第1,330話 「生涯唯一の嫉妬㉑」
降り立ったルウ達の目の前に、アトランティアル帝国の守護神、海神王の神殿が建っている。
真ん中に丸みを帯びた、美しいデザインの円柱を数多使用した、独特な趣きの神殿である。
この海神王の神殿は、魔法か何かで特別な仕掛けがしてあるらしい。
周囲に建ち並ぶアトランティアル帝国帝都の他の建築物とは全く違い、ほとんど荒れ果ててはいなかった。
さすがに「ピカピカ」とまでは言わないが、見る影もなく崩れたり、びっしりと海藻におおわれたりせず、それなりの趣きを持ち、しっかりと建っていたのだ。
ここでルウが首を横へ振り、苦笑する。
接近する何者かの『気配』を察知したようだ。
『はは、また来たのか』
間を置かずモーラルも、
『ええ、旦那様、先ほどのケートスほどの大きく強い気配ではありませんが、接近する者達が、結構居りますね』
どうやら、また『守護者の出現』なのであろう。
すかさず、テオドラが索敵能力を発揮する。
『はい、ルウ様、モーラル奥様。ご指摘の通り、巨大な魚と同じく海獣が数多、こちらへ接近しつつあります』
テオドラの報告を聞き、ルウは苦笑したまま、頷く。
『そうか、古文書の記載によれば、海神王の妻アンピトリテは、巨大な魚と海獣をペットにして飼っていたという。多分、そいつらだな』
『一応は、守護者って事ですか。こんな低レベルの奴らに私達を足止めさせようとしても無駄なのに』
『本当にそうです。ケートス以下では、敵にもなりません。また私がささっと、掃除して参りましょう』
『だな! 申し訳ないが、テオドラ。ケートス同様に、奴らの魔力を抜いて戦闘不能にしておいてくれ』
『了解です』
テオドラが「さくっ」と任務を遂行しようとしたその時。
ルウが制止する。
『おっと、テオドラ、ちょっと待て。どうやらもう一体、いやもうひとり居るな。魔力を極力抑え、巨大魚と海獣の中に、上手く隠れている』
『旦那様……これはそこそこ上位たる海神の気配ですね』
『そこそこ上位の海神ですか? 少しは歯ごたえがある相手でしょうか?』
テオドラの質問より早く、ルウは巨大魚と海獣の中に隠れている『海神』の正体を見抜いたようである。
『成る程、コイツか……しかし、この海神、殺気が全くない。俺達に何か、話があるのやもしれないな』
『ですね。念の為、戦闘準備をしておいて、とりあえず様子を見ましょう』
『了解しました』
と、いう事で……
ルウ、モーラル、テオドラは、敢えて迎撃せず、迫る守護者達を待ち受けたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
やがて……
ルウ達の前に『守護者達』は現れた。
「また来たのか?」と、ルウはしれっと告げていたが、その数は半端ではない。
一体が数mある巨大魚は数千に及び、体長5m以上の海獣も数百は居る。
そのいずれもが、普通は目にしない異形の姿をしていた。
全てが結構な魔力も発しており、明らかに一般的な海の魚でも獣でもない。
周囲をぐるりと囲まれた形となったが……
ルウもモーラルも、そしてテオドラも臆しも、慌ててもいなかった。
頃合いと見たのか、ルウが呼びかける。
『おい、そこに居る海神、もし俺達に話があるのなら、出てくれば良い。攻撃はしないぞ』
ルウが呼びかけしばし経ったが……返事はない。
『こうやって取り囲み、脅しても無駄だ。ケートスを見ただろう?』
ルウ達は海獣ケートスを群れを無力化し、冥界へ送ってしまった。
先制攻撃されたとはいえ、容赦ない対処に、『守護者』達ははっきり敵と見なしているはずだ。
しかし、巨大魚と海獣は反応しない。
苦笑したルウは、最後通告を行う事とした。
『何も用がないのなら、俺達は神殿へ行かせて貰う。時間もない事だしな……但し、邪魔をするのなら、ケートス同様、容赦なく排除させて貰うよ』
ここで、ようやく反応があった。
『ま、待て! 待ってくれ! お前達の意図を知りたい!』
制止する聞き覚えのない声とともに……
巨大魚と海獣の群れが、左右に分かれた。
その先には……
ひとりの海神が居た。
男性の人間の上半身に、たくましい馬の前足、巨大な魚の尾を持つ異形の姿を持つ、体長5mほどの海神である。
海神は海神王と同じ、三叉の矛を手に持ち、首から法螺貝を提げていた。
『やはり……お前か、トリトーン。生身という事は、創世神に粛清されず、生かされたな』
ルウは淡々と言い、海神――トリトーンをじっと見つめた。
『ぬう……姿を現す前に、私の正体を見抜いていたか!』
悔しそうにつぶやいた異形の海神は……
海神王と女神アンピトリテの3人の子のひとり……
深淵よりの使者とされる、トリトーンだったのである。
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