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第1,318話 「生涯唯一の嫉妬⑨」

 どこまで弱き者を虐げれば気が済むのだろう……


 (いかづち)を武器とした主神、大神とその妻、三叉槍(さんさそう)をふりかざす海神王とその妻……

 人智を超えた存在として……

 導き、授ける者達とは到底思えぬ、南の神とその一族の奔放さ、傲慢さ……

 彼ら彼女達のに悪行より、多くの者が理不尽に貶められ、おぞましい姿に変えられ、終いには殺されてしまった。


 ルウはこれまで、夫にはっきりと物申せないくせに、異常に嫉妬深い大神の妻、超が付く我がままでプライドが高すぎる傲慢な戦女神など……この地上に悪しき残滓となっても、災いをもたらす存在を徹底的に滅して来た。


 今回、救うべき犠牲者は、カリブディス、スキュラという怪物に変えられてしまった哀れなふたりのニンフである。


 ルウ達は南の神の滅亡とともに、魂の残滓と化してしまったふたりを、

仮初(かりそめ)の天へ送った。


 ふたりは言われもなき理不尽な経緯でおぞましい怪物にされ、数多の人間を喰い殺した。

 永遠に消えぬ、その重き罪は堕とされた冥界で償う事となる。


 しかし、ふたりを怪物にし、知らぬ顔をしている黒幕どもに、怒りの鉄槌を下さねばならない。

 神といえど、その権勢を盾に、弱き者を虐げる事は許されないと身をもって分からせねばならないのだ。


 ルウ、モーラル、テオドラは今、カリブディス、スキュラが居た海域から移動。

 別の海域上空に浮かんでいた。


 ここは、今さっき天へ送ったふたりのニンフから教えて貰った……

 毒薬と変身の魔法に長けた悪しき魔女、キルケ―が隠れ住むという、亜空間に在る島アイアイエーへの扉がある海域である。


『うむ、ここか』


『はい! 旦那様!』

『ルウ様、間違いありません』


『……確かに空間のほころびを感じる。ほんのわずかだが、な……アイアイエー島への扉があるのは間違いないようだ』


 古文書によれば……

 気が付かぬうち、いつの間にか、亜空間のアイアイエー島へ迷い込んだ者達は……

島の主キルケーから、表向きには大いに歓待されるという。

 しかしキルケーは、客へ出す飲み物へ密かに秘薬を混入。

 飲み終わった客を魔法の杖で打つと、客は動物に変化し、キルケーの奴隷になり果てるという。

 またキルケーは冥界への秘する出入り口も知っていたとも言われているのだ。


『多分、大神の妻がエレナを閉じ込めた時のように、扉を開ける合言葉があるのだろう』


『はい!』

『ですね!』


『だが……丁寧に開扉(かいひ)する必要はない。宣戦布告だ……思い切りぶち壊してやるさ。キルケーの身勝手で傲慢な心とともにな』


 ルウは海上に浮かびながら、呼吸法を使い、体内魔力を上げて行く。


『ビナー、ゲブラー、悪しき魔女が住まう異界の島を閉ざすべく、締め切られた秘密の扉よ! 我が前に現れよ!』


 ぱきぃぃぃんんん!


 ルウが言霊を詠唱すると……

 海上の何もない空間がいきなり割れた。

 そして、朧げで不可思議な実態のない、人間が一度に10人以上通れるような扉が現れた。


 巨大で重厚な仕様の扉は、邪悪でまがまがしい気配を発している。

 これが……魔女キルケーの造ったアイアイエー島へ通じる魔法扉であろう。


貫通(ペネトラーティオ)!』


 ルウが決めの言霊を放った瞬間!


 どっごおおおおおおおおおおおんんんん!!!


 大音響とともに扉は破られ、跡形もなくなった。

 そして扉があった後にはぽっかりと、亜空間へ通じる大穴が開いていたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 扉が消滅し、ぽっかり開いた異界への穴……

 モーラルが苦笑する。


『一見、もったいぶった仕様の扉でしたが……たいした事はありません。簡単に破壊出来ましたね』


 テオドラもきっぱりと言い放つ。


『はい、私テオドラにも分かります。上級悪魔に比べたら、発する魔力のケタが違います。それに趣味も悪いです』


『はは、油断は禁物だぞ』


 深く幅広い知識を有し、毒薬と変身の魔女とうたわれ……

 『鷹』という名を冠された悪しき魔女キルケー。


 しかし、ルウ、モーラル、テオドラは全く臆してはいない。

 更に、けして慌てる事無く、冷静沈着でもある。


『万が一、亜空間からの出口が閉ざされると良くない。俺達用の扉を据え付けておこう』


『うふふ、賛成です』

『アイアイエーの後が、まだありますから』


 キルケーは今回の案件における『ラスボス』ではない。

 そう、ルウ達は見ていた。

 一説によれば、太陽神の流れをくむとはいえ、キルケーはニンフだともいう。


 南の神の走狗となり、同族の人生をめちゃくちゃにしたのなら……

 ルウは尚更許せない。


 真犯人同様、容赦なく鉄槌をくだすつもりだ。


 ふっ!


 ルウが少し気合を入れると……

 消失したキルケーの扉より、重厚でありながら、洗練された巨大な扉が出現した。

 趣きのある渋い茶色の扉だ。


『旦那様、キルケーの扉より断然素晴らしいですわ! 東方で産するチーク材をイメージされたのですね!』

『ルウ様、素材とともに、デザインも比べ物になりませんね!』


『ありがとう! さあ、行こうか!』


 ルウはそう言い、指をピンと鳴らした。

 

 すると!

 ルウが据え付けた、チーク材を模した亜空間の魔法扉は音もなく、ゆっくりと開いたのである。

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