第1,337話 「生涯唯一の嫉妬㉘」
新連載を始めました。
こちらも何卒宜しくお願い致します。
⛤『気が付いたら下僕!隙あらば支配!追放大歓迎!実は脱出!マウントポジション大好きな悪役令嬢よ、さようなら!の俺が幸せになるまでの大冒険物語!』
https://ncode.syosetu.com/n2400hg/
それまで、ゆったりと歩いていたトリトーンの歩調が、力強く変わった。
と、その時。
『この裏切り者め! 自ら進んで侵入者の案内役をするとは、我が海の一族の恥さらしだ!』
長き回廊を進むルウ達の『心』にいきなり女性の大きな声が響いた。
ルウ達には聞き覚えがない声であるが、先頭を歩くトリトーンへ発せられた叱責であった。
しかし、叱責を心へ差し込まれたトリトーンには聞き覚えがある。
否!
ありすぎる声である。
『は、母上か! もしや、母上なのかっ!』
どうやら、トリトーンへ叱責を向けたのは、海神王の妻。
トリトーンの母である海の女神アンピトリテらしい。
思わず言葉を戻すトリトーン。
しかし!
アンピトリテは、トリトーンの呼びかけに対し、全く反応しない。
それどころか、容赦ない叱責が更に続く。
『黙れ! 穢らわしい裏切者め! 気安く母などと呼ぶでないっ!』
『え!?』
『お前が一体何者なのか、妾は知らぬ! だが間違いなく、お前は我が海の一族たる魔力波を発しておる! 創世神を怖れ、すごすごとその軍門に下ったのかあ! 恥を知れぃ!』
『な、何を言っている! わ、我が子の! わ、私を忘れたのか! 母上ぃ!』
『問答無用! けがわらしいよそ者を引き入れる裏切者には死、あるのみ! 神聖な神殿を汚す者には鉄槌を下してくれる!』
『は、母上ぇぇ!!』
ルウが告げた通りであった。
トリトーンの心へ、ルウから告げられた言葉が、次々とリフレインする。
『トリトーン、……現在、神殿に在るお前の両親は、既に魂の残滓に過ぎない。正常な判断、理性を失い、本能のみとなっている可能性が大だ』
『海神王も、アンピトリテも……お前が知る生前とは、全く違う醜い姿を見せるだろう。聞くに堪えない暴言を吐き、みっともなく荒ぶる姿を、息子たるお前の前にさらけだすやもしれん。それでも構わないのか?』
『先ほども告げたが……お前の同胞である大神の妻、戦女神の魂の残滓を冥界へ送った時、両名とも、神たる誇りも理性もなく、ひどく取り乱したのだ。はっきり言って情けない姿だったぞ』
『お前はそんな両親の姿を見て平気なのか? 取り乱したりしないのか? やけとなり、死して、後を追うなどと言わないのか?』
『お前が持つ両親との思い出は、酸いも甘いも全てが壊される。その覚悟はあるのか?』
『……もしも、自信がなかったり、少しでも迷いがあるのなら、再会するのはやめておけ……』
『お前の言う「裁きの日」に、南の神々はお前以外、創世神により天罰を受け、全て死に絶えた。……そう割り切るのだ』
淡々とし、単に制止するだけと聞こえる言葉の裏には、
ルウから、トリトーンへの思いやりと気配りが感じられた。
それゆえトリトーンは熟考の上、決意した。
『い、いくら変わり果てていたとしても、私が持つ両親との思い出が、酸いも甘いも全てが壊されたとしても、ふたりにひと目だけでも会えれば! さらばと声をかける事が叶えば! 構いません! その覚悟を持ちましたっ! 取り乱したり、自死も絶対に致しませんっ!』
しかし、言うは易く、現実は厳しい。
息子の気配が全く分からぬ母の叱責は、トリトーンの心を深くえぐったのだ。
『う、うおおおおおおっっ!!』
頭を抱え、戸惑い、取り乱すトリトーンへ、ルウの魔法が神速で行使される。
