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第1,348話 「生涯唯一の嫉妬㊴」

かつての気高さ、理性は完全に失われ……

見る影もなく変貌してしまった海の女神アンピトリテの残滓は、

ルウの魔法により己の容姿を醜き合成魔獣ハルピュイアへと変えられ、

深き冥界の底へ、堕ちて行った……


『う、ううう……』


合成魔獣(キメラ)と化し、冥界へ堕ちた母を思い……嗚咽し、泣き崩れる海神トリトーン。


美しく優しかった母の変貌が信じられず、息子はただただ、哀しく涙するのだ。


アンピトリテが神殿内から完全に消えたのを見届け……

ルウはゆっくりとトリトーンへ眼差しを向ける。


『トリトーン、俺を恨むのなら、遠慮なく恨め』


慟哭するトリトーンは、どこへ気持ちを吐き出せば良いのか、分からないに違いない。

ルウは、「自分を恨め」という事で『逃げ道』を造ったのだ。


しかし、トリトーンはゆっくりと首を横へ振る。


『い、いえ……とんでもありません! 罪なきスキュラが、姿を変えられた惨状を目の当たりにしては……彼女を救ったルウ様を恨むなど出来やしません』


母を愛するトリトーンも……

さすがに母に命じられたキルケーが凶行に及んだのを見て、思うところがあったらしい。


ルウは軽く息を吐く。


『そうか……』


『はい、改めて思います。スキュラには何の罪もなかったのですから』


『ふむ……』


『それを無防備な水浴びの最中、あのように苦しめ、母は彼女をおぞましい怪物へ変えてしまった。毒薬を盛った魔女キルケーともども、冥界の底にて犯した重き罪を償うべきなのです』


『ああ、俺とモーラル、テオドラはその為にここへ来たのだからな』


『はい、重々理解しております。それにルウ様は母が更生する道を、完全には閉ざされはしませんでした』


『分っていたか……』


『はい! ルウ様は母へおっしゃってくれました。罪を償えば、いつか、転生出来るだろうと希望を伝えてくれました。母にとって、残された私にとって、それが唯一の救いと癒しになります』


『うむ……分かってくれたなら、何よりだ』


『はい』


『しかし……ここからが本番だ』


『はい、愚かな父を……母の生涯唯一の嫉妬をもたらした海神王を裁く……冥界へ堕とすのですね』


『ああ、そうだ。それもアンピトリテやキルケーなど比較にならない苦しみと屈辱を味合わせ、冥界の最下層へ永遠に堕としてやる』


『か、覚悟の上です』


『ああ、海神王は、強引に結婚したお前の母アンピトリテという珠玉を持ちながら、ニンフ、スキュラをわがものにしようとした』


『はい!』


『スキュラが拒絶すると、あろうことか恋心を募らせ、妻にスキュラの美しさを語る始末……救いようがない。神に全く相応しくない、外道の所業だ』


『わ、私も父の所業は……許せません!』


『お前にも分かっていたはずだ。お前の父や伯父の外道さをな』


『確かに……そうです』


『ただ、神格という権威と力が邪魔をし、お前は父へ物言いをする事が出来なった』


『ルウ様のおっしゃる通りです』


『……よし、では行こう。モーラル、テオドラ、行くぞ』


『は、はい!』


『はい!』

『はい!』 


残るは海神王のみ……

ルウ、モーラル、テオドラ、そして海神トリトーンは、

海神王の神殿最奥にして本体、『至聖所(しせいじょ)』へ歩みを進めたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


大海蛇シーサーペント、大王烏賊クラーケン、古代竜の如き大海魔リヴァイアサンの3守護者。

そして妻たるアンピトリテを退けた今、海神王の神殿最奥にして本体、

至聖所(しせいじょ)』への歩みを阻む者は海神王以外何者も居ない。


至聖所は純白の大理石で造られており、神々しく輝いていた。


ぱっと見たところ、やはり内部へ入る扉等は見当たらない。


その時。

重々しい声が、ルウ達の心へ響く。

同時に強烈なプレッシャーも襲って来る。

3守護者、アンピトリテの比ではない、圧し潰されそうな強力なプレッシャーである。


『神聖なる我が神殿最奥へ、入り込んだのは何者だ?』


海神トリトーンにとって、母同様、散々聞いた声と存在感である。


『ち、父上!!』


思わず叫んだトリトーンであったが……

返って来た反応は、母アンピトリテと全く同じである。


『貴様……何者だ? 我が海の一族にもかかわらず、神聖な最奥、至聖所まで、不浄の輩どもを連れ込むとは?』


やはり海神王も魂の残滓と成り果てて、我が子も分からぬほどになってしまったのだ。


『ち、父上!!』


『裏切者に父などと呼ばれとうないわあ! 穢らわしい! 裏切者めが、さっさと去れ! 去らぬと最強たる神の我が天罰を下してくれる!』


『ち、父上ぇぇ!! つ、罪を犯した罪を償ってくださあい!!』


『裏切者が! 何を世迷言(よまいごと)を抜かすかあ! 去れ! 去れえ!』


『う、ううう……』


母に続き、変わり果てた父……


『トリトーン』


ルウが声をかけると、トリトーンは振り向く。


『……だ、大丈夫です、ルウ様。申し訳ありません……私が至聖所内部への扉を開けます』


トリトーンはそう言うと、持っていたトライデントを輝く至聖所の壁へ突き刺した。


すると!

金属音を発してはねかえされると思いきや!

トライデントはすっと、至聖所内部へ吸い込まれ……


ぱっと至聖所の壁が消え、ぽっかりと四角の大きな穴が開いたのである。

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