表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1339/1391

第1,339話 「生涯唯一の嫉妬㉚」

 やがて……姿を現したのは守護者の一端を担う、30mを超える巨大な海蛇、

 シーサーペントである。


 現れたシーサーペントは旧き海図には良く描かれているが……

 まるでワニのような頭を持ち、細長く巨大な身体で、背には『たてがみ』のような長い毛が生えており、上下に身をくねらせてゆうゆうと泳いでいる。


 すかさず!

 「すいっ」と、テオドラが一歩踏み出す。

 金髪碧眼の美少女の足取りには、迷いや臆した様子は全くない。


 歩みを進みながら、テオドラは宣戦を布告する。


『ルウ様。では、私が先駆けを……』


 モーラルも10代の少女だが、テオドラは見た目、若干10代半ばの人間の少女である。

 一見して線も相当細い。


 しかし彼女の正体は……

 アトランティアル帝国と同じく、(いにしえ)に滅んだ古代帝国ガルドルドが魔法科学の粋を集め、対悪魔兵器として開発した自動人形(オートマタ)なのである。


『あの小柄な子が……巨大なシーサーペントと戦うとは……大丈夫なのか?』


 驚き戸惑う海神トリトーンだが、ルウもモーラルも止めたりせず、平然と見送っていた。


『テオドラを過小評価しない方が良い』


『旦那様のおっしゃる通りです』


『何と……』


 自動人形(オートマタ)戦士テオドラは古の時代、数多の悪魔と戦った。


 戦い抜き、終いには敗れ、悪魔ネビロスにより心身を囚われの身となったが、

 ルウに救われ、今や忠実な『従士』となり、いくつもの戦場に赴いている。


 今回も自ら志願し、ルウに付き従っているのだ。


『念の為、警告はしておこう。お前も守護者を任されたのなら、覚悟はあろう』


『……………』


『私達はまっすぐこの神殿の最奥へ進むのみ……もしも行く手を阻むというのなら、……打ち滅ぼす』


『……………』


 きっぱりと言い放つテオドラの心の波動を感じ、ただならぬ殺気を感じたに違いない。


 シーサーペントは戦闘態勢を取った。

 顔の半分はあろうかという口を大きく開き、長く巨大な身体をくねらせる。

 近付けば容赦なく巻き付いて喰い殺すという趣きだ。


 両者は、身構え対峙した。


 殺気と殺気が、海中でぶつかり合う。


 瞬間!


 テオドラは弾丸のように自身の身体を発射した。

 凄まじい速度で海中を進むテオドラ。


 シーサーペントは、テオドラに噛みつき砕こうとしたが、空振り!

 合わせて身体を巻きつけようとしたが、またも空振り!


 巨大な海蛇の攻撃はあっさりと虚しく躱された。

 そしてテオドラの「きゃしゃ」で小さな身体が、

 シーサーペントからわずかな距離をすり抜けた時。


 いきなり!

