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第1,307話 「未来への改革④」

 ケルトゥリは、この都フェフに来てから感じていた。

 気になっていた。

 姉リューディアへは、いくつも聞きたい事がある。


「姉様! ご質問致します」


「うむ! 許す。申してみよ!」


「はい! フェフ……この壮大な都を、一体どうやって作ったの? どれぐらいの費用がかかったの? さすがに魔法だけでは限界があるでしょ。莫大な建設費用の原資は? どうやって捻出したの? 姉様の言う通り、イエーラの財政は、そこまで豊かではないはずだけど……」


 様々なケルトゥリの追及に対し、リューディアは苦笑する。


「ふっ、次から次へと……まるで質問の嵐だな」


 軽く息を吐いたリューディアは話を続ける。


「詳細は省くが……お前の質問に答えよう」


「え、ええ……お願いします」


「ケリー、お前の言う通りだ。このフェフを造れる金はイエーラにはない。……聖地から生み出される霊薬を売ったのだ」


「え!? 聖地から生み出される霊薬って……まさか!?」


 あっさり言い放ったリューデイアの言葉に、ケルトゥリは驚いた。

 聖地……とは、神代からアールヴ族が受け継ぐ尊い地。

 そこから生み出される『霊薬』……このイエーラで知らぬ者などない。


 そんなケルトゥリの気持ちを見抜くかのように、リューデイアは更に言う。


「うむ、お前の言う、そのまさかだ。アールヴの至宝ウルドの泉から生み出される『霊薬エリクサー』を加工して売った」


「!!!???」


「当然だが、エリクサーとして、まともには売らぬ。見かけは勿論、仕様を全く変えた回復治療薬とし、足がつかぬよう、出所も不明にした」


「……………」


 ウルドの泉とは……アールヴの聖地内にある、いにしえの女神の名を冠した魔法の泉である。

 この泉からは、何と!

 霊薬と呼ばれるエリクサーが無限に湧き出て来るのだ。


 エリクサーは、錬金術の至高の創作物である賢者の石を用いて生成される万能薬と言われている。

 服用すれば全ての病も、あっという間に完治する事が出来る。

 もしくは永遠の命を得ることが出来るとまで伝えられた伝説の霊薬なのである。


 だが……

 ウルドの泉から生み出されるエリクサーは、イエーラからは勿論、聖地から持ち出す事も固く禁じられていたはず。


 それをリューディアは、持ち出すどころか、魔法で加工までし、金に換えていたのだ。

 まさに禁断の行為である。


「そ、それって……あ!」


 言いかけて、ケルトゥリは気付いた。

 それを禁断の行為と伝えて来た者はもう居ない。

 止める者達も居ない。


 伝統的な風習の順守を一族に徹底させていた長老達……

 ソウェル就任に断固反対、ルウをこの国に居づらくさせた長老達をリューディアは罰し、追放した。

 今、この姉を止める者など居ないのだ。


 止められるとすれば、それはルウしか居ない。

 しかし……


「この(フェフ)の建設、そしてエリクサーの売却も、事前にルウ様にお伺いを立てた上で、内諾を取ってある。妻たるミンミを通じてな」


「ミンミを通じて!?」


 ルウは妻のミンミ経由で姉と連絡を取っていた。

 そして、アドバイスも送っていた。

 

 アールヴ族を気にかけてくれていたのが、とても嬉しいと同時に、

 仕方がないとはいえ、自分がスルーされた事が悲しい……


「ああ、ルウ様は、伝統を大事にするより、現在のアールヴの苦境を救い、未来に備える方を優先するとおっしゃったそうだ」


「……………」


「本来のソウェルたる、ルウ様の許可を得た私は、ミンミを始めとした有志達の協力により、この回復治療薬を秘密裏に売ったのだ」


 ルウに恋していたミンミ・アウティオ・

 彼女はルウの後を追うように出奔。

 行き違いでヴァレンタイン王国第二の都市で冒険者となった。

 炎の飛燕の『ふたつ名』を轟かせて……


 そして紆余曲折あり、結ばれてルウの妻となった。

 現在は……

 ランクSの実力を認められ、冒険者ギルド王都セントヘレナ支部のマスターとして、辣腕をふるっている。


 そんなミンミをうらやましいと思いながら、ケルトゥリは日々を過ごしていた。


 でも、何故姉はフェフ造営の際、自分に声をかけなかったのだろう?

 言葉にこそ出さないが、ケルトゥリは不満である。


「……………」


 ケルトゥリの心は、リューデイアにはお見通しのようである。


「ふっ、ケリー、ミンミと同じく人間社会で暮らすお前に協力して貰わなかったのは、理由(わけ)がある」


「……………」


「一見、進取的なお前…ではあるが、時代遅れな長老どもと近い価値観を持っていたからだ」


「……………」


(ふる)きアールヴの伝統文化を、頑なに守ろうとする気概があるからなのだ」


 姉の言う通りだ。

 古臭いと思いながら……ケルトゥリは、アールヴの伝統文化を好む。

 霊薬を売ると姉が言えば、絶対、猛反対していたに違いない。


「……………」


「お前は私と似て、頑固で一途、……考えを曲げぬだろう。説得など面倒だし、時間の無駄だ」


「……………」


「それゆえ、血を分けた妹とはいえ、お前に声をかけなかった。このように事後報告としたのだよ」


「……………」


 無言を貫くケルトゥリに、リューデイアは言う。


「話を戻そう……霊薬を売り得た金を、私はこのフェフの造営、各所の建設に使った」


「……………」


「使ったのは、フェフの造営だけではないぞ。黄金や貨幣に換え、一族が必要とする生活物資の調達を行った。新たな事業をいくつか計画し、その資金に充てる事も考えている」


「新たな事業!?」


「ああ、その為にケリー、お前を呼んだ」


 リューディアは言い切ると、にやっと笑ったのである。

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