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第1,323話 「生涯唯一の嫉妬⑭」

『おお、そこそこ美味いじゃないか』

『はい、まずまず美味しいです』

『まあ、結構いけますね』


「ほほほほほほほ! 当然じゃっ! この宴で使うておる食材は、(わらわ)自ら、世界中より選び抜いた山海の超が付く一級品なのであ~る!」


 ルウ、モーラル、テオドラが満面の笑みで料理を食べるのを見て……

 大広間には、得意満面の悪しき魔女、キルケーの高笑いが響いていた。


 そして彼女の顔は言っていた。

 『こいつら、わざわざ罠にかかりおって』と。

 そして(さげす)んでもいた。

 『とんでもない馬鹿で愚か者め!』と。


 しかし、キルケーは忘れていた。

 先ほど起こった、到底信じられず、とんでもない出来事を。


 ルウの無詠唱、神速で行使された解呪魔法により、家臣全員の変身が解け、全てが寿命の限界から肉体を失った事を。


 心身ともに追い詰められ、窮地に陥ったキルケーは、それほどまでに正常な判断が出来ず、

冷静さ、知性を失っていたのである。


 ……やがて食事は終わった。

 ルウは「もう食べるのは無理」とばかりにポンと軽く腹を叩き、

 モーラルとテオドラは、「満ち足りた」とばかりに大きく息を吐いた。


『ふう、食ったあ』

『おいしゅうございました』

『ごちそうさま』


 ルウが素知らぬふりをして、ニタニタ笑うキルケーへ声をかける。


『さあ、キルケー』


『な、何じゃ! まだ料理が足らぬのか? デザートのお代わりでも欲しいのか!』


『ははは、デザートのお代わりも悪くはないが……もっと盛り上がるのではないのか?』


『な、何じゃと!』


『ははは、お前にとって、ここからが、お待ちかねのショータイム開始だろ?』


『ふ、その通りじゃ! ルウよ、結構な自信のようだが、そこまで余裕を見せておいて良いのかな?』


『ああ、構わないんだよ。これからの展開が、最後まで分かっているからな』


『ははははは、これからの展開が、最後までか! では! お前の言葉通り! さっさと最後にしてやるわ! 我が魔法杖で、びしっ!と打擲(ちょうちゃく)してやろうぞ!』


 キルケーが「ピン!」と指を鳴らせば……


 大広間の中央天井近く、凝った彫り物が施された、1本の魔法杖が現れた。


『ほほほほほ! これが(わらわ)の魔法杖! 遠く離れた場所から、魔力で打擲(ちょうちゃく)可能な優れモノぞ! それゆえ! いくらお前達でも、避けようがないのじゃ』


『ははは、絶好調のところを申し訳ないが、ひとつだけ忠告しておこう』


『なんじゃと?』


『改めて、心の準備をしておけ』


『心の準備じゃと?』


『ああ、今までお前に「挫折」という経験はなかったのだろう。完璧に打ちのめされ、失意の底へ沈むという経験がな』


『ああ、そうじゃ! 妾は絶対に失敗しない女じゃ!』


『ははははは! 笑止! ではやってみよ』


『よし! お望み通りに、お前らを一生、妾の家臣、否! 奴隷にしてやろうぞ! きえ~っっっ!!!』


 キルケーの裂ぱくの気合とともに、魔法杖が「ぶわっ!」と激しく動いた。

 

 その瞬間!


 びしっ! びしっ! びしっ!


 魔法杖から放たれた強烈な魔力が、ルウ達を打擲ちょうちゃくしていたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ルウ、モーラル、テオドラの身体を……

 魔法杖から放たれた強烈な魔力が包み込む。

 永きに長きに亘り、キルケーが数多の者を虜囚にした恐るべき魔法である。


 魔法薬キュケオーンを盛られ、この魔法杖で打擲ちょうちゃくされると、

 誰もが、キルケーに逆らえぬ奴隷へ……

 醜い合成魔獣の姿にされてしまう。


 美しいメイドにされた者達はまだマシかもしれない。


 牛頭人身のミノタウロス……

 獅子の胴と人間の顔を持つマンティコア……

 獅子の頭と山羊の胴体、毒蛇の尻尾を持つキメラ……

 雄鶏の頭と蛇を合わせた姿のコカトリス……


 おぞましい姿にされ、一生永遠にキルケーへ仕えさせられるのだ。


『はははははは!! どうだあ!! もうお終いだぞ、ルウ!! 否!! 始まるのだあ!! 家臣として妾に忠実に仕える生活がなあ!!』


 勝ち誇るキルケーであったが……違和感を覚える。


 ……何も変わらないのだ。


 ルウ、モーラル、テオドラの様子に変化はない。

 相変わらず人間の姿で穏やかに笑っていた。


 呆然とするキルケー。


『な、なにぃ!!?? き、き、効かぬだとぉぉ!!?? ば、ば、馬鹿なあ!!??』


 ルウが面白そうに笑う。


『ふ! どうした? お前は絶対に失敗しない女……じゃなかったのか?』


『くうううう!! ぬおおおおおおおおっ!!!』


 屈辱に唸るキルケーに対し、ルウはきっぱりと言い放つ。


『愚かなり、キルケー。俺達が家臣を解放した時、気付くべきであった。お前の小賢しい変化の魔法はもう通用しないという事をな!』


 ルウの言葉を聞いたモーラルとテオドラも、大きく頷いていたのである。

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