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第1,298話 「恋の魔道具問答②」

 魔法女子学園理事長アデライド・ドゥメール伯爵の伯父にあたる、

 王族の流れをくむバートランド大公エドモン・ドゥメール。

 

 そのエドモンの3男ケヴィン・ドゥメールは……

 文武両道において、天賦の才に恵まれた父が政治家への道を歩んだのとは違う道を歩んだ。

 受け継いだそのたぐいまれな記憶力と鋭い感性を学問に生かし、学者への道を歩んだのだ。

 バートランド大学を経て、現在、ヴァレンタイン王立魔法大学に教授として勤務。

 日々教鞭をとっていた。


 ケヴィンの専門は考古学だ。

 趣味は……マニアレベルの旧い魔道具収集である。


 生まれてから今まで研究と趣味に明け暮れ、生身の女子とは全く付き合った事がない。

 その上、ケヴィンは自分の事を棚に上げ、女子に対し、容姿、性格、趣味、健康面と高い理想を求めすぎる面倒な男なのだ。

 それゆえ、恋愛経験は皆無だった。


 そんなケヴィンに、ようやく春が巡って来た。

 ルウの多大なるバックアップもあり、とうとう恋人が出来たのである。


 気になるお相手は、平民の女子だ。

 同じ研究畑の学者ではない。


 何と!

 ケヴィンの交際相手は、冒険者ギルド王都セントヘレナ支部のサブマスター、端麗な顔立ちをした凛々しい魔法剣士ピエレット・ラファランである。


 初めて出会った時、仕事上の会話から、趣味が互いに魔道具収集だと知り、意気投合。

 ケヴィンが、彼女に警護を頼んだ事からふたりの仲は更に接近。

 遂に恋人同士となった次第。


 だが想い人同士となったふたりだが、関係は中々深まらなかった。

 ケヴィンもピエレットもお互い、超が付く多忙であったから。


 特にピエレットは忙しかった。

 そんなピエレットだが……ようやく休みが取れたのである。

 だからケヴィンは、これまで一切取得しなかった有給休暇を急遽、3日間も取った。


 まもなくピエレットは、ギルドの馬車でケヴィンの自宅へやって来るはずだ。

 ふたりは、当然少年、少女ではない。

 ケヴィンは40歳になるし、ピエレットも30代半ば。

 良い年をした大人である。


 だがふたりとも完全に恋愛初心者。

 どきどき……が止まらない。


 「止まらない」といえば……

 洒落ではないが、今までピエレットはケヴィンの自宅に「泊まった」事がなかった。


 しかし今回、ケヴィンは勇気を振り絞った。

 ピエレットと付き合いだして、すでに数か月が経っていた。

 そろそろ関係を深めたいと思う。

 

 遠回しに『お泊り』をほのめかしたら……

 何とピエレットは、少し迷った上で「OK」してくれたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 想い人のピエレットに変な誤解をされないよう、ケヴィンが雇っている使用人数人は、全て老齢の男性である。

 

 食事はほとんど外食だから、料理以外の家事を頼んでいた。

 ケヴィンは、家事などやった事はないが、一念発起。

 使用人に頼んで、掃除の仕方を教えて貰った。


 頭を下げたケヴィンに恐縮した使用人達だったが……

 誠実で真摯なケヴィンの熱心さにほだされ、いろいろと手取り足取り、丁寧に教えてくれた。


 生まれて初めて自分の部屋を自分で掃除し、整理整頓したケヴィン。

 3日間、使用人達にも臨時休暇を出し、万全の態勢でピエレットの到着を待っていた。


 そろそろかな。

 ケヴィンがそう思った瞬間。


 リンゴーン!


 魔導鐘の呼び出しが鳴った。


「はいはいはい~!」


 訪ねて来た者へ声が届くはずもないが、ケヴィンは声を出しながら、玄関へ急いだ。


 防犯用の魔法水晶には、ピエレットの姿が映っていた。

 安堵したケヴィンは扉を開けた。


 開いた扉の向こう側には……

 少し身を縮め、緊張気味のピエレットが立っていた。

 ギルドからすぐ駆け付けたのであろう。

 革鎧姿のままだ。


 恥ずかしそうにうつむくピエレットを見たケヴィンは、記憶をたぐった。


 ……バートランドの実家に居た頃、父の忠実な部下として仕えている冒険者ギルドの総マスター、クライヴ・バルバーニーは日夜、屋敷へ顔を見せていた。

 彼がまともに休暇を取ったのを見た事などない。

 

 冒険者ギルドの上級幹部は……本当に忙しい。

 ピエレットも同じなのだ。

 それなのに……自分の為に、……苦労して休みを取り、自宅まで会いに来てくれた。


 心に込み上げるものがあった。

 初めて経験する、他人を愛おしい、守りたいという気持ち。


 もう我慢など出来なかった。


「ピエレットぉぉ!」


 ケヴィンは大声で叫び、ピエレットに駆け寄った。

 そして「ぎゅっ」と、思い切り抱き締めた。


「ケ、ケヴィン様!」


 大胆なケヴィンの行動に驚き戸惑うピエレットは、まるで10代の少女のように、

恥じらい、頬を紅くしていたのである。

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