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第1,316話 「生涯唯一の嫉妬⑦」

 ルウ達は正体を明かした。

 しかし、スキュラの様子は変わらない。

 淡々と告げて来る。


『お前達が何者であろうと、私には全く関係がない事だ』


 突き放すような態度と物言いをするスキュラに対し、ルウは首を横へ振った。

 悪戯っぽく笑う。


『いや、違うな。それが実は関係がないようであるんだよ』


『何だと? 私とお前達に、どんな関係があるというのだ?』


 首を傾げて、訝し気な表情をし、にらむスキュラ。

 対して、ルウはズバリ目的を告げる。


『うん、直接の関係はない。だが俺達はな、いろいろな者からお前の救済を頼まれた。それゆえこの海域へ来て、今お前と話しているんだ』


『いろいろな者達だと? おぞましい呪いを受けた私は、親しかった友や仲間から見捨てられ、放置された境遇だ。救済どころか、気に掛ける者の心当たりさえない』


 スキュラは達観したように言い放った。


『何言ってる。俺達へ頼んで来たのは、全員、お前の同胞であるニンフだぞ』


『は? ニンフだと!? 妖精のニンフが、何故人間のお前に頼み事をするのだ?』


『ははは、やっぱり最初から話さないといけないのか。……分かった、聞いてくれ』


『ああ、聞こう!』


 話が、堂々巡りとなりつつあった。


 しかしスキュラの態度が変わり始めている。

 今まで全てを諦め、無関心だった。

 ここまで話に乗って来るのは、ルウの話に興味を持ったあかしだ。


『俺は偶然、理不尽な罪を課せられたエーコーのエレナというニンフを助けた』


『エーコーのエレナ? 大神の妻を足止めした罪で罰せられたあのニンフか!』


 スキュラはエレナを……知っていた。

 さすがに『真相』は伝わっていないらしいが……


『ああ、そうだ。エレナはあの愚かな大神夫婦の哀れな犠牲者だ。彼女は大神の妻により姿を消され、声だけの存在と化し、亜空間に閉じ込められていた。俺は亜空間を打ち破り、彼女を救い出したのさ』


『なん……だと?』


『次に……同じく大神の妻により神殿の番人に……おぞましい姿に変えられ、魔獣スフィンクスと化していたナーイアスのリゼッタも救った』


『ナーイアスのリゼッタが!? あのスフィンクスだったのか!!』


『そうだ! 両方の案件とも、裏で大神の妻が糸を引いていた。奴は創世神に滅ぼされ、魂の残滓となって現世に残っていた


『むう……』


『襲って来たが、俺が叩き潰した』


『叩き潰した!? 相手はいくら残滓とはいえ、神なのだぞ! どうしてそんな事が出来るのだ!』


『ああ、避けられない戦いだった。呪いをかけられ、囚われたニンフの命がかかっているからな』


『ニンフの命だと? ルウ、お前はエレナやリゼッタとは初対面だろう? 見ず知らずの相手の為に命を懸けて神に挑むのか!?』


 ここで、モーラルが会話へ割り込んで来た。


『スキュラ、旦那様はそういう方なのです。人間に忌み嫌われる夢魔の私も、死にかけたところを助けて頂きました。師のアールヴに猛反対されたというのに』


 テオドラも、はっきりと言い放つ。


『私も助けて頂きました。魂を分割し、正気を失い、ルウ様を殺そうとしたのに……悪魔により、爆発物まで埋め込まれたのに……』


 切々と訴えるモーラルとテオドラ。

 ふたりの話に嘘はない。


『……分かった。ルウ、そしてモーラルにテオドラだったか……私を助けに来たというお前達の言葉を、そして思いを信じよう』


 スキュラは、感じ入ったように大きく頷いたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ようやくスキュラと心が通じ合い、ルウは本題へ入る。

 まずは告げておかねばなるまい。


『先ほど、お前を救済すると言ったが……お前には冥界へ堕ちて貰う』


 ルウからそう言われても、スキュラは「話が違う」などと激高しなかった。

 己が犯した罪は認識しているようだ。


『冥界へ……当然だ。私は罪を犯したからな』


『ああ、そうだ。理不尽な経緯(いきさつ)からお前は怪物にされ、捕食者たる本能から数多の人間を喰らった。俺は人間の守護者たる(ことわり)にのっとり、お前を冥界へ送らねばならない』


『…………』


『ちなみにお前の友カリブディスも、先ほど同じ理由により冥界へ堕とした』


『ふむ、その言い方……友カリブディスは納得して堕ちたのだな』


『そうだ。いつの日にか転生する事を望み、堕ちて行った。スキュラ、お前も同じ扱いにするつもりだ』


『ふむ……』


『だが、安心しろ』


『…………』


『ニンフの中でも一、二を争うくらいに美しかったお前を穢し、毒薬で怪物に変えた魔女キルケー……』


『…………』


『そしてキルケ―の陰で、こそこそと卑怯にも悪事を動いた海神王とその妻を、比べ物にならぬ永遠の苦しみの中へ堕としてやる! それが俺の責務であり、奴らが課された贖罪なのだ』


『…………』


『お前の友カリブディスから伝言がある』


『な? 伝言だと?』


『同じ海に暮らし、心の絆を結んだお前とは、転生して、いずれどこかの時代、どこかの地で必ず会おうと』


『う、うわああああああああっっっっ!!!』


 ルウが、カリブディスの『遺言』を伝えると、スキュラは初めて感情を露わにし、

 号泣していたのである。

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