『鎮静!』
『う、うおっっ!!?? ……はあ、はあ、はああっっ!!』
荒い息のまま、動揺するトリトーン。
ルウは言う。
『落ち着け、トリトーン』
『は、はいっ!』
『うむ、良い返事だ……これくらいの言葉で混乱していたら、神殿最奥で理性を失くした両親を見て、お前は耐え切れまい』
『………………』
『この神殿にかけられていた結界は、既に俺が破壊した。神殿の外には一瞬で戻る事が可能だ』
『………………』
『どうする? トリトーン。もしもお前が望むのなら、転移魔法ですぐ戻す。外には眷属達が帰還を待っているだろう』
『………………』
『悪いが、俺達は充分に待ち、お前がどうするのか、選択の時間を与えた。今、お前が体験した状況も想定内だ』
やはりルウは自分の事をずっと気遣ってくれていた。
救い出されたニンフ達、非業の死を遂げたニンフ、人間が心身を委ねる気持ちを、
トリトーンは改めて実感する。
『………………』
『さあ、決めてくれ』
『……参ります、ルウ様。私は共に参ります!』
『……分かった、行こう』
ルウは警告した通り取り乱したトリトーンを全く責めなかった。
ただただ、気持の確認をしただけである。
ルウとの会話を共有し聞いているモーラルもテオドラも何も言わない。
トリトーンには分かる。
ルウもモーラルも、そしてテオドラも、悲しみから心に深き傷を負い、多くの血を流したと。
4人は再び、歩き出したのである。
いつもご愛読頂きありがとうございます。
※当作品は皆様のご愛読と応援をモチベーションとして執筆しております。
宜しければ、下方にあるブックマーク及び、
☆☆☆☆☆による応援をお願い致します。
東導号の各作品を宜しくお願い致します。
⛤『魔法女子学園の助っ人教師』
◎小説書籍版第8巻が2/19に発売されました!《ご注意!第8巻のみ電子書籍専売です》
(ホビージャパン様HJノベルス)
既刊第1巻~7巻大好評発売中!
第1巻から8巻の一気読みはいかがでしょうか。
◎コミカライズ版コミックス
(スクウェア・エニックス様Gファンタジーコミックス)
☆最新刊第5巻が4/27に発売されました!
コミカライズ版の一応の完結巻となります。
何卒宜しくお願い致します。
既刊第1巻~4巻大好評発売中!
コミックスの第1巻、第3巻、第4巻は重版しました!
皆様のおかげです。ありがとうございます。
今後とも宜しくお願い致します。
また「Gファンタジー」公式HP内には特設サイトもあります。
コミカライズ版第1話の試し読みも出来ます。
WEB版、小説書籍版と共に、存分に『魔法女子』の世界をお楽しみくださいませ。
マンガアプリ「マンガUP!」様でもコミカライズ版が好評連載中です。
毎週月曜日更新予定です。
お持ちのスマホでお気軽に読めますのでいかがでしょう。
最後に、他作品のご紹介を。
新連載『気が付いたら下僕!隙あらば支配!追放大歓迎!実は脱出!マウントポジション大好きな悪役令嬢よ、さようなら!の俺が幸せになるまでの大冒険物語!』
※旧作品の大幅加筆改稿リニューアル版です。
連載中である
⛤『外れスキルの屑と言われ追放された最底辺の俺が大逆襲のリスタート! 最強賢者への道を歩み出す!「頼む、戻ってくれ」と言われても、もう遅い!』
⛤『帰る故郷はスローライフな異世界!レベル99のふるさと勇者』《連載再開!》
⛤『頑張ったら報われなきゃ!好条件提示!超ダークサイドな地獄パワハラ商会から、やりがいのある王国職員へスカウトされた、いずれ最強となる賢者のお話』
も何卒宜しくお願い致します。




