第1,341話 「生涯唯一の嫉妬㉜」
ルウ達の目の前に広がるのは、海神王がつなげた未知の異界からつながる広大な海洋なのだが……
この先に、海神王神殿の『最奥たる場所』があるのは間違いない。
そこには……
ルウ達と共に行くトリトーンの両親、海神王と妻アンピトリテ2神の、
『魂の残滓』が在るはずだ。
『最奥たる場所』へ行くのを阻止すべく……
遂に出現した『シーサーペント』、『クラーケン』の『守護者』2体を、
テオドラとモーラルが殆ど戦いにならぬレベルで軽く一蹴。
ルウ達一行は、更に奥へ進んで行く。
しかし誰の顔も緩んではいない。
全員が真剣な表情である。
無理もない。
神殿最後の守護者は、創世神がつがいを滅ぼした事から『不死』になったといわれる恐るべき巨大な海魔『リヴァイアサン』だからである。
簡単に先述はしたが……
ここで海魔リヴァイアサンについて、改めて補足しておこう。
神代、つまり神の時代、もしくはこの世界の原初において、全宇宙の支配者、
創世神により創られた巨大な海魔、それがリヴァイアサンだ。
気になるその名の由来は『渦巻く者』である
その由来通り……
普段は深き海に棲むリヴァイアサンがひとたび泳ぐと、海面が渦巻くように割れたという。
その渦で航行する船を呑み込み、数多の者が犠牲となった。
また海上に立ち上る竜巻なども起こす凄まじい能力も有している。
リヴァイアサンの巨大な口からはドラゴンのような猛炎を吐き、鼻からは漆黒の煙をなびかせる。
全身は鋼鉄をも軽く弾く鎧の如き硬いうろこで覆われており、殆どの武器を受け付けない。
性格はシーサーペント、クラーケン以上に冷酷、獰猛で好戦的だと言われている。
そんなリヴァイアサンは「海で発生する天変地異全ての元凶だ」と噂されるほどの、禍々しい存在なのだ。
最強の海魔と謳われるリヴァイアサンに、今度はルウが挑む事となる。
『モーラル、テオドラ、ふたりともお疲れだったな。最後の守護者リヴァイアサンとは俺が戦おう』
『はい、旦那様、お手数ですが、宜しくお願い致します』
『ルウ様の戦い、しかと拝見させて頂きます』
モーラルもテオドラも、自然に笑顔となった。
ルウがリヴァイアサンと戦うとあって緊張はしているが、油断はしていない。
リヴァイアサンは、神代に生まれたとんでもない海魔だが……
ふたりが愛し、信頼するルウは更に『とんでもない存在』
――『選ばれし第三の使徒』だと、ふたりは知っているからだ。
但し、トリトーンはルウの正体を知らない。
所詮『人間族の上級魔法使い』であり、せいぜい飛びぬけた『賢者レベル』であるとしか認識していない。
あの恐るべきリヴァイアサンと戦うのに、全く動じず、怯えも臆しもしないとは……
トリトーンが発する心の『つぶやき』を聞きながら、ルウ、モーラル、テオドラは進んでいたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ルウ達が更に進むと……
受ける心身への圧迫感がますます強くなる。
「ふっ」と笑い、ルウが告げる。
『俺達は既に海神王の神域へ入っているが、遂に『最奥』が近付いたようだ』
ルウが告げた『神域』という言葉がある。
補足しよう。
『神域』とは、神が宿るとされる場所を指す。
このような神殿でも、日本の神社でも、神域とそうでない場所――俗界、
つまり現世と神域を区別する為、仕様を変える事が多い。
分かりやすく言えば、建築物の趣きを変えたり、段差を付けたり、柵を設置したりするのだ。
日本の神社で象徴的なのが『鳥居』なのである。
つまり鳥居の向こう側は『神域』という事となる。
先頭を行くトリトーンへ、ルウが声をかける。
『トリトーン、そろそろ神殿の最奥、そしてリヴァイアサンのお出ましだな?』
『ルウ様!』
『リヴァイアサンの荒ぶる姿は……以前、何度も目の当たりにしました。奴が本気を出せば海洋ひとつが壊滅します』
『そうだろうな』
『そ、それでも! ルウ様は、挑もうと、戦うと、……おっしゃるのか?』
『ああ、リヴァイアサンの実力は、充分に分かっているからな』
『充分に分かっている? ど、どうしてそこまで言い切れるのですか?』
『言い切れるさ、俺はお前より、遥か以前より、奴を良く知っている』
『遥か以前より、リヴァイアサンを良く……知っている……どのような意味ですか?』
『言葉通りさ』
『言葉通り……とは?』
『俺は……「あいつが生まれた時」から知っている』
『は!?』
『……と、いう事だ。分かったか?』
『ま、ま、ま、まさかあ!!??』
これだけ会話をして、ようやくトリトーンは認識し、理解した。
ルウはリヴァイアサンとほぼ同じ時に生まれた。
という事はまさか!!??
『ル、ル、ル、ルウ様!!??』
『おう!』
『も、も、もしや!! 貴方様は選ばれし、第三の使徒!!?? げ、げ、原初の人間!? ア、アダムK!!??』
『お前の想像に任せよう……』
ルウは明確な答えを戻さなかった。
しかし彼の物言い、そして背に生える巨大な12枚の翼が全てを物語っていたのである。
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