっ!!


大気を切り裂く音を立て、トライデントが繰り出される。


がい~~んん!!


瞬間、金属が思い切り叩かれたような音がして、


がらんがらんがらん!!!

と、派手な音を立て、トライデントは至聖所の床へ転がってしまう。


ルウの背から伸びた巨大な純白の翼――絶対防御の象徴『完全な翼ペルフェクトゥスアーラ』が、トリトーンを刺し貫こうとするトライデントの刃を弾いたのである。


『貴様ああ!! 神たる我に逆らうかあ!!』


海神王の怒声が飛ぶ。

同時に、至聖所の内部が強烈なプレッシャー、圧迫感に満ちた。


精神的な感覚のみではない。

ふらちな侵入者を、実際に「ぺしゃんこ」にしようという、

強力な物理的攻撃も併せてである。


ぎしぎしぎしぎし!


大気が不気味な音を立てるが……

ルウ達4人を包んだ球形の大気はプレッシャーに耐え、

そしてまたもルウの『完全な翼ペルフェクトゥスアーラ』が、

それらを完全にはねのけた。


『父上……わ、私を本気で殺そうと……』


そんなトリトーンの嘆きは、やはり海神王には届かない。


怒りの声が向けられたのは……ルウである。


ルウも海神王を無視、呆然とするトリトーンへ呼びかける。


『その通りだ、トリトーン。お前の父・海神王は全く躊躇ちゅうちょなく、お前を刺し貫こうとした』


『……………』


『……これで分かっただろう。先に堕ちた母も、この父も、自我とともに、神たる理性も誇りも失ってしまった』


『……………』


『最後だ……せめて、お前の父が冥界の底で母アンピトリテと連れ添えるよう、祈ってやれ』


『……ルウ様!?』


『海神王よ……お前の妻アンピトリテを、そしてメドゥーサ、スキュラ……数多の女を不幸にした大罪をここに償え! ……ビナー、ゲブラー! 高貴なる火界王パイモンよ! 我が魔力に、その偉大なる炎の力を託せ!』


驚いたトリトーンが我に返った時には、既にルウの詠唱が始まっている。


改めてトリトーンが見やれば、何と!

ルウの全身から凄まじい炎が噴き出している。


とてつもない魔法が発動するのだ。


『我が魂より出でし、燃え盛る(エシュ)よ! 更に猛き(シャルヘベット)となれ!』


呼び掛けるような言霊(ことだま)に反応、

ごう! とルウを包む炎が、数十mも立ち昇った。


まるで巨大な竜の如く。


これは……火界王パイモンが、不死の怪物ヒュドラを一瞬で屠った猛炎の魔法である。


『こ、この魔法は!?』


その時。

モーラルの声が、トリトーンの心に響く。


『トリトーン』


『は、はい!』


『旦那様のおっしゃる通り、お前の父と最後の別れをしなさい』


『最後の……わ、別れ!?』


『そうよ……お前の父、海神王は、冥界の業火にも勝る猛炎で焼かれるの……』


『冥界の業火にも勝る猛炎……でや、焼かれる……』


『ええ、海神王は人間の旦那様から、死にも勝る屈辱の痛みを与えられながら冥界へ堕ちて行く……だから、今がまさに別れの時……いくら自我を失い、息子の貴方を容赦なく殺そうとした父親だとしても……「さらば」と告げておあげなさい!』


『は、は、はいっ!!』


モーラルに激しく促され……

トリトーンは覚悟を決めた。

先ほどの母に続き、父とも別れの時が来たのだと。


その間も、ルウの詠唱は続いている。


『……聖なる猛き(シャルヘベット)よ! 我に仇なす敵、全てを焼き尽くせ! 大いなる復活(テヒヤー)の為に!』


『さあ、トリトーン! 祈るのです! そしてお前の父へ別れの言葉を告げなさい!』


モーラルの言う通り、もうルウの魔法は発動寸前だと分かる。


トリトーンは叫ぶ。

魂の底からというくらいに力を込めて。


『父上ぇぇ!! 貴方の犯した重き罪を償い、いつか!! いつか、母上とともに、やり直しの転生をぉぉ!! お祈り申し上げます!! さ、さらばですぅぅ!!』


トリトーンの別れの言葉が終わった瞬間。


ごおはあああああああああっ!!!


ルウと一体化した炎の竜が、凄まじい声で咆哮した。


体内魔力が最高に高まったのであろう。


ルウの口から、決めの言霊が放たれた。


同時に、ルウの魔法が発動された。

火界王パイモンが行使する火の魔法最上位の魔法である。


破壊(ヘレス、ハシュマダー)!』


ごあああああああああああああああああっっっっ!!!


すると、一瞬にして!

偉丈夫たる海神王の『残滓』が激しく激しく燃え上がった。


『ぎゃあああああああ!!!! バ、バ、バカなあっっ!!?? に、人間如きの魔法にぃぃ!!?? か、か、神たる我がああっっ!!??』


海神王の残滓は断末魔の悲鳴をあげ……

至聖所の四方へ紅蓮の猛炎が吹き荒んだ。

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