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第1,329話 「生涯唯一の嫉妬⑳」

 ルウ、モーラル、テオドラは海中を進んでいる。

 目指すのは南の神々のナンバーツーたる海神王の神殿である。


 空中高くから見たら、美しく青い海であった。

 海中の透明度も極めて高い。


 更に深く、深く潜って行く……


 やがて、3人の眼下には巨大な都市の遺構がはっきりと見えて来た。


 この都市こそが、遥か古の時代に栄え、海中へ没して滅んだと伝えられる、

 魔法帝国アトランティアルの帝都だ。

 朽ち果てた都市の残骸は、今や、巨大な墓標と化している。

 だが、この帝都に、目指す海神王の神殿があるはずである。


 ここでルウが、「ぱっ」と手を挙げた。

 3人に接近する『何者かの気配』を察知したようだ。


『おう、凄い殺気だな。キルケーの時のハルピュイアと同じだ。海神王の神殿を警護する守護者どものおでましだな』


 ルウは、敵を持って接近する者の正体も見抜いているらしい。

 当然、モーラルもテオドラも察知し、体内魔力を上げている。


 モーラルもテオドラも、当然、迫る波動を探知していた。


『旦那様、分かりますよ、この気配は人間ではありませんね』

『ええ、海神王の配下なら……海獣と呼ばれる合成魔獣ケートスでしょうか?』


 やがて……数多の魔獣が現れた。

 大きく膨れた胴体に犬の頭部を持ち、下半身が魚。

 尾ひれが扇形でふたつに分かれた姿を持つ、おぞましい合成魔獣(キメラ)だ。


 テオドラの推測通り、ルウ達の前に現れたのは……海神王に付き従う海獣ケートスである。


『うふふ、当たりよ、テオドラ』

『はい! ビンゴですね! モーラル奥様!』


 海獣ケートスの伝承は数多ある。

 たまたま通りかかった(いにしえ)の英雄が……

 戦女神より借用したメドゥーサの盾でケートスを倒し、いけにえにされそうとなった、

 王女アンドロメダを救った逸話は有名だ。


 また海獣ケートスは、船乗りにとって、航行の脅威となった難敵だが……

 ルウ達3人にとって、さして怖れる相手ではない。


 怖ろしい怪物と言われるケートスだが、魔法は一切使えない。

 また特殊攻撃も持ち合わせていない。

 鋭い牙と尾ひれの『物理的な攻撃』をするのみなのだ。


 苦笑したルウが言う。


『ケートスなど、ハルピュイア以下だ。殺すまでもないな』


 モーラルも同意する。


『ええ、確かに、そうです。しかし、二度と人間に害を為さぬよう、無力化しておくのが賢明かと』


『うむ、それは俺も同意だ』


 ルウとモーラルの会話を聞いたテオドラ。


 ここでまた、手を挙げる。


『はい!』


『うふふ、どうしたの、テオドラ』


『はい、奴らも私にお任せください。あっさりと戦闘不能に致します』


『何か策があるようね……旦那様、テオドラに任せましょう』


『分かった、頼むぞ』


 ルウの言葉を聞き、優雅に一礼したテオドラ。

 海中を素晴らしい速度で進み、ケートスの群れの中へ突っ込んだ。


 驚き戸惑うケートスどもであったが……

 何故か、「ぷかぷか」と脱力し、全く動かなくなってしまった。


 ケートスどもが戦闘不能となってから、テオドラはすぐに戻って来た。

 にっこり笑って、モーラルが問う。


『うふふ、テオドラ、お疲れ様。ケートスの魔力を吸収し、失神させ、戦闘不能にしたのね?』


 この世界全ての者が魔力を有している。

 魔法を使う為だけでなく、活動の基となるエネルギーなのである。

 例えれば生物における水の如く……必要量を失えば、死へ至るのだ。


 そこまでいかずとも、大量の魔力を失えば、活動停止となる。


『はい、モーラル奥様の戦法を使わせて頂きました。しばし経ち、魔力が回復すれば、動けるようになるはずです。後の仕上げをお願い致します』


 対して、テオドラも微笑み、頷いた。


『よし、では奴らもハルピュイア同様、冥界へ送り、カロンの配下として、冥界の河ステュクスに送ってやるか』


『はい、冥界の河ならば、塩水も淡水も関係ないですね』


『うふふ、ですねっ!』


頷いたルウは、ひとさし指を軽く振った。

瞬間!


ケートスは全てが、消え失せていたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ルウ、モーラル、テオドラは更に進む。

 海神王の神殿はすぐに分かった。


 南の神を祀る独特なデザインの神殿が帝都の一角に鎮座していたのである。


 ルウ、モーラル、テオドラは頷き合い、神殿へ接近した。


 その時。


『誰じゃ! ふらちにも我が神殿を侵そうとする者は!』


 厳しい非難の口調、それも女性の声である。


 発する巨大な魔力波(オーラ)は、ただものではないと分かる。

 しかし、ルウは発した大元が実体ではない事も即座に見抜いた。


『創世神により、南の神々とともに粛清され、魂の残滓と化した海神王が妻、アンピトリテか!』


『ぬぬ! 無礼者! 我が名を呼び捨てにするとは! 天罰を下そうぞ!』


『天罰? ははは、天罰を下されるのはお前だ、アンピトリテ』


『何だと!』


『大神の妻同様、己の夫を責めず、罪なきスキュラを水浴中、奸計により怪物に貶めた罪……けして許されぬ!』


『くっ!』


『安心しろ! 既にお前の走狗キルケーは低俗な魔獣ハルピュイアへ姿を変え、冥界へ叩き込んだ。お前もキルケー同様、愛する夫とともに、冥界の底へ送ってやるよ』


『ぬぬぬぬぬ! 言わせておけば! 絶対に許さぬ!』


『ははははは! ふざけるなよ。絶対に許さぬ! というのはこちらのセリフだ』


 ルウはそう言うと、モーラル、テオドラと頷き合い……

 海神王の神殿へ降り立ったのである。

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