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第1,331話 「生涯唯一の嫉妬㉒」

 巨大魚と海獣の群れと共に現れたのは海神トリトーンであった。

 りりしい顔立ちをした男性の人間の上半身に、たくましい馬の前足、巨大な魚の尾を持つ異形の姿であり、豪奢な三叉の矛トライデントを手に持ち、首からは古めかしい法螺貝を提げていた。


 補足しよう。


 海神トリトーンとは……

 海神王と海の女神アンピトリテとの間に生まれた3人の子のひとりである。


 深き大海の底、海中のきらびやかな黄金宮殿で、両親とともに暮らす『深海を司る海神』だと伝えられている。


 トリトーンの使う武器は父の海神王ほどではないが、強大な力を持つトライデントだ。

 また、猛る野獣のうなり声のように吹き鳴らすほら貝は、自在に波を立てたり鎮めたりする効果があるという。


 トリトーンは訝し気な表情で、ルウ、モーラル、テオドラを見て尋ねて来る。


『私の正体を見抜いたお前は……何者だ?』


『トリトーン。俺は人間の魔法使い、ルウ・ブランデルだ。このふたりは俺の妻と妹だよ』


 ルウは名乗り、傍らに居るモーラルとテオドラも紹介したが、トリトーンは相変わらず、

3人を「ぎろり」とにらんでいた。


『むう、おかしいぞ、全く不可解だ!』


『ははは、何がどうおかしくて、何故、全く不可解なんだ?』


『ルウとやら、お前は、人間にしては、体内魔力量が多すぎる! 私より遥かに多い! そして従えているのは汚らわしい夢魔が妻で、ガラクタのような人形が妹だと!? 一体、どういうつもりなのだ?』


 トリトーンの物言いを聞き、ルウの眼差しが鋭くなる。

 しかし、口調は淡々としており、それが却って凄みを感じさせた。


『俺の連れを、それ以上(おとし)めたら許さんぞ。それに、お前如きに多くを語る必要はない』


『な、何だと!』


『俺達はな、縁あって身内となったニンフ達に関わる者の恨みを晴らし、やるべき粛清を行うのみ』


『ニンフがお前の身内だと!? な、何を言っている!?』


『うるさいな。いい加減黙れ』


 ルウはそう言うと、ピンと指を鳴らした。


『……………』


 質問攻めといえるトリトーンの声は聞こえなくなる。

 ルウが発動したのは、心の声――念話をも封じる『沈黙』の高位魔法であった。


『おいおい、いちいち、俺に根掘り葉掘り聞くなよ』


 ルウが苦笑し、言ったその時。


 ぶわっと、凄まじい殺気がルウ達を包み込む。


 主トリトーンがルウに力を封じられた為、

 敵意を持った巨大魚、海獣達が発した『殺気』である。


 しかし!

 

 ぶわわわわわわわわっっっ!!!!


 ルウ、モーラル、テオドラも、同じく負けじと殺気を放った。


 巨大魚、海獣達が発した殺気よりも、数十倍も大きな殺気がアトランティアル帝国帝国帝都を包んだのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ルウ達が殺気を放った瞬間!


 いきなり両手を大きく広げたトリトーンが、ルウ達に向かい突進した。

 しかしルウ達は全く動じない。


 トリトーンには殺気が全くなかったからである。


 ルウは黙って、再び指をピン!と鳴らした。


 沈黙の魔法が解除され、トリトーンは再びしゃべれるようになった。


『ま、ま、待てぃ!! お、お前達! やめろぉ! い、勇み足をするなあ!』


 慌ててトリトーンが広げた両手は「制止!」の意思を示したものである。


 ルウ、モーラル、テオドラの底知れぬ実力を見抜いたトリトーンは、

 このまま部下達が暴走すると、瞬時に殺されると分かり、必死に止めたのである。


 そして、トリトーンには見えていた。

 ルウが殺気を放った時、突如出現した、背に輝く巨大な12枚の翼が……


 神々しく輝く翼を見て、トリトーンはルウを畏怖したのである。


『トリトーン』


『な、何だ?』


『身を挺して、争いを回避した事に免じて、もう少し話をしよう』


『は、話を?』


『うむ、お前が知りたい事が分かるだろう。ストレートに話すが、けして取り乱すなよ』


『あ、ああ……』


『俺達は先ほど、鷹の魔女キルケーが住まう島、アイアイエー島へ赴いた』


『ア、アイアイエー島へ!?』


『ああ、そうだ。尋問の末、キルケーは全て白状した。お前の父、海神王のふざけた妄執の為、妻たるお前の母アンピトリテが心を大きく乱し、罪もないスキュラへ、非道な毒薬を盛るよう命じたと』


『むうう………』


『結果はお前も知っているだろう。美しく可憐だったスキュラは、おぞましい怪物と化し、人間を喰らうようになってしまった』


『……………』


『俺は身内となったニンフに頼まれ、ここへ出向いた。無念のうちに死んだ同胞スキュラの恨みを晴らし、二度とこのような事のないよう、罪を犯した当事者達の始末をして欲しいとな』


『と、当事者達の始末だとぉ! ま、まさか!』


『そのまさかだ。俺達は既に大神の妻、そして戦女神、それぞれの魂の残滓を冥界の底へ送った。罪を償わせる為にな』


『ぬううう……』


『俺達は、救ってウチへ引き取り、家族としたニンフ以外にも、古代王国の女王ラミア、戦女神に仕えた巫女メドゥーサの魂を救ったのだ』


『……………』


『実子のお前には辛い宣告となるが、お前の父海神王、母アンピトリテの魂も……残滓の状態だろうが、大神の妻、戦女神同様、冥界の底へ堕とす。犯した罪を償わせる』


『う、ううう……』


 ルウがきっぱり告げると……

 トリトーンは、ひどく辛そうに唸ってしまったのである。

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