表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1337/1391

第1,337話 「生涯唯一の嫉妬㉘」

新連載を始めました。

こちらも何卒宜しくお願い致します。


⛤『気が付いたら下僕!隙あらば支配!追放大歓迎!実は脱出!マウントポジション大好きな悪役令嬢よ、さようなら!の俺が幸せになるまでの大冒険物語!』


https://ncode.syosetu.com/n2400hg/

 それまで、ゆったりと歩いていたトリトーンの歩調が、力強く変わった。

 と、その時。


『この裏切り者め! 自ら進んで侵入者の案内役をするとは、我が海の一族の恥さらしだ!』


 長き回廊を進むルウ達の『心』にいきなり女性の大きな声が響いた。

 ルウ達には聞き覚えがない声であるが、先頭を歩くトリトーンへ発せられた叱責であった。


 しかし、叱責を心へ差し込まれたトリトーンには聞き覚えがある。

 否!

 ありすぎる声である。


『は、母上か! もしや、母上なのかっ!』


 どうやら、トリトーンへ叱責を向けたのは、海神王の妻。

 トリトーンの母である海の女神アンピトリテらしい。


 思わず言葉を戻すトリトーン。

 しかし!

 アンピトリテは、トリトーンの呼びかけに対し、全く反応しない。


 それどころか、容赦ない叱責が更に続く。


『黙れ! 穢らわしい裏切者め! 気安く母などと呼ぶでないっ!』


『え!?』


『お前が一体何者なのか、わらわは知らぬ! だが間違いなく、お前は我が海の一族たる魔力波オーラを発しておる! 創世神を怖れ、すごすごとその軍門に下ったのかあ! 恥を知れぃ!』


『な、何を言っている! わ、我が子の! わ、私を忘れたのか! 母上ぃ!』


『問答無用! けがわらしいよそ者を引き入れる裏切者には死、あるのみ! 神聖な神殿を汚す者には鉄槌を下してくれる!』


『は、母上ぇぇ!!』


 ルウが告げた通りであった。

 トリトーンの心へ、ルウから告げられた言葉が、次々とリフレインする。


『トリトーン、……現在、神殿に在るお前の両親は、既に魂の残滓に過ぎない。正常な判断、理性を失い、本能のみとなっている可能性が大だ』


『海神王も、アンピトリテも……お前が知る生前とは、全く違う醜い姿を見せるだろう。聞くに堪えない暴言を吐き、みっともなく荒ぶる姿を、息子たるお前の前にさらけだすやもしれん。それでも構わないのか?』


『先ほども告げたが……お前の同胞である大神の妻、戦女神の魂の残滓を冥界へ送った時、両名とも、神たる誇りも理性もなく、ひどく取り乱したのだ。はっきり言って情けない姿だったぞ』


『お前はそんな両親の姿を見て平気なのか? 取り乱したりしないのか? やけとなり、死して、後を追うなどと言わないのか?』


『お前が持つ両親との思い出は、酸いも甘いも全てが壊される。その覚悟はあるのか?』


『……もしも、自信がなかったり、少しでも迷いがあるのなら、再会するのはやめておけ……』


『お前の言う「裁きの日」に、南の神々はお前以外、創世神により天罰を受け、全て死に絶えた。……そう割り切るのだ』


 淡々とし、単に制止するだけと聞こえる言葉の裏には、

 ルウから、トリトーンへの思いやりと気配りが感じられた。


 それゆえトリトーンは熟考の上、決意した。


『い、いくら変わり果てていたとしても、私が持つ両親との思い出が、酸いも甘いも全てが壊されたとしても、ふたりにひと目だけでも会えれば! さらばと声をかける事が叶えば! 構いません! その覚悟を持ちましたっ! 取り乱したり、自死も絶対に致しませんっ!』


