第1,335話 「生涯唯一の嫉妬㉖」
新連載を始めました。
こちらも何卒宜しくお願い致します。
⛤『気が付いたら下僕!隙あらば支配!追放大歓迎!実は脱出!マウントポジション大好きな悪役令嬢よ、さようなら!の俺が幸せになるまでの大冒険物語!』
https://ncode.syosetu.com/n2400hg/
不思議な事に「ふっ」と外壁が消え、ぽっかりと空洞が出来た。
『私が先導致します! どうぞ、続いてくださいませ!』
深くお辞儀をした海神トリトーンは、父を祀った神殿へ、ためらいなく足を踏み入れた。
続いて、ルウ、モーラル、テオドラも慎重に、神殿内へ足を踏み入れた。
ルウ達が見やれば……
ゆっくりと先導するトリトーンの行く手には……暗く長い廊下が続いている。
真っすぐに行く手を見据え、全く迷いのない足取りからして、トリトーンはずっと、この神殿で暮らしていたと思われる。
両親が……ふたりの魂の残滓が在る最奥へのルートをひたすらに目指しているようだ。
ルウはトリトーンが放つ波動を読み取る。
だが放つ波動に『闇』はない。
ルウ達を窮地へ陥れたり、罠のある場所へ誘導する邪な悪意はないようだ。
先ほど涙したように、純粋に両親へ今生の別れを告げたいに違いない。
トリトーンは、ルウ達に聞かせたいのか、それとも想い出を追いたいのか、
とりとめもなく話し始める。
『母アンピトリテは……内海を治める穏やかな海神ネーレウスが、海流の神オーケアノスの娘たる麗しき女神ドーリスとの間にもうけた、海の女神ネーレーイデスのひとりです』
『……………………』
ルウ、モーラル、テオドラは、トリトーンの話を聞きながら無言で歩いていた。
だが、トリトーンはそのまま話し続ける。
『母の名は、「広大な地を取り巻く第三の存在」という意味です。母の瞳は美しく、深き青色をしており、その力は絶大で、寄せて返す波を自由自在に操りました。眷属として、巨大な魚や海獣を数多従えてもおりました』
『……………………』
『先ほど私とともにいた者達は、かつて母の眷属だった者達です』
『……………………』
『ある日の事でした……母は、聖地ナクソスの島で創世神様に奉げる為、舞っているところを、父に見初められました。父は美しい母をひと目見て、夢中になってしまったのです』
『……………………』
『父は、その場で母に求婚しましたが、その無骨さに驚いた母は深き海の底に隠れてしまいました』
『……………………』
『どんな手を使っても母を妻として迎えたい父は、たくさんの贈り物をしましたが、母は頑なに拒みました』
『……………………』
『最後に父は、強引に話しかけましたが、無視され……仕方なくある海獣を使者として送りました』
『……………………』
『その海獣とは……「いるか」でした。「いるか」は、父がどれほど母を愛しているかを魅惑的な弁悦で語りました』
『……………………』
『度重なる求婚に根負けし、母は遂に、父を受け入れ、妻となる事を決心したのです』
『……………………』
『海神王と呼ばれる父は、元々大地の神でした。しかし母との結婚により、海を治める事が出来るようになりました』
『……………………』
『結婚した当初、父からまっすぐに愛され、母はとても幸せでした』
『……………………』
『父から真摯に愛され、母は、愛の結晶、私トリトーンと妹ふたりロデー、ベンテシキューメーを生み、育てました』
『……………………』
『しかし、母の幸せは長く続きませんでした』
『……………………』
『父は伯父の大神同様、奔放でだらしない性格でした。数多のニンフや人間の女性に見境なく手をつけました……私は父や伯父が大嫌いでした。憎んでも憎み切れないくらいでした。ですが、ふたりの巨大な神格から、私如きが意見するなど、絶対に出来ませんでした』
