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第1,311話 「生涯唯一の嫉妬②」

 数日後の深夜、ルウ、モーラル、テオドラは……

 南方のとある海域上空に浮かんでいた。


 海面からの高さは約100m。

 眼下の海には、ごつごつとした岩礁、少し離れた場所では、激しくとはいえないが結構な大きさの渦が起こっている。


 3人は、100m先など楽勝で捉えるとんでもない視力の持ち主だ。

 加えて、漆黒の闇の中でも昼間のように見通せる。


 スキュラの成れの果てである『岩礁』そして謎めいた『渦』を見ながら3人は言葉を交わす。

 当然、高位の魔法使いが使いこなす魂と魂、心で交わす会話、念話である。


 まずルウが湧き上がる渦を見て、言葉を発する。


『場所は、ここか……だがあの渦は違う。スキュラではない別の存在が、かつて起こしていた渦の名残りだな』


 対して、モーラルが。


『はい、ルウ様のおっしゃる通りです。あの渦を起こしていたのはスキュラではありません』


『ああ、そうだな』


『はい、海神王と大地の女神との間に生まれた神の娘カリュブディスが、神々が所有する禁断の牛を食べた罪から、怒った大神により怪物に変えられました。カリュブディスは船を襲い、犠牲者を捕食する際、海水ごとあらゆるものを吸い込み吐き出していました。あの渦はその名残です』


『ふむ。同じ海域にスキュラとカリュブディスが居た為に、数多の船乗り達はこの海域を世界でも有数の難所として怖れた、というわけか』


『はい、残された数多の古文書、そしてエレナとリゼッタの話を総合すると全てが合致致します』


『成る程。カリュブディスはニンフ。ナーイアスであり、リゼッタと同族だ』


『はい、その通りです。カリュブディスはナーイアスですね』


『だが、リゼッタはカリュブディスの話をしていなかったな』


『はい、していませんでした。多分カリュブディスが罰せられた理由が理由だと。自業自得ゆえスキュラのように助けなくともという考えからだと思います』


『そうか……』


『ちなみに眼下の海域が、その難所ゆえ、スキュラとカリュブディスの間という、語源となっております。ひとつの災いを逃れても別の災いにあう例えであり、前門の虎後門の狼と同義ですね』


 ルウとモーラルの会話を聞き、続いてテオドラも言う。

 進言をしたいらしい。


『ルウ様、モーラル奥様。スキュラの成れの果てたる岩礁、カリュブディスの渦、それぞれがふたりの残した怨念、魂の残滓により、今でもいたましい海難事故が引き起こされております。経緯を再確認し、原因を究明する前に、まずはふたりの魂を鎮める事が肝要かと、私は思います』


 成長著しいテオドラの進言を聞き、ルウとモーラルは顔を見合わせ、微笑む。


 魂を分離され、最初は非情で感情を見せない戦闘機械(バトルマシン)に過ぎなかったテオドラ。

 ルウが召喚したアンノウンが魂の片割れだった偶然もあり……

 合体し、完全復活してからは、本来の心優しき少女の片りんも見せるようになっていた。

 そして、姉ソフィアと同じ冷静で思慮深い面も見せるようになっている。


『よし、テオドラの意見を採用しよう。今回はエレナとリゼッタが依頼して来たスキュラは勿論、カリュブディスの魂もケアするとしよう』

『はい、ではまず、スキュラとカリュブディスの荒ぶる魂を鎮めましょう』


 ルウとモーラルが、テオドラの進言を受け入れると、テオドラも嬉しそうに微笑む。


『ありがとうございます。力及ばずながら、このテオドラ、今回も粉骨砕身させて頂きます』


『ああ、頼むぞ』

『宜しくね』


 3人は頷き合うと、闇の中を海面へ向かい、ゆっくり降下していった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ルウ、モーラル、テオドラは闇の中、海面から20m上空、湧き出る渦の真上に静止している。

 まずは、カリュブディスの魂を鎮めるのだ。


 渦を間近に見て、モーラルが言う。


『旦那様、創成神様が、ふらちなふるまいにふけった南の神々を滅ぼした際、怪物と化した海王神の娘カリュブディスも、ともに消滅したと言われております』


 モーラルの言葉を受け、テオドラも続く。


『はい、ですので、当然渦も消え去るはずなのですが、禁を犯したはいえ、大神の理不尽な仕打ちに対し、怨念として残ったカリュブディスの魂の残滓がこの渦を生み出しているのです』


 ふたりの言葉を受け、ルウが言う。


『……それで、カリュブディスの魂の大部分……本体は冥界の第三圏 貪食者の地獄へ堕ち、魔獣ケルベロスに引き裂かれ、無限の時間の中で、泥濘(ぬかるみ)にのたうち回っているはずだ』


 対して、モーラルは。


『ですね。しかし地上、現世に残るカリュブディスの魂の残滓を昇天させなければ、不完全な魂はいつまでたっても冥界に留まり続ける。それでは永遠に復活、転生が出来ない。いかがなものかと私は思います』


 モーラルの言葉を受け、テオドラは熱く語る。


『ええ、モーラル奥様のおっしゃる通りです。カリュブディスは、確かに禁断の牛を食した重罪を犯した。だが怪物に変えるのはやりすぎであり、もっと贖罪の方法はあったはずです』


 更にテオドラは、渦を見つめ言う。


『それにカリュブディスが数多の人間を食い殺したのは、大神により怪物にされた不可抗力の結果です。現在冥界で受けている裁きを受けきれば、いずれは許されるべきだと思います。いかがでしょう?』


 モーラルとテオドラ、ふたりの意見にルウも賛成である。


『ふたりの考えは良く分かった! 俺もほぼ同意だ。じゃあ実際にカリュブディス本人へ聞こう』


 ルウはそう言うと、パチンと指を鳴らした。

 すると……

 渦の中から、巨大な魔力が立ち上ったのである。

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