第1,290話 「占術の復権②」
出迎えたフランソワーズに導かれ……
フランとアドリーヌは、グリモール子爵邸内にあるフランソワーズの私室に居た。
否!
一室とは言えない。
何と何と! ……8間続きもあった。
居間、寝室、厨房、風呂、トイレは勿論、書斎、魔法研究室、倉庫まであるのだ。
思わずフランが言う。
「まるで、お母様……いえ、魔法女子学園の理事長室みたいね」
「いいええ。父が勝手にした事ですし、アデライド理事長には到底敵いませんわ」
どうやらフランソワーズの父グリモール子爵は愛娘を、目の中に入れても痛くないほど猫可愛がりしているようだ。
「それより、フランシスカ先輩」
「はい?」
「ご連絡を頂いた件、承りました。母校、魔法女子学園への教師赴任は私自らが望んだ事です。謹んでお受けいたしますわ。念の為、契約書の内容はちゃんと確認させて頂きますけど」
「ありがとう、フランソワーズさん。ええ、契約書はしっかりと見て、確認してください。何かあれば、私か、ケルトゥリ教頭まで、問い合わせしてくださいね」
「分かりました。それともうひとつの件、占術の件ですが……後輩で若輩の私の意見を聞き入れてくださるという条件付きで、協力するかどうか、可否をお答えしたいと思います」
「条件?」
「はい、先輩おふたりに対し、私から厳しい意見、もしくはダメ出しと取られる事があるやもしれませんので」
「厳しい意見? ダメ出し?」
「はい。魔法女子学園において、占術の授業をどのような方針で行うかという事ですわ」
「どのような方針?」
「それって……」
「い、一体どういう事かしら?」
フランは勿論、アドリーヌもフランソワーズの言葉が気になるようである。
「受講した生徒を本格的なプロに向けて指導するのか、そうでないのか?」
フランソワーズの問いに対し、フランとアドリーヌはすぐに答える。
「無論、王道的に、しっかりと形式にこだわったプロの占術師にしたいと」
「ですねっ!」
しかし……
フランソワーズは「却下!」とばかりに、ゆっくりと首を横へ振った。
「それでは……今の低空飛行のままですわ」
「て、低級飛行?」
「うわ、きつい言い方」
「ヴァレンタイン王国の現状では、占術師のプロになっても、よほどの顧客が付かないと収入は少なく暮らしはなりたちにくい。アドリーヌ先輩はそれが原因で教師になったと認識していますけど」
「う! ……確かに。痛いところをつきますね」
「アドリーヌ……」
「専門科目は大学への進学は勿論、将来の生活手段として選ぶ科目です。魔法鑑定士ならいざ知らず、占術では受講希望が少ないのは当然となってしまいますわ。占術のプロになるのなら、高名な占術師に弟子入りし、独立とともにお客様をご紹介して頂くのが早道だと思いますわ」
フランソワーズの考え方は分かった。
知りたいのはエビデンスであり、具体案だ。
「では、フランソワーズさんは、魔法女子学園においては、どうすればよいとお考えですか?」
フランはそう言うと、ぐいっと身を乗り出した。
アドリーヌも続いた。
対して、フランソワーズは余裕たっぷりに微笑む。
「はい、簡単です。テーマを恋と結婚、運命に絞り、神秘さとビジュアルを前面に押し出した授業を行うべきです」
「ええっ? 恋と結婚? それと運命?」
「神秘さとビジュアルぅ?」
「その通りですわ」
戸惑い驚くフランとアドリーヌをよそに、フランソワーズはすました顔で頷いていたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
フランソワーズは言う。
「女子が好むテーマは多々あります。でも、すべてをカバーするのは困難です」
「そりゃ、そうよね」
「女子とひとくくりにしても、好みは千差万別ですもの」
フランとアドリーヌは同意した。
「そこでテーマを絞ります。お年頃の女子にとって、恋愛と結婚は避けて通れない話題です」
「でも……たまに、恋愛も結婚もまったく興味なしって人も居るわよね」
「確かに……」
「うふふ、そういう人は最初から占術に頼らないと思いますわ」
「納得」
「で、恋愛と結婚は分かったけど」
「はい……運命はとりあえず置いといて。ビジュアル的な占術の例へ行きますね」
「ビジュアル?」
「例えば?」
「ミラーウオッチです」
「ミラーウオッチ」
「未来の恋人を鏡の中に見て、予知するって事ね」
「はい、その通りですわ。おふたりとも、ミラーウオッチはご存じだと思いますが、改めてご説明致します」
フランソワーズはにっこり笑うと、軽く息を吐いたのである。
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