 シーサーペントが脱力した。

 全身の力が「ぐにゃり」と抜け、海中に「ふわふわ」と浮遊したのだ。


『ふ! また私の技を使ったか』


「にいっ」と笑うモーラルが呟いた通りである。


 テオドラは、魔力吸収を使った。

 攻撃を躱しざま、シーサーペントに軽く触ったのだ。

 そして瞬時にシーサーペントの『体内魔力の99%』を吸収したのである。


 体内魔力をここまで失えば、使徒や悪魔でさえ、意識を失うどころか、活動不可能となる。

 戦う事など、到底無理だ。


 しかし、打ち滅ぼすといっても、テオドラはシーサーペントの命を奪うつもりはない。


『ルウ様、回収を』


『了解』


 テオドラの言葉に応じ、ルウは左腕につけた収納の腕輪をシーサーペントへ向けた。

 間を置かず、腕輪がまばゆく輝き、シーサーペントの巨体は消え失せた。


 ルウの腕輪の中へ仮死状態のまま『収納』されたのである。


『な、何故……殺さなかった』


 吐き出すようにつぶやくトリトーン。


 シーサーペントの攻撃を完全に見切り、圧倒的な強さを見せたテオドラ。

 倒そうと思えば、あっさりシーサーペントを引き裂いていたはずだ。


 そんなトリトーンへ、ルウが告げる。


『分からないのか、トリトーン……』


『………………』


『神殿の外にはお前を待つ数多の眷属が居る』


『ま、まさか!』


『そうさ、この神殿の守護者も、いずれお前の眷属となる』


『う、ううう……そ、そこまで』


『ああ、戦いの後は、お前が眷属どもを率い、この南方の海を平和に治めるのだ……生き延びたシーサーペントはお前を助けて行くだろう』


『し、しかし! リヴァイアサンは!』


 トリトーンは伝説の大海魔の名を口にした。


『ああ、リヴァイアサンだけは、南の神の眷属ではない。お前の父、海神王が神の御業で無理やり心を縛った。この神殿の守護者にすべく』


『………………』


『リヴァイアサンは、太古に創世神が造りし存在だ。それゆえ奴の意思だけは分からん……』


 ルウとトリトーンが、会話を交わしていたその時。


 シーサーペントを遥かにしのぐ巨大な気配が出現した。


『おお、クラーケンが!』


 シーサーペントが敗れた事を知り、出撃して来たに違いない。

 第二の守護者クラーケンが現れた。

 いかのような形状をした巨体が、ゆうゆうと泳ぎ、こちらへ向かって来る。


『では、今度は私が……』


 モーラルはふっと笑い、体内魔力を一気に上げたのである。

いつもご愛読頂きありがとうございます。


※当作品は皆様のご愛読と応援をモチベーションとして執筆しております。

宜しければ、下方にあるブックマーク及び、

☆☆☆☆☆による応援をお願い致します。


東導号の各作品を宜しくお願い致します。


⛤『魔法女子学園の助っ人教師』

◎小説書籍版第8巻が2/19に発売されました!《ご注意!第8巻のみ電子書籍専売です》

(ホビージャパン様HJノベルス)

既刊第1巻~7巻大好評発売中!

第1巻から8巻の一気読みはいかがでしょうか。


◎コミカライズ版コミックス

(スクウェア・エニックス様Gファンタジーコミックス)

☆最新刊第5巻が4/27に発売されました! 

コミカライズ版の一応の完結巻となります。

何卒宜しくお願い致します。


既刊第1巻~4巻大好評発売中!

コミックスの第1巻、第3巻、第4巻は重版しました!

皆様のおかげです。ありがとうございます。

今後とも宜しくお願い致します。


また「Gファンタジー」公式HP内には特設サイトもあります。

コミカライズ版第1話の試し読みも出来ます。


WEB版、小説書籍版と共に、存分に『魔法女子』の世界をお楽しみくださいませ。


マンガアプリ「マンガUP!」様でもコミカライズ版が好評連載中です。

毎週月曜日更新予定です。

お持ちのスマホでお気軽に読めますのでいかがでしょう。


最後に、他作品のご紹介を。

新連載『気が付いたら下僕!隙あらば支配!追放大歓迎!実は脱出!マウントポジション大好きな悪役令嬢よ、さようなら!の俺が幸せになるまでの大冒険物語!』


※旧作品の大幅加筆改稿リニューアル版です。


連載中である

⛤『外れスキルの屑と言われ追放された最底辺の俺が大逆襲のリスタート! 最強賢者への道を歩み出す!「頼む、戻ってくれ」と言われても、もう遅い!』

⛤『帰る故郷はスローライフな異世界!レベル99のふるさと勇者』《連載再開!》

⛤『頑張ったら報われなきゃ!好条件提示!超ダークサイドな地獄パワハラ商会から、やりがいのある王国職員へスカウトされた、いずれ最強となる賢者のお話』


も何卒宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