表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1336/1391

第1,336話 「生涯唯一の嫉妬㉗」

新連載を始めました。

こちらも何卒宜しくお願い致します。


⛤『気が付いたら下僕!隙あらば支配!追放大歓迎!実は脱出!マウントポジション大好きな悪役令嬢よ、さようなら!の俺が幸せになるまでの大冒険物語!』


https://ncode.syosetu.com/n2400hg/

 海神王と海の女神アンピトリテの子、海神トリトーンを先頭に立て、案内をさせる形で、

 ルウ、モーラル、テオドラは海神王神殿の最奥へと進んで行く。


 (いにしえ)の魔法帝国アトランティアルの持つ技術の粋を集めて建設した神殿は……

 外部は崩壊しておらず、他の帝都遺構に比べ、全然しっかりとしていた。

 だが、神殿の内部は更に美しくピカピカであり、細かな塵ひとつ落ちていない。


 周囲の景色はといえば……

 大理石よりも更に上質の石材で造られた、丸みのある巨大な石柱と長い回廊という景色が、

 ず~っと続いていた。

 そして至る所におびただしい珊瑚と宝石が飾られている。

 いかにも『海の神の王』が厳かに(まつ)られているという趣きだ。


 しかし、ルウには不可解な点があるようだ。

 先頭を歩くトリトーンへ、念話で話しかける。

 『心の回線』がオープンなので、モーラルとテオドラも同時に聴いている。

 ふたりと情報を共有する為だ。


『トリトーン、歩きながらで構わない、振り返らず、そのまま聞いてくれ』


 ルウの指示通り、トリトーンは


『はい! では背中を向けたまま、失礼致します。……ルウ様、何でしょう?』


『神殿へ入る前、表から見て、そこそこ奥行きがあると思ったが……ありすぎる。途中から、どこかの異界とつながっているな?』


 ルウの質問に対し、トリトーンはすぐ肯定した。


『さすがです。この神殿に異界へつなぐ空間魔法が使われているのを、ルウ様は見抜いていらっしゃいましたか?』


『ああ、この神殿へ入った時から分かっていたよ』


『そう……ですか』


『ああ、俺は今ひとりではない。大事な妻モーラルと妹テオドラが一緒だからな。ふたりをいたずらに危険にさらすわけにはいかん』


『成る程……では、この私がルウ様たちを陥れるか、否か、お疑いだとおっしゃるのですか?』


『いや、疑わないさ。だが、一応警告は告げておく。お前に心身全てをゆだねる事はしない。俺には家族が第一、その次は友と仲間だ』


 ルウの話に嘘はない。

 ただ、トリトーンの『誓いと誠実さ』は移ろいやすいものと、ルウは感じている。

 変心があった場合、安易に想定外と言い、済む話ではなくなる。


 その意思が念話を通じ、トリトーンの心へ流れ込んで来る。


 トリトーンは頷き、納得した。


『ははは、道理ですね。私も同じです……』


『トリトーン、お前を同行させたのは俺達に対し、正直に話し、嘘をつかなかったからだ。だが、それ以上の信頼を得る為には、見合う誠意をしっかりと見せるべきだ』


『その通りだと私も思います。いちいち、納得しますよ』


『そうか。いくら正直に気持ちを告げようとも、言葉では何とでも言える。俺達の信頼が欲しいのなら行動で示してくれ。逆に、もしも反する行動を取れば、すぐさま転移魔法で放り出す』


『ははは、容赦ないですね』


『当たり前だろう。俺は性善説を信じない。何故なら、この世界の全ての者は様々な価値観を持ち、互いに相容れない場合も多い。何が正義か、悪か、判断するのは不可能だからだ』


『……………』


『お前と何がどう正しいとか、この場で議論するつもりはない。但し問題は、はっきりしている。全く関わりが無い第三者を己の価値観と感情で勝手に巻き込み、運命を非道に変えてしまう行為、これこそが悪だ』


