第1,339話 「生涯唯一の嫉妬㉚」
やがて……姿を現したのは守護者の一端を担う、30mを超える巨大な海蛇、
シーサーペントである。
現れたシーサーペントは旧き海図には良く描かれているが……
まるでワニのような頭を持ち、細長く巨大な身体で、背には『たてがみ』のような長い毛が生えており、上下に身をくねらせてゆうゆうと泳いでいる。
すかさず!
「すいっ」と、テオドラが一歩踏み出す。
金髪碧眼の美少女の足取りには、迷いや臆した様子は全くない。
歩みを進みながら、テオドラは宣戦を布告する。
『ルウ様。では、私が先駆けを……』
モーラルも10代の少女だが、テオドラは見た目、若干10代半ばの人間の少女である。
一見して線も相当細い。
しかし彼女の正体は……
アトランティアル帝国と同じく、古に滅んだ古代帝国ガルドルドが魔法科学の粋を集め、対悪魔兵器として開発した自動人形なのである。
『あの小柄な子が……巨大なシーサーペントと戦うとは……大丈夫なのか?』
驚き戸惑う海神トリトーンだが、ルウもモーラルも止めたりせず、平然と見送っていた。
『テオドラを過小評価しない方が良い』
『旦那様のおっしゃる通りです』
『何と……』
自動人形戦士テオドラは古の時代、数多の悪魔と戦った。
戦い抜き、終いには敗れ、悪魔ネビロスにより心身を囚われの身となったが、
ルウに救われ、今や忠実な『従士』となり、いくつもの戦場に赴いている。
今回も自ら志願し、ルウに付き従っているのだ。
『念の為、警告はしておこう。お前も守護者を任されたのなら、覚悟はあろう』
『……………』
『私達はまっすぐこの神殿の最奥へ進むのみ……もしも行く手を阻むというのなら、……打ち滅ぼす』
『……………』
きっぱりと言い放つテオドラの心の波動を感じ、ただならぬ殺気を感じたに違いない。
シーサーペントは戦闘態勢を取った。
顔の半分はあろうかという口を大きく開き、長く巨大な身体をくねらせる。
近付けば容赦なく巻き付いて喰い殺すという趣きだ。
両者は、身構え対峙した。
殺気と殺気が、海中でぶつかり合う。
瞬間!
テオドラは弾丸のように自身の身体を発射した。
凄まじい速度で海中を進むテオドラ。
シーサーペントは、テオドラに噛みつき砕こうとしたが、空振り!
合わせて身体を巻きつけようとしたが、またも空振り!
巨大な海蛇の攻撃はあっさりと虚しく躱された。
そしてテオドラの「きゃしゃ」で小さな身体が、
シーサーペントからわずかな距離をすり抜けた時。
いきなり!
シーサーペントが脱力した。
全身の力が「ぐにゃり」と抜け、海中に「ふわふわ」と浮遊したのだ。
『ふ! また私の技を使ったか』
「にいっ」と笑うモーラルが呟いた通りである。
テオドラは、魔力吸収を使った。
攻撃を躱しざま、シーサーペントに軽く触ったのだ。
そして瞬時にシーサーペントの『体内魔力の99%』を吸収したのである。
体内魔力をここまで失えば、使徒や悪魔でさえ、意識を失うどころか、活動不可能となる。
戦う事など、到底無理だ。
しかし、打ち滅ぼすといっても、テオドラはシーサーペントの命を奪うつもりはない。
『ルウ様、回収を』
『了解』
テオドラの言葉に応じ、ルウは左腕につけた収納の腕輪をシーサーペントへ向けた。
間を置かず、腕輪がまばゆく輝き、シーサーペントの巨体は消え失せた。
ルウの腕輪の中へ仮死状態のまま『収納』されたのである。
『な、何故……殺さなかった』
吐き出すようにつぶやくトリトーン。
シーサーペントの攻撃を完全に見切り、圧倒的な強さを見せたテオドラ。
倒そうと思えば、あっさりシーサーペントを引き裂いていたはずだ。
そんなトリトーンへ、ルウが告げる。
『分からないのか、トリトーン……』
『………………』
『神殿の外にはお前を待つ数多の眷属が居る』
『ま、まさか!』
『そうさ、この神殿の守護者も、いずれお前の眷属となる』
『う、ううう……そ、そこまで』
『ああ、戦いの後は、お前が眷属どもを率い、この南方の海を平和に治めるのだ……生き延びたシーサーペントはお前を助けて行くだろう』
『し、しかし! リヴァイアサンは!』
トリトーンは伝説の大海魔の名を口にした。
『ああ、リヴァイアサンだけは、南の神の眷属ではない。お前の父、海神王が神の御業で無理やり心を縛った。この神殿の守護者にすべく』
『………………』
『リヴァイアサンは、太古に創世神が造りし存在だ。それゆえ奴の意思だけは分からん……』
ルウとトリトーンが、会話を交わしていたその時。
シーサーペントを遥かにしのぐ巨大な気配が出現した。
『おお、クラーケンが!』
シーサーペントが敗れた事を知り、出撃して来たに違いない。
第二の守護者クラーケンが現れた。
いかのような形状をした巨体が、ゆうゆうと泳ぎ、こちらへ向かって来る。
『では、今度は私が……』
モーラルはふっと笑い、体内魔力を一気に上げたのである。
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