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第1,303話 「報告」

 ヴァレンタイン王国第二の都市バートランド。

 人口は約1万5千。

 王国の発祥たる旧き街であり、開祖バートクリード・ヴァレンタインの生まれ故郷だ。

 現在は、彼の血をひく王族の縁戚たる上級貴族、大公エドモン・ドゥメールが統治していた。


 そのエドモンの3男ケヴィンが、冒険者ギルドのサブマスター、ピエレット・ラファランと深き仲になった翌週の休日……

 ルウ・ブランデルが、彼の第一夫人でエドモンの姪孫てっそんフランシスカ、

 そして同じくルウの妻でロドニア王家王女リーリャを伴い、エドモンの住まう官邸兼屋敷へ赴いていた。


 ここ数カ月、いろいろな事があった。

 最大の事件が、未曽有の災厄『大破壊』である。

 大破壊とは、この世界へ突然理由もなくやってくる災害である。


 ひと言で『大破壊』といっても、何が起こるかは極めてランダム、つまり不確定てある。

 激しい大嵐のような自然災害であったり、おびただしい数の魔物の襲来であったりする。

 今回の大破壊は、おびただしい数の魔物の襲来――数百体にもなる邪竜の襲来であった。


 しかし、この大破壊はヴァレンタイン王国全土には影響を及ぼさなかった。

 何者かが、まるで意図的に狙ったように、ピンポイントで王都セントヘレナを襲ったのである。

 この何者かの奸計は、あっさりと潰えた。


 大破壊の発生を少し前にルウとモーラルが察知。

 宰相フィリップに対し、フランの母エドモンの姪アデライド経由で上申が為され、事前に万全の対策が練られ、実施された。


 そして大破壊の発生当日。

 発生と同時にルウが麾下の悪魔従士とともに出撃。

 数百体の8割以上をあっという間に殲滅。

 討ち漏らした邪竜もすぐに追撃。

 守りにつかせていた悪魔従士と合流。

 王都に些細な被害は出たものの、ほぼ無事というレベルで守り抜いたのである。


 王家から公式の報告はあった。

 だが、公式は発表だけあり、ルウの活躍に関しては、あまり触れられていなかったのである。

 その後、ロドニア王国からの無償に近い援助もあり……

 その経緯もリーリャを妻にしたルウ絡みだと見抜いたエドモンはルウを呼び出し、謁見させたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 謁見とはいえ、それはあくまで表向き。

 ルウに対し、自らを『じっちゃん』と親しげに呼ばせるエドモン。

 たぐいまれな大器だとルウの能力を見込み、実の息子や孫以上に可愛がっていた。

 その為、実際に行われているのはリーリャが、家族と懇親したようなフレンドリーな食事会であった。

 メンバーも、エドモンとルウ達のみである。


 まず双方が挨拶。


 ややこしい話は先に、それが肝要だ。

 エドモンは、王国の幹部貴族として、まずはリーリャへ礼を告げる。


「リーリャ殿、お父上ボリス陛下へはただただ感謝の気持ちしかない。わしからも御礼を述べた親書は送ったが」


 対して、リーリャは柔らかく微笑み、深く礼をする。


「ええ、エドモン様からの親書の件は、父よりお聞きしております」


「ふむ」


「はい、私も旦那様の妻として、現在はヴァレンタイン王国へ帰化しておりますゆえ、ヴァレンタインの国民です。祖国の一員として、父へ大きな支援を求めるのは当然だと考えております」


 ここで、フランがフォロー。


「先日、許可を頂き、私達家族全員で、内々にて、リーリャの里帰りを致しました。旦那様より支援の御礼も伝え、対してボリス陛下は、リーリャは勿論、上機嫌で私達を歓待してくれました」


「成る程……許可を取り、内々で里帰りか」


「はい、転移魔法を使いました」


 ルウ達が、国境を越え、正式にロドニアへ入国したという記録はない。

 フラン曰はく、許可を頂き、内々という事は、フィリップあたりが許可を出したという事なのだろう。

 

 ならば、特に問題はない。

 それにルウは深謀遠慮の男でもある。

 後顧の憂いは、皆無であろう。

 それに生粋の騎士たるエドモンはルウ本人から、戦いの様子を聞きたい。


「分かった! では大破壊の報告を、ルウ自身からして貰おう。頼むぞ、ルウ!」


「はい!」


 ルウは大きな声で返事をし、話し出した。


 話の内容は、自慢など一切なく、起きた事実を客観的に語るのみ。


 相変わらず欲がない。

 そうエドモンは思う。


 栄誉と金を求め、逆に大げさに語るのが 普通なのだ。


 10分少し、時間が過ぎた。


 ……ルウが大破壊の発生前から、収束迄を淡々と話すのを聞き、エドモンは満足したように何度も頷いている。


「ふむ、成る程。ルウよ、やはりお前が邪竜をほとんど倒したか」


「いえ、じっちゃん。俺が倒したのは総数400余りのうち、270くらいです」


「ほう、270もか! ざっと7割強というところか。わしの範疇(はんちゅう)では、ほとんどだな」


「…………」


 無言で応えるルウを見て、エドモンは鼻を鳴らす。


「ふむ……概要は分かった。だが、今回の大破壊は人為的なものも感じる。何せ邪竜どもは発生地点から、途中の町村に見向きもせず、王都のみを襲ったからな」


「…………」


「バートランドからも王都へ支援物資を送るとともに、いろいろ調査をした上、当方の防衛力も強化しよう」


「はい、それが得策かと」


「分かった! それともうひとつ、ルウ、お前に礼を言っておこう。ありがとう、恩に着るぞ」


「いきなり、何でしょう?」


「とぼけるな。我が不肖の息子ケヴィンの事だ。自分の事を棚にあげるわがままなあいつだが、お前の様々な尽力のお陰で、ついに理想の女子と深い仲となったようだ。魔法鳩便で、昨日そう記した手紙が来ていたよ」


 エドモンはそう言うと、嬉しそうに、苦笑いしたのであった。

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