第1,301話 「恋の魔道具問答⑤」
ケヴィン・ドゥメールは、ヴァレンタイン王国建国の祖、バートクリード・ヴァレンタインが引き抜いたという神剣の伝説を、己の恋の語らいに使った。
……次はピエレット・ラファランが語る番である。
「では、ケヴィン様。今度は私の方から、恋に関係した魔道具のお題という事でお話致しますね……灰かぶりという物語に出て来る魔法をご存じですね」
ピエレットの問いに対し、ケヴィンは大きく頷く。
「ああ、私も有名な灰かぶりなら、知っていますよ。恋の魔法って、あの寓話に出て来る魔法の杖を使う変化の魔法ですよね。貧しい少女の夢を叶えた」
「はい、その通りです。ご存じでしょうが、念の為、簡単にストーリーを申し上げますと、あるところに継母と連れ子の姉達にいじめられる少女がいました。家事をすべて押し付けられて暖炉を掃除している際、灰まみれになった事から、少女はひどく馬鹿に且つ罵倒され、灰かぶりと貶められていました」
魔道具オタクのケヴィンにとって、灰かぶりの寓話は丸暗記していた。
これは大きなチャンスだ。
会話へ参加する事で、ピエレットと心の距離がぐん!と近づける。
ケヴィンは「さっ」と挙手し、話を継いだ。
「申しわけない! その続きは、ピエレットさん、自分がお話しします。割り込みして宜しいでしょうか?」
「ええ、構いませんよ」
「では、お話しさせて頂きます! ……何かにつけて、馬鹿にされ日々冷遇される灰かぶりの少女は、いつの日にか幸せになりたいと願っていました。ある日、お城で舞踏会が開かれる事となり、継母と姉ふたりは大金を積んで潜り込んだのに、灰かぶりの少女は連れて行って貰えなかった…………ピエレットさん、続き、お願い致します」
適度なタイミングで終わらせて、後を託す。
ピエレットも心得たもの。
口を挟まれても嫌な顔をせず、ケヴィンの話をバトンタッチする。
「分かりました。灰かぶりの少女もその舞踏会へ行きたくてたまらなかった。その時、ひとりの謎めいた魔法使いが現れ、創世神を信ずる誠実なる者よ、私の聖なる恋の魔法で舞踏会へ連れて行こうと約束してくれました…………ケヴィン様、続きを、お願い致します」
「了解です! 舞踏会の当日、謎めいた魔法使いは、灰かぶりの少女の下へ再び現れました。そして魔法の杖を振り、変化の魔法を発動。カボチャを馬車へ、ネズミは御者へ、トカゲは召使へ、そして、灰かぶりの少女が着ていた汚れに汚れた粗末な服は、美しいパーティー用のドレスに変えられました。…………ピエレットさん、続き、お願い致します」
「はい! では続きを! 大喜びする灰かぶりの少女へ、魔法使いは厳命しました。この魔法は夜の12時を超えると効果が切れ、全てが元に戻ってしまうと。灰かぶりの少女は、言いつけを守ると約束し、亡き祖母から貰ったガラスの靴を履き、舞踏会へ出かけました…………ケヴィン様、続きを、お願い致します」
「ええ! いよいよ物語も佳境ですね。舞踏会へ来た灰かぶりの少女は参加者の中で、最も美しさは目立っていました。しかし、驕らず、誇らずの灰かぶりの少女は魔法使いの言いつけを守り、何とか12時ぎりぎりに帰宅します。しかしお城から帰る際、祖母から貰ったガラスの靴を片方落としてしまいました…………ピエレットさん、続き、お願い致します」
「はい! とうとうクライマックスです。灰かぶりの少女の少女を見初めた王子は拾ったガラスの靴を見せながら、必死に灰かぶりの少女の行方を捜します。灰かぶりの少女の家へ訪れた王子は、ガラスの靴は自分たちのものだと主張する継母と連れ子の姉達へ履かせてみますが、合うはずもありません…………ケヴィン様、フィナーレを、お願い致します」
「は、はい! 王子は汚れた身なりをした灰かぶりの少女にも、ガラスの靴を履かせます。そして、靴は灰かぶりの少女にピタリと合い、変身の魔法が復活、清らかな心を持つ灰かぶりの少女は舞踏会の美しさを更に超える、気高き美貌の貴婦人となり、王子と結ばれ、幸せに暮らしました、とさ……以上です」
ケヴィンはここまで言うと、軽く息を吐き、更に言う。
「私は愛する人の為に、ぜひ習得したい。灰かぶりの少女に使った素晴らしき変身の魔法を! 強くそう思いました」
「ああ、ケヴィン様! 何とお優しい! そして何と感動的な! 幼き子供の頃、心ときめいたお話を大好きな方と語らえば、ここまで心が打ち震えるとは!」
これは、もしやピエレットの愛の告白!!
ケヴィンの身体を衝撃の稲妻が走り抜ける。
ここが勝負。
幸運の女神が差し伸べた手をつかむ大チャンスだ。
勇気を振り絞り、告白するしかない。
「ピエレットさん! 自分もです! 心が打ち震えました! 貴女が大好きです! 絶対に絶対に放したくないっ!」
先ほどは、感極まり後先考えず、ピエレットを抱いた。
しかし!
今、ふたりは心を合わせ、しっかりと抱き合っていたのである。
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