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第1,308話 「未来への改革⑤」

「新たな事業って、姉様は一体何をするつもりなの?」


「ふふふ、ケリーよ、そう焦るな。伝える事はいろいろあるのだ。順を追って話そう」


「は、はい!」


 姉リューディアの冷ややかな笑みは、はっきりいって不気味だ。

 気合を入れ直し聞く準備をしたケルトゥリは、「びしっ!」と居住まいをただす。


 そんなケルトゥリを見て、リューディアは満足そうに頷く。


「うむ! まずはこの都フェフの立ち位置について話そう」


「た、立ち位置?」


「うむ! この都フェフはあくまでも我々アールヴの為の街だ」


「我々アールヴの為の街……」


「ああ、我が一族の排他的な考え方や意識はそう簡単には変わらん。わずかな例外は設けるがフェフには、基本的にアールヴ以外を住まわせる事はない。他種族は原則、立ち入り禁止だ」


「……………」


「しかし、これまでのように世界に対し、このイエーラを閉ざされ鎖国された国にしてはならぬ。世界に向け、開かれた国にする努力をせねばならない」


「……………」


「そこでだ! まだ極秘にしているが、このフェフに隣接する形でもうひとつ別の街を造る。対外的なやりとりはその街で行う。イエーラ全土の中でその街のみ他種族も受け入れ、居住を許可し、アールヴと混在する街とする」


「……………」


「他種族の力を借りても、我がイエーラにおいて、いくつかの産業を興こす。世界と交易し、収益を得る手立てを急ぎ作らねばならぬ。今回行ったエリクサー売却は、基本『禁じ手』であるからな」


「……………」


「この街は都フェフを守る城も兼ねる事となる。つまり防衛線だ」


「……………」


「そして、これから造る新たな街は、いずれミンミに任せようと思う。執政官としてな」


「ミンミに!? 執政官を??」


 リューディアの話に対し、無言を貫いていたケルトゥリは、ここで言葉を発した。

 頷いたリューディアは更に話を続ける。


「実はな、まずはケリー、お前に新たな街の執政官を任せようと考えた」


「え!? わ、私?」


「うむ! だが、すぐに思い直した」


「思い直した……」


「ああ! ケリー、お前は人間社会に出て冒険者となったが、すぐに学生となり、その(のち)、教育者となった。それゆえジャストな人選ではないと考え直したのだ」


「……………」


「一方、ミンミは長く冒険者ギルドの幹部を務め、荒事と他種族への対応に優れている。奴はまさに適任であろう」


 ケルトゥリの脳裏にミンミの端麗な顔立ちが思い浮かぶ。

 だが、彼女はルウの妻で王都在住。

 どう説得するのか少し気にはなる。


 でも、結局自分には関係ない事だ。


「……それは確かに、ミンミなら適任ね。ならば、何故私を呼んだの?」


 至極当然な疑問である。

 新たな都フェフと街の造営、ミンミの抜擢ならば、後で魔法鳩便の手紙で報せてくれて構わない。

 

 ……やはり自分には関係のない話……

 だとケルトゥリは思う。


 ケルトゥリの問いを聞き、リューディアは苦笑する。


「ははは、焦るな、ケリー。話はまだ終わっていないというか、始まったばかりだぞ」


「……では、続けてください、姉様」


 少し不機嫌な顔付きとなり、ケルトゥリは言った。

 対してリューデイアは、ズバリ言い放つ。


「そして、このフェフの執政官だが……ケリー、ゆくゆくはお前にやって貰おうと思う」


「え!? えええっ!? わ、私をこのフェフの執政官に!?」


「ああ、ケリー、お前には私の片腕となって貰うぞ」


 さすがに驚いた。

 姉リューディアは、都フェフの政務を自分に任せると告げて来たのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「そ、それは……」


 驚き絶句するケルトゥリ。

 だが、リューデイアは淡々と話を続ける。


「まあ、安心しろ。いきなり執政官を丸投げする事はない。しばらくは私の下で、ミンミとともに修業して貰う。政務遂行においてな」


「私が……執政官」


「ははは、それだけではないぞ、ケリー」


「え? それだけではない?」


「ああ、ケリー、お前をこきつかう!」


「こ、こき使う?」


「ああ、お前を使い倒す。フェフに創立する魔法学校の(おさ)も務めて貰うからな」


「えええ!? ま、魔法学校の長も!? 執政官と!? そ、それって!!」


「ははははは、お前は人間の魔法学校において幹部を務め、ひな鳥達を育成しているではないか」


「そ、それはそうだけど……」


「これまでのアールヴの魔法修行は師について、マンツーマンに近い形で指導が行われて来た。その方法でも、優れた魔法使いは育つのだが、いかにも非効率だと私は思う」


「非効率……」


「そうだ! 我がイエーラには優れた魔法使いだけでなく、魔法剣士、治癒士など、優れた人材がいくらでも必要なのだ」


「……………」


「ケリー、お前は人間の魔法学校で幹部として経験を積んだ。学ぶ内容に差はあれど、お前が習得したその教育システムを活かさない手はない」


「……………」


「お前が務める人間の魔法学校でいうトップ、理事長のポストに就けぃ!」


「私が……フェフの魔法学校の理事長に……」


「そうだ、ケリー! これまでお前が人間社会で積んだ経験を活かし、我々姉妹以上の逸材を育てあげよ! このフェフの、否! イエーラの未来の為に!」


「イエーラの未来の為……」


「そうだ、ケリー! お前にはいくつも仕事を任せ、フル回転で働いて貰う」


「……………」


「ケリー、私は保守的な長老どもを追放した。その上で未来への改革を行う」


「未来への改革……」


「そうだ! この世界においてイエーラが、アールヴ族が! 他種族に抜きんでる存在になる為に、変わっていかねばならん! その為には従来のやり方だけでなく、必要とあらば人間社会のやり方も取り入れるのだ!!」


 祖国の改革に燃える姉リューディアは……

 呆然とする妹ケルトゥリにまっすぐに視線を向け、はっきりと言い放っていたのである。

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