表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1322/1391

第1,322話 「生涯唯一の嫉妬⑬」

 ルウが、悪しき魔女キルケーへ見せる『余興』とは一体、何なのか……

 渋々OKしたキルケーであったが、ルウは更に言う。


『俺達にとっては単なる余興だが……キルケー、お前にとっては覚悟を決める特別なイベントだぞ』


『ほう、覚悟を決める? 特別なイベントだと? (わらわ)にとってか?』


 首を傾げ、訝しげな表情を浮かべるキルケー。

 ルウは頷き、柔らかく微笑む。


『ああ、そうだ、キルケー。再び問うぞ、お前は覚悟を決めるのか?』


 ルウの念押しを聞き、キルケーは高らかに笑う。


『ほほほほほ、いきなり覚悟を決めろと言われても皆目見当がつかぬ。構わぬからやってみせい!』


『おお、構わないのか? そうか? じゃあ、問題なくGOだな?』


 笑顔のルウはそう言うと、ピン!と指を鳴らす。


 瞬間!

 強い魔力が、ルウから放出されたのを誰もが感じた。

 しかし室内には何も変わった事は起きては、いない。


 キルケーは、少し余裕が出て来たようである。


『ほう、ルウよ、何か魔法を使ったのか? ……ん? 何も起こらんではないか?』


『はは、そうかな?』


 キルケーから問われ、ルウは曖昧に笑った。


『……む! な、何ぃ!』


『はは、ようやく気付いたか?』


 驚愕し、大きく目を見開いたキルケーの視線は、窓から屋外へ向いていた。

 そう、彼女の愛しい家臣達……否、しもべどもがどんどん消え去っているのだ。

 

 また不可思議な事にただ消えるだけではなかった。


 牛頭人身のミノタウロスが、獅子の胴と人間の顔を持つマンティコアが、

 獅子の頭と山羊の胴体、毒蛇の尻尾を持つキメラが……

 そして雄鶏の頭と蛇を合わせた姿のコカトリスら合成魔獣が……

 全て、おぞましい姿が人の姿に変化し……満ち足りた表情で、消えて行くのだ。


『な、何だ!? (わらわ)の変身魔法が!? いとも簡単にや、破られた!? そ、そして! み、皆! き、き、消えて行く……』


 驚嘆するキルケーに、ルウがきっぱりと言い放つ。


『ああ、そうだ。お前が(あざむ)き、おぞましき虜囚(りょしゅう)としたのは、皆、(いにしえ)に生きた者達だ。人の子の寿命はざっと100年、とっくに生命は尽きている』


『ル、ルウ!! き、貴様あ!!』


『ああ、お前の推測通りだ。俺が変身の魔法を解き、しかるべき姿に戻した。当然皆、寿命が尽きている。魔法が解けたと同時に昇天か、犯した罪があるのなら冥界へ堕ちる』


『ぬうおおお!』


『はは、唸ってる暇があるのか? ほいっと!』


 ルウは「にやっ」と笑い、再び、ピン!と指を鳴らした。


 すると!

 今度は、室内に居並ぶ麗しきメイド達が、次々と消えて行く。


 庭の合成獣同様、一旦人間の美しい淑女、少女に戻り、瞬時に消えて行くのである。


 しかし、遂に解放されると認識しているのであろう。

 消えてゆく『家臣』全員の表情は、いかにも満足という趣きで晴れやかであった。


 やがて……

 居並ぶ大勢のメイド達は、全員が消え失せた。


 重厚な城館の豪奢な大広間は、一気に「がらん」としてしまった。


 ルウ達以外は、『キルケーたったひとり』となったのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


『はは! キルケーよ、どうだったかな? 俺達の余興は?』


『ぬうううう! よくも! よくもぉ!』


 現世に通じる魔法扉を破壊され、迎撃に出したハルピュイアを全滅させられ……

 今度は忠実な家臣を全員、人間に戻され……昇天させられてしまった。


 ルウ達から一方的にやられっぱなしのキルケー。

 マグマのように吹き出る憎悪の感情から、その美しい表情は憤怒の鬼と化している。


 だが同時に、ルウの恐るべき魔法に対して臆し、畏怖の感情も隠せない。


 何せ、これだけ高難度の魔法を家臣全員へ無詠唱で、それも神速で発動させ、

全てを成功させたのだから。


 比喩の仕方が妥当ではないかもしれない。

 

 しかし!