『……………………』
『母は、父の度重なる浮気をじっと我慢していました。私達3人の子を慈しみ育てる事で、耐えていたのです』
『……………………』
『しかしとうとう母の忍耐に限界が訪れました。父は絶対に告げてはならない禁句を母へ発したのです』
『……………………』
『アンピトリテ、お前以上に美しく麗しい女が居たと』
『……………………』
『それが……ニンフ、スキュラでした』
『……………………』
『生涯唯一の嫉妬に我を忘れた母は、鷹の魔女キルケーへ命じてしまいました』
『……………………』
『キルケーよ、スキュラが身を清める泉へ猛毒を盛れと、おぞましき怪物にし、我が夫の邪悪な愛を失くせと』
『……………………』
『キルケーは母の命令を守りました。否、面白がって進んで行ったと聞きました』
『……………………』
『その話をある眷属から聞き……私は複雑な思いでいっぱいになりました。罪なきスキュラへの申し訳ないという気持ちと、生涯唯一の嫉妬に身を持ち崩した母の哀れさ、そして全ての原因、諸悪の根源である父への憎しみ、殺意……その矢先に、あの滅びの日が来たのです』
『……………………』
『滅びの日の後……ひとり生き残った私は、眷属達とともに、無気力な日々を過ごしていました』
『……………………』
『そんな私の前に、ルウ様、貴方達が現れたのです』
『……………………』
『ルウ様……私は決めました。もしも叶うのなら、私自身の手で、両親を冥界へ送らせてください』
トリトーンはそこまで話すと足を止めた。
そしてゆっくり振り返ると、ルウ達へ深々と頭を下げたのである。
いつもご愛読頂きありがとうございます。
※当作品は皆様のご愛読と応援をモチベーションとして執筆しております。
宜しければ、下方にあるブックマーク及び、
☆☆☆☆☆による応援をお願い致します。
東導号の各作品を宜しくお願い致します。
⛤『魔法女子学園の助っ人教師』
◎小説書籍版第8巻が2/19に発売されました!《ご注意!第8巻のみ電子書籍専売です》
(ホビージャパン様HJノベルス)
既刊第1巻~7巻大好評発売中!
第1巻から8巻の一気読みはいかがでしょうか。
◎コミカライズ版コミックス
(スクウェア・エニックス様Gファンタジーコミックス)
☆最新刊第5巻が4/27に発売されました!
コミカライズ版の一応の完結巻となります。
何卒宜しくお願い致します。
既刊第1巻~4巻大好評発売中!
コミックスの第1巻、第3巻、第4巻は重版しました!
皆様のおかげです。ありがとうございます。
今後とも宜しくお願い致します。
また「Gファンタジー」公式HP内には特設サイトもあります。
コミカライズ版第1話の試し読みも出来ます。
WEB版、小説書籍版と共に、存分に『魔法女子』の世界をお楽しみくださいませ。
マンガアプリ「マンガUP!」様でもコミカライズ版が好評連載中です。
毎週月曜日更新予定です。
お持ちのスマホでお気軽に読めますのでいかがでしょう。
最後に、他作品のご紹介を。
新連載『気が付いたら下僕!隙あらば支配!追放大歓迎!実は脱出!マウントポジション大好きな悪役令嬢よ、さようなら!の俺が幸せになるまでの大冒険物語!』
※旧作品の大幅加筆改稿リニューアル版です。
連載中である
⛤『外れスキルの屑と言われ追放された最底辺の俺が大逆襲のリスタート! 最強賢者への道を歩み出す!「頼む、戻ってくれ」と言われても、もう遅い!』
⛤『帰る故郷はスローライフな異世界!レベル99のふるさと勇者』《連載再開!》
⛤『頑張ったら報われなきゃ!好条件提示!超ダークサイドな地獄パワハラ商会から、やりがいのある王国職員へスカウトされた、いずれ最強となる賢者のお話』
も何卒宜しくお願い致します。