 しかし、言うは易く、現実は厳しい。

 息子の気配が全く分からぬ母の叱責は、トリトーンの心を深くえぐったのだ。


『う、うおおおおおおっっ!!』


 頭を抱え、戸惑い、取り乱すトリトーンへ、ルウの魔法が神速で行使される。


『鎮静!』


『う、うおっっ!!?? ……はあ、はあ、はああっっ!!』


 荒い息のまま、動揺するトリトーン。

 ルウは言う。


『落ち着け、トリトーン』


『は、はいっ!』


『うむ、良い返事だ……これくらいの言葉で混乱していたら、神殿最奥で理性を失くした両親を見て、お前は耐え切れまい』


『………………』


『この神殿にかけられていた結界は、既に俺が破壊した。神殿の外には一瞬で戻る事が可能だ』


『………………』


『どうする? トリトーン。もしもお前が望むのなら、転移魔法ですぐ戻す。外には眷属達が帰還を待っているだろう』


『………………』


『悪いが、俺達は充分に待ち、お前がどうするのか、選択の時間を与えた。今、お前が体験した状況も想定内だ』


 やはりルウは自分の事をずっと気遣ってくれていた。

 救い出されたニンフ達、非業の死を遂げたニンフ、人間が心身を委ねる気持ちを、

 トリトーンは改めて実感する。


『………………』


『さあ、決めてくれ』


『……参ります、ルウ様。私は共に参ります!』


『……分かった、行こう』


 ルウは警告した通り取り乱したトリトーンを全く責めなかった。

 ただただ、気持の確認をしただけである。


 ルウとの会話を共有し聞いているモーラルもテオドラも何も言わない。


 トリトーンには分かる。

 ルウもモーラルも、そしてテオドラも、悲しみから心に深き傷を負い、多くの血を流したと。


 4人は再び、歩き出したのである。

いつもご愛読頂きありがとうございます。


※当作品は皆様のご愛読と応援をモチベーションとして執筆しております。

宜しければ、下方にあるブックマーク及び、

☆☆☆☆☆による応援をお願い致します。


東導号の各作品を宜しくお願い致します。


⛤『魔法女子学園の助っ人教師』

◎小説書籍版第8巻が2/19に発売されました!《ご注意!第8巻のみ電子書籍専売です》

(ホビージャパン様HJノベルス)

既刊第1巻~7巻大好評発売中!

第1巻から8巻の一気読みはいかがでしょうか。


◎コミカライズ版コミックス

(スクウェア・エニックス様Gファンタジーコミックス)

☆最新刊第5巻が4/27に発売されました! 

コミカライズ版の一応の完結巻となります。

何卒宜しくお願い致します。


既刊第1巻~4巻大好評発売中!

コミックスの第1巻、第3巻、第4巻は重版しました!

皆様のおかげです。ありがとうございます。

今後とも宜しくお願い致します。


また「Gファンタジー」公式HP内には特設サイトもあります。

コミカライズ版第1話の試し読みも出来ます。


WEB版、小説書籍版と共に、存分に『魔法女子』の世界をお楽しみくださいませ。


マンガアプリ「マンガUP!」様でもコミカライズ版が好評連載中です。

毎週月曜日更新予定です。

お持ちのスマホでお気軽に読めますのでいかがでしょう。


最後に、他作品のご紹介を。

新連載『気が付いたら下僕!隙あらば支配!追放大歓迎!実は脱出!マウントポジション大好きな悪役令嬢よ、さようなら!の俺が幸せになるまでの大冒険物語!』


※旧作品の大幅加筆改稿リニューアル版です。


連載中である

⛤『外れスキルの屑と言われ追放された最底辺の俺が大逆襲のリスタート! 最強賢者への道を歩み出す!「頼む、戻ってくれ」と言われても、もう遅い!』

⛤『帰る故郷はスローライフな異世界!レベル99のふるさと勇者』《連載再開!》

⛤『頑張ったら報われなきゃ!好条件提示!超ダークサイドな地獄パワハラ商会から、やりがいのある王国職員へスカウトされた、いずれ最強となる賢者のお話』


も何卒宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