 ルウは、スキュラを始めとした数多のニンフ、そして人間の悲劇を告げているのだろう。

 南の神々が行った非道な行為の事を……


 暗い記憶が甦り、トリトーンの胸を苦い思いが満たす。

 自分の母が、無理やり海神王に結婚させられた事もよぎったからだ。

 しかし、父と母が結ばれなければ、自分という存在もない。

 それが、余計に辛い……


『……………』


『この世界の全ての者が、様々な価値観をお互いに尊重し、静かに暮らしていれば済む話だ。欲に際限なく心身がまみれ、強引に奪おうとすれば、それが悪だと俺は思う』


『……………価値観をお互いに尊重し、静かに暮らせなかったから、欲に際限なく心身がまみれ、強引に奪ったから、私達南の神々は創世神様に滅ぼされた……という事ですね』


『……と、俺は思うよ』


『……………』


『過失なく無慈悲に運命を変えられた者の無念を晴らしたい、俺が動くのは、それだけさ』


 過失なく無慈悲に運命を変えられた者……母アンピトリテも同様である。

 その母が、生涯唯一の嫉妬に身を焦がし、スキュラの運命を非道に変えてしまった。


 やはり、父・海神王が諸悪の根源、裁かれねばならないだろう。


 罪を犯した哀れな母、そして欲望の赴くままに生きた父……

 ふたりと今生の別れをする際、かける言葉は決まった。


『……トリトーン、腹をくくったようだな』


『はい、ルウ様。ご迷惑をおかけしました……参りましょう』


 それまで、ゆったりと歩いていたトリトーンの歩調が、力強く変わったのである。

いつもご愛読頂きありがとうございます。


※当作品は皆様のご愛読と応援をモチベーションとして執筆しております。

宜しければ、下方にあるブックマーク及び、

☆☆☆☆☆による応援をお願い致します。


東導号の各作品を宜しくお願い致します。


⛤『魔法女子学園の助っ人教師』

◎小説書籍版第8巻が2/19に発売されました!《ご注意!第8巻のみ電子書籍専売です》

(ホビージャパン様HJノベルス)

既刊第1巻~7巻大好評発売中!

第1巻から8巻の一気読みはいかがでしょうか。


◎コミカライズ版コミックス

(スクウェア・エニックス様Gファンタジーコミックス)

☆最新刊第5巻が4/27に発売されました! 

コミカライズ版の一応の完結巻となります。

何卒宜しくお願い致します。


既刊第1巻~4巻大好評発売中!

コミックスの第1巻、第3巻、第4巻は重版しました!

皆様のおかげです。ありがとうございます。

今後とも宜しくお願い致します。


また「Gファンタジー」公式HP内には特設サイトもあります。

コミカライズ版第1話の試し読みも出来ます。


WEB版、小説書籍版と共に、存分に『魔法女子』の世界をお楽しみくださいませ。


マンガアプリ「マンガUP!」様でもコミカライズ版が好評連載中です。

毎週月曜日更新予定です。

お持ちのスマホでお気軽に読めますのでいかがでしょう。


最後に、他作品のご紹介を。

新連載『気が付いたら下僕!隙あらば支配!追放大歓迎!実は脱出!マウントポジション大好きな悪役令嬢よ、さようなら!の俺が幸せになるまでの大冒険物語!』


※旧作品の大幅加筆改稿リニューアル版です。


連載中である

⛤『外れスキルの屑と言われ追放された最底辺の俺が大逆襲のリスタート! 最強賢者への道を歩み出す!「頼む、戻ってくれ」と言われても、もう遅い!』

⛤『帰る故郷はスローライフな異世界!レベル99のふるさと勇者』《連載再開!》

⛤『頑張ったら報われなきゃ!好条件提示!超ダークサイドな地獄パワハラ商会から、やりがいのある王国職員へスカウトされた、いずれ最強となる賢者のお話』


も何卒宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