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第1,321話 「生涯唯一の嫉妬⑫」

 アイアイエー島、悪しき魔女キルケーの城館と思しき白亜の建物……

 

 広大な庭へ降り立ち、キルケーの家臣たる合成獣達の『威嚇』を受けたルウ達。 

 

 その時、白亜の建物の巨大な扉が重い音を立てて開かれた。

 ……開かれた扉の向こうには……

 豪奢なドレスに身を包んだ美しく妖艶な貴婦人が、はべらせた、たおやかな侍女達と共に立っていた。


 少々距離が離れている事もあり……

 貴婦人に向かい、ルウは念話で言い放つ。

 余計な言い回しはせず、ズバリ、ストレートに名を尋ねる。


『お前が「鷹」と称される魔女キルケーか?』


『いかにも! わらわが美しき鷹と呼ばれる魔女キルケーだ。大魔王ルシフェル唯一の契約者ルウ、ルウ・ブランデルよ! もしくは選ばれし第三の使徒と呼んだ方が満足かな?』


『成る程、俺の全てを知っている、という口ぶりだな』


『その通りだ、ルウよ! 妾は、お前の事を何から何まで全て知っておるぞ』


『ははは、そうか!』


『笑うな! 妾を誰だと思うておる! 偉大なる太陽神ヘーリオスの御子であるぞ! 普通なら悪魔の契約者ごときが気安く口をきけないところじゃ』


『ははは、聞く耳持たぬ。南の神々が滅びた今となっては、そのような血筋、肩書は無用の長物、戯言は不要だ』


『ふん! 戯言を抜かすのはお前だぞ、ルウ』


『そうかい? キルケー、俺達がこの島へ来た要件は分かっているはずだ』


『おう、分かっておるぞ。呪われしニンフふたり、カリブディス、そしてスキュラの件であろう』


『ならば、話は早い。さっさと吐いて貰おう。どうする? 素直に答えるか?』


『ほほほ、嫌だ、答えぬ……と言ったらどうするのじゃ?』


『白状するのに好きな方法を選ばせてやる。尋問、裁判、もしくは力づくでも構わないぞ』


『ほほほほほ! 全て野暮な方法じゃ。話を聞きたいと申すのなら、甘い言葉とめくるめく舞台で、妾を夢見心地にし、口説いてみるがよい。……どうじゃ?』


『甘い言葉とめくるめく舞台ねえ……』


『ふふふ、焦らずともまずはともに食事でもして、心と心、身体と身体の距離を縮めようではないか。我が館へ来るが良い。馳走(ちそう)してやろう』


 このような会話で亜空間に呼び込んだ旅人を誘っていたのだろうか……

 敢えて罠にはまるのも一興……


『では、行こう。但し我が妻と妹も一緒だ』


 ルウの言葉を聞き、妻と呼ばれたモーラルは顔をほころばせ、妹と呼ばれたテオドラは照れた。

 

 そんなふたりを見て、キルケーは高らかに笑う。


『ははははは、新たな女を口説くのに妻と妹が一緒だと? 無粋な男め』


『ダメか?』


『まあ、よいわ。……そこの女子ふたりと、ともに来るが良い』


『了解、馳走になろう』


 ルウはOKし、背後のモーラルとテオドラへ手を挙げ合図した。

 3人は、キルケーの城館へ歩き出したのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ルウ達は、長大なテーブル、豪華な調度品で飾られた大広間へ通された。

 既に宴の準備が完了していた。


 主の席にキルケ、主客の席にルウ、その左右にモーラルとテオドラが座っていた。

 これはこの世界の「正式な席次ではない」ようだが、誰も何も言わず、とがめない。


 あまりにも見え透いたいつもの手法……

 アイアイエー島へ誘い込んだ『ターゲット』を饗応し……

 飲食物に秘密の魔法薬キュケオーンを混入するのだ。

 そして『ターゲット』が飲食終了に、魔法杖で「びしっ!」と打ちすえる。


 すると『ターゲット』は動物に変身させられてしまい、容姿だけでなく。

 元の性格を変えられ、キルケーの指示に絶対服従する

 という、お約束の『罠』なのだろうか……


 ルウも、モーラルも、テオドラは無表情……

 そして、キルケーも数多の侍女達は皆、柔らかい笑顔を張り付けている。


 頃合いと見たのか、キルケーが声を張り上げる。

 無論、各自の心へ響く念話だ。


『ふむ、席次の無作法は許す。さあ、宴を始めるぞ。ルウ。そして妻と妹よ、遠慮なく飲み、食べるが良い。ルウに限るが、(わらわ)自らの酌を望むのなら、快く応じ、叶えてやろう』


 しかし、ルウはさっと挙手。

 キルケーが告げた『食事の開始』を制止する。


『ちょっと、待った。宴を始める前に、ちょっとした余興を披露しよう』


『何ぃ? 余興だと?』


『ああ、宴に余興はつきものだ。個人的には面白いと思うぞ。キルケー、お前にウケるかどうかは、分からん。だが、少なくとも俺の妻と妹にはウケるはずだ』


『……その通り』 

『御意!』


 ルウの言葉を聞き、モーラルとテオドラは短く応えた。


『むむむ、何だ、余興とは?』


自分にウケるかどうか分からない。

しかしここで余興実施を止めるのは、粋ではない。

みっともない。


キルケーのようにプライドが高い場合は耐えられない。


『分かった! 余興とやらをやってみせよ!』


表面上は、顔つきは全く変わらない。

しかしわずかな不安を感じ、キルケーは嫌々OKを出したのである。

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