 ルウ達の前でキルケーは、まさに蛇に睨まれた蛙であった。


 ここで、ルウが呼びかける。


『おい、キルケー』


『……………』


 しかし、キルケーは無言であった。

 ただただ、畏怖するあまり、顔色が青ざめ、美しい唇がわなわなと震えている。


『どうした? 返事をしろよ』


『むうう……』


『まあ、良い。一方的に言うぞ。お前には全ての事情を話して貰う。カリブディス、スキュラに対し、行った事を全てな……そして裏で、こそこそ糸を引いた南の神々の事も全て吐いて貰う』


『……………』


『もしも言わないのなら、俺が魔法を使う。お前の魂へ直接聞くだけだ』


『……………』


『カリブディス、スキュラは無実だ、元々罪はない。しかし彼女達は汚い謀略、理不尽な逆恨みにより、醜き人喰いの怪物とされてしまった』


『……………』


『しかし、ふたりとも理由はどうあれ、人間を喰らった罪を素直に認め、潔く冥界へ堕ちて行ったのだ』


『……………』


『お前も同じだ、キルケー。いかに南の神々に命じられただけの走狗(そうく)といえど、犯した罪は絶対に許されない。しっかりと償って貰うぞ』


『……………』


 ここで、ルウから「信じられない提案」が出る。


『但し、キルケー。お前がせっかく作ってくれたこの料理は、喜んで馳走になろう』


 キルケーは魔法薬キュケオーンの入った料理を客に食わせ、おぞましい姿に変えて来た。

 ルウは……何と! それを知った上で料理を食するというのだ。


『ほ、ほう! そ、そうか! な、ならば妾自ら、給仕をしてやろうぞ!』


 最後の……大逆転のチャンス!!

 そう強く思ったに違いない。


 大声で叫んだキルケーの両目は真っ赤に血走り、ギラギラと輝いていたのである。

いつもご愛読頂きありがとうございます。


※当作品は皆様のご愛読と応援をモチベーションとして執筆しております。

宜しければ、下方にあるブックマーク及び、

☆☆☆☆☆による応援をお願い致します。


東導号の各作品を宜しくお願い致します。


⛤『魔法女子学園の助っ人教師』

◎小説書籍版第8巻が2/19に発売されました!《ご注意!第8巻のみ電子書籍専売です》

(ホビージャパン様HJノベルス)

既刊第1巻~7巻大好評発売中!

第1巻から8巻の一気読みはいかがでしょうか。


◎コミカライズ版コミックス

(スクウェア・エニックス様Gファンタジーコミックス)

☆最新刊第5巻が4/27に発売されました! 

コミカライズ版の一応の完結巻となります。

何卒宜しくお願い致します。


既刊第1巻~4巻大好評発売中!

コミックスの第1巻、第3巻、第4巻は重版しました!

皆様のおかげです。ありがとうございます。

今後とも宜しくお願い致します。


また「Gファンタジー」公式HP内には特設サイトもあります。

コミカライズ版第1話の試し読みも出来ます。


WEB版、小説書籍版と共に、存分に『魔法女子』の世界をお楽しみくださいませ。


マンガアプリ「マンガUP!」様でもコミカライズ版が好評連載中です。

毎週月曜日更新予定です。

お持ちのスマホでお気軽に読めますのでいかがでしょう。


最後に、連載中である

⛤『外れスキルの屑と言われ追放された最底辺の俺が大逆襲のリスタート! 最強賢者への道を歩み出す!「頼む、戻ってくれ」と言われても、もう遅い!』

⛤『帰る故郷はスローライフな異世界!レベル99のふるさと勇者』《連載再開!》

⛤『絶縁した幼馴染! 追放された導き継ぐ者ディーノの不思議な冒険譚』

⛤『頑張ったら報われなきゃ!好条件提示!超ダークサイドな地獄パワハラ商会から、やりがいのある王国職員へスカウトされた、いずれ最強となる賢者のお話』


も何卒宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