第1,302話 「恋の魔道具問答⑥」
ケヴィンとピエレットは抱き合ったまま、熱く見つめ合っている。
ふたりは、もう心を寄り添わせる想い人となった。
しかしまだ『恋の魔道具問答』は続きそうである。
ケヴィンが軽く息を吐き、
「ピエレットさん、先ほどの灰かぶりは、ふたりで語り合う形となってしまいましたね。でも凄く楽しかった。今度は私の番ですが、宜しければ、またふたりで物語を紡ぎませんか?」
「はい、私もとっても楽しかった。ぜひぜひ喜んで! それでケヴィン様、次はどのようなお話をされるのですか?」
「はい、とっておきの話です。愛の印、愛斑の話をぜひピエレットさんと語り合いたいと」
「ああ、許されざる恋、恐れ多くも建国の英雄バートクリード様の恋人を愛した騎士の話ですね……でも、これは……結ばれぬ悲しい恋の話ですから、落ちが肝心ですね」
「はい、そうです。おっしゃる通り、悲しき恋の物語ですから、落ちが大事です」
「うふふ、ケヴィン様、ピエレットは凄くわくわくしてまいりました」
「よっし! もっともっと! 凄く凄く! わくわくさせてあげます……では、私ケヴィンから行きますよ。……バートクリード様麾下のある騎士が、仲間と狩猟をしていた時、騎士は森の中の小屋に泊まり、小屋に住まう若い女子と一夜をともにします」
「では、次に私ピエレットが、……若い女子は騎士を気に入り、禁断の魔法を使いました。愛斑と呼ばれる魔法です。額の真ん中に刻むこの魔法は多くの異性から愛される奔放な恋の魔法なのですが、愛してくれる異性に、まったく反抗不可ともなる恐ろしい魔法だったのです」
「では、続きを私ケヴィンが、どちらかといえば、愚直に硬派な男として生きて来た騎士の人生は一変してしまいます。多くの女子と恋の遍歴を経て、何と主君バートクリード様の恋人と相思相愛となってしまうのです」
「では、私が更に続きというか、結末をお話し致します。麾下の騎士はバートクリード様を慕い、敬っていた。なので恋人の求めを断ろうとした。でも愛斑の力には逆らえず、恋人と出奔します。結果、許されぬ恋の逃避行の末に、騎士は誅殺されます。以上ですが、……ケヴィン様はこの恋話にどのような落ちを?」
そう、ピエレットの言う通り、愛斑の伝説は、悲恋である。
ケヴィンはピエレットとの愛にどのような結末?を考えているのだろう……
抱き合ったまま、ケヴィンはピエレットを熱く見つめる。
ケヴィンは自分でも分かる。
今、この時が自分の人生のターニングポイントだと。
「ピエレットさん!」
「は、はいっ!」
「私は感じております。今、私の額には、愛斑が刻まれております」
「え? 愛斑が!?」
「はい、しかと刻まれております。しかし! 伝説の忌まわしき印とは全く違います」
「え? 伝説の忌まわしき印とは全く違う?」
「はい! ピエレットさん、貴女しか愛せない! 貴女専用の愛の印なのです」
「ええっ!? ケヴィン様の額に刻まれているのは、 ……伝説の忌まわしき印とは全く違う、私しか愛せない、私専用の愛の印!! なのですか!!」
「はいっ!! そうです!! その通りです!! ピエレット・ラファランさん、私ケヴィン・ドゥメールは、貴女を唯一の女性として、真摯に愛します。一生愛する事を、創世神様に誓います」
愛を告げるケヴィンの眼差しは真剣であり、まっすぐである。
嘘偽りは全く感じられないくらい気迫がこもった声でもある。
女子として、こちらも誠実に答えてあげなければ、とピエレットは思う。
そしてケヴィン同様、これからする返事次第で運命が大きく変わると感じていた。
これまで一緒に過ごして来て分かった。
考え方が合う。
価値観も近い。
ケヴィン・ドゥメールとは出会うべくして出会い、愛すべくして愛したと。
「はい、ケヴィン様。私の額の真ん中にも、愛斑が刻まれております。ケヴィン様しか愛せない! 貴方専用の愛の印です!!」
ぴったりと抱き合っているから、互いの心臓の鼓動がはっきりと聞こえて来る。
ケヴィンとピエレットは抱き合ったまま、ゆっくりと倒れ込み重なった……
こうして、中々距離を縮められなかったふたりの男女は……
愛を深め、しっかり心身ともに、結ばれたのである。
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