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第1,315話 「生涯唯一の嫉妬⑥」

 カリブディスは、ルウの魔法により地縛を解かれ、昇天していった。

 彼女の魂は、仮初(かりそめ)の平穏を味わうが、すぐに冥界へ堕とされる。


 大神の御業により、理不尽に怪物とされた不可抗力の結果ではあるが……

 数多の人間を喰い殺した重罪を償う為、地の底で裁きを受けるのだ。


 しかし、いつの日にか転生し、新たな生き方を与えられるはず。

 但し、元のニンフに生まれ変われる保証はない。

 行く末を決める事は、ルウには不可能である。

 カリブディスの幸せを祈るしかない。


 片や、同じく……

 悪しき魔女キルケ―が調合した魔法の毒薬により怪物とされ、挙句の果てに醜い岩の塊と化したスキュラも同じ運命をたどるしかないといえよう。

 いくら理不尽な経緯の末とはいえ、数多の人間を喰い殺した重罪を償わねばならないのだ。


 しかし……

 スキュラを、一方的に無理やり冥界へ堕とす事は避けたい。

 これもカリブディスと同じく、ある程度納得した上で、堕ちて貰う。

 その為には全力を尽くす。


 ルウ達は、渦がなくなった海域から軽々と飛翔し、移動。

 スキュラの成れの果てと化した『岩礁』の真上にピタリと静止する。


『これからスキュラの魂の残滓を呼び出すが……モーラル、テオドラ、何か意見はあるか? 遠慮なく述べてくれ』


 そうルウが言えば、モーラルが頷く。


『はい、旦那様……スキュラの事件もカリブディス同様、ひどく理不尽なものです。スキュラへ求愛し、ふられた、とある海神に同情した、悪しき魔女キルケーの仕業とされています。ですが、もっと深い裏の事情がありますね』


 モーラルが言えば、すぐにテオドラも追随する。


『私もモーラル奥様と同じ意見です。海神王だけではなく、妻の女神アムピトリテも。もしくは海神王の兄たる大神とその妻の女神も裏で糸を引いたのではないかと……』


 ふたりの言葉を聞き、ルウも同意する。


『ああ、そもそも、スキュラへ求愛した、とある海神という話は嘘だ。全くのでっちあげだろう』


 ルウがそう言うと、モーラルもテオドラも頷いた。


 更にルウは、話を続ける。


『スキュラへ求愛したのは海神王に間違いない。そして海神王の奔放さにずっと耐えて来た妻アムピトリテも、夫でなく、求愛をはねのけたスキュラへ怒りの矛先を向けた。魔女キルケーは実行犯に過ぎない。そして裏で全ての糸を引く者が確実に存在する……そう考えると、徐々に見えて来る。事件の全貌がな』


『ルウ様、まずはスキュラの地縛を解き、岩礁を消した上で、仮初(かりそめ)の昇天をさせましょう。その後で、悪しき者達へ鉄槌をくだすのです』


『はい、私テオドラも同意見です』


『よし! スキュラの残滓を呼び出そう』


 ルウはそう言うと、「ピン!」と指を大きく鳴らした。


 すると、先ほどの渦同様……

 岩礁から、巨大な魔力が立ち上ったのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ごつごつした醜い岩礁から立ち上った魔力が、だんだんとひとつの形となって行く。

 しかし……

 カリブディスと同じく、『形』に実体はない。

 やはり、幻影の如き、存在である。


 そして、数十mもの体躯を持つ巨大で不気味な容姿を持つ怪物が現れた。

 上半身は見目麗しき女性で、下半身は鱗だらけの魚。

 腹部からは3列に並んだ歯を持つ6つの犬の前半身が生えた、奇怪な姿である。


 ニンフの中でも一二を争う美しさと謳われた、ナーイアスの成れの果て、スキュラの醜き姿であった。


『誰だ!? 私を呼び覚ますのは!!』


 これまたカリブディスと同じである。

 目を凝らしてルウ達を見る、スキュラの鋭い眼差しには激しい怒りと憎悪がこもっていた。


 そしてルウ達を認めると、容赦なき殺意を込め、問いかけて来る。


『お前達は、ただの人間ではないな? この私に何の用だ?』


 ここはまずルウ達から名乗るべきだろう。


『俺はルウ、ルウ・ブランデル。……魔法使いだ』


『私はモーラル、ルウ様に命は勿論、心もささげた妻だ』

『私はテオドラ、モーラル奥様と同じく、ルウ様に身も命もささげた忠実なる従士だ』


 カリブディス同様、スキュラもルウ達の正体を見抜く。


『不可思議な人間、そして人間の心を持つ夢魔モーラル、そしてこれまた人間の心を持つ自動人形(オートマタ)か……どういう組み合わせだ?』


 そんなスキュラの問いに対し、ルウは即座に答える。


『俺は正真正銘の人間、このシルバープラチナ髪の子モーラルは、お前の言う通り夢魔だが、間違いなく俺の妻、そして金髪碧眼の子テオドラもお前の言う通り、人間の心を持つ自動人形(オートマタ)、忠実な従士にして俺の妹に等しい女子だ』


 きっぱり言い放ったルウの言葉を聞き……

 モーラルは満面の笑みを浮かべて頷き、テオドラは感極まって拳をぎゅっと握っていたのである。

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