第1,336話 「生涯唯一の嫉妬㉗」
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海神王と海の女神アンピトリテの子、海神トリトーンを先頭に立て、案内をさせる形で、
ルウ、モーラル、テオドラは海神王神殿の最奥へと進んで行く。
古の魔法帝国アトランティアルの持つ技術の粋を集めて建設した神殿は……
外部は崩壊しておらず、他の帝都遺構に比べ、全然しっかりとしていた。
だが、神殿の内部は更に美しくピカピカであり、細かな塵ひとつ落ちていない。
周囲の景色はといえば……
大理石よりも更に上質の石材で造られた、丸みのある巨大な石柱と長い回廊という景色が、
ず~っと続いていた。
そして至る所におびただしい珊瑚と宝石が飾られている。
いかにも『海の神の王』が厳かに祀られているという趣きだ。
しかし、ルウには不可解な点があるようだ。
先頭を歩くトリトーンへ、念話で話しかける。
『心の回線』がオープンなので、モーラルとテオドラも同時に聴いている。
ふたりと情報を共有する為だ。
『トリトーン、歩きながらで構わない、振り返らず、そのまま聞いてくれ』
ルウの指示通り、トリトーンは
『はい! では背中を向けたまま、失礼致します。……ルウ様、何でしょう?』
『神殿へ入る前、表から見て、そこそこ奥行きがあると思ったが……ありすぎる。途中から、どこかの異界とつながっているな?』
ルウの質問に対し、トリトーンはすぐ肯定した。
『さすがです。この神殿に異界へつなぐ空間魔法が使われているのを、ルウ様は見抜いていらっしゃいましたか?』
『ああ、この神殿へ入った時から分かっていたよ』
『そう……ですか』
『ああ、俺は今ひとりではない。大事な妻モーラルと妹テオドラが一緒だからな。ふたりをいたずらに危険にさらすわけにはいかん』
『成る程……では、この私がルウ様たちを陥れるか、否か、お疑いだとおっしゃるのですか?』
『いや、疑わないさ。だが、一応警告は告げておく。お前に心身全てをゆだねる事はしない。俺には家族が第一、その次は友と仲間だ』
ルウの話に嘘はない。
ただ、トリトーンの『誓いと誠実さ』は移ろいやすいものと、ルウは感じている。
変心があった場合、安易に想定外と言い、済む話ではなくなる。
その意思が念話を通じ、トリトーンの心へ流れ込んで来る。
トリトーンは頷き、納得した。
『ははは、道理ですね。私も同じです……』
『トリトーン、お前を同行させたのは俺達に対し、正直に話し、嘘をつかなかったからだ。だが、それ以上の信頼を得る為には、見合う誠意をしっかりと見せるべきだ』
『その通りだと私も思います。いちいち、納得しますよ』
『そうか。いくら正直に気持ちを告げようとも、言葉では何とでも言える。俺達の信頼が欲しいのなら行動で示してくれ。逆に、もしも反する行動を取れば、すぐさま転移魔法で放り出す』
『ははは、容赦ないですね』
『当たり前だろう。俺は性善説を信じない。何故なら、この世界の全ての者は様々な価値観を持ち、互いに相容れない場合も多い。何が正義か、悪か、判断するのは不可能だからだ』
『……………』
『お前と何がどう正しいとか、この場で議論するつもりはない。但し問題は、はっきりしている。全く関わりが無い第三者を己の価値観と感情で勝手に巻き込み、運命を非道に変えてしまう行為、これこそが悪だ』
ルウは、スキュラを始めとした数多のニンフ、そして人間の悲劇を告げているのだろう。
南の神々が行った非道な行為の事を……
暗い記憶が甦り、トリトーンの胸を苦い思いが満たす。
自分の母が、無理やり海神王に結婚させられた事もよぎったからだ。
しかし、父と母が結ばれなければ、自分という存在もない。
それが、余計に辛い……
『……………』
『この世界の全ての者が、様々な価値観をお互いに尊重し、静かに暮らしていれば済む話だ。欲に際限なく心身がまみれ、強引に奪おうとすれば、それが悪だと俺は思う』
『……………価値観をお互いに尊重し、静かに暮らせなかったから、欲に際限なく心身がまみれ、強引に奪ったから、私達南の神々は創世神様に滅ぼされた……という事ですね』
『……と、俺は思うよ』
『……………』
『過失なく無慈悲に運命を変えられた者の無念を晴らしたい、俺が動くのは、それだけさ』
過失なく無慈悲に運命を変えられた者……母アンピトリテも同様である。
その母が、生涯唯一の嫉妬に身を焦がし、スキュラの運命を非道に変えてしまった。
やはり、父・海神王が諸悪の根源、裁かれねばならないだろう。
罪を犯した哀れな母、そして欲望の赴くままに生きた父……
ふたりと今生の別れをする際、かける言葉は決まった。
『……トリトーン、腹をくくったようだな』
『はい、ルウ様。ご迷惑をおかけしました……参りましょう』
それまで、ゆったりと歩いていたトリトーンの歩調が、力強く変わったのである。
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