第1,287話 「幸せのイメージ」
「ねぇ、ジョゼ。何か、聞いています? ブランカお母様、お元気でしょうか?」
「ええ、リーリャ。すこぶる元気だと、お父様から連絡がありましたわ」
現在ブランデル家の馬車は、ジョゼフィーヌの実家ギャロワ家へ向かっていた。
復興の槌音響く王都セントヘレナで暮らすルウ達へ、吉報が届いたのだ。
吉報とは……素敵な報せの事。
ジョゼフィーヌの父ジェラールと結婚したリーリャの元侍女頭ブランカが、めでたく懐妊したのである。
出産予定日は来年の春遅めらしい。
魔法女子学園の卒業式より少し後かもしれない。
という事で、ジョゼフィーヌの里帰りも兼ね、ルウが提案した。
当然ジョゼフィーヌ、そしてブランカの娘のようなリーリャ、同胞ラウラのロドニア関係者、更に第一夫人のフランが訪問する事となったのである。
警護役兼御者役はモーラルが買って出た。
本当はルウの妻達全員が、ギャロワ邸訪問を希望した。
ジゼルもナディアもオレリーも、アドリーヌとアリスも。
しかしいくらなんでも、妻全員が大挙して押し寄せるわけにはいかない。
相談した結果、上記5名がルウとともに、ギャロワ邸へ赴く事となったのである。
ギャロワ邸は、同じ貴族街区にあるブランデル邸からそう遠くはない。
馬車は約10分ほどで到着した。
ギャロワ邸正門の護衛担当の騎士はルウとは顔見知り、ブランデル家の馬車もお馴染みである。
笑顔で正門を開放してくれた。
事前に連絡をしてあったので、家令のアルノルト以下、使用人が数人で迎えに出ていた。
「ルウ様、道中、お疲れ様です。ジョゼフィーヌお嬢様とリーリャ様含め皆様は?」
「車内だ」
ルウの声を聞き、使用人のひとりがすかさず駆け寄って、馬車の扉を開けた。
まずはルウが、ジョゼフィーヌ、リーリャ、ラウラ、そして最後にフランが降りて来る。
モーラルも、御者台から降りた。
また別の使用人が駆け寄ったので、馬車を託す。
駐車場へ行き、ハーネスから馬を外し、世話をするように頼んだ。
モーラルを待っていたルウ達は合流。
全員一緒に本館へ向かって歩き出した。
アルノルトが皆へ言う。
「旦那様と奥様は中でお待ちです」
対して、ジョゼフィーヌが勢い込んで尋ねる。
「爺や! 身重のお母様は大丈夫?」
「ええ、体調はおよろしいでございます」
「……………」
先ほど同じ会話をしたばかりなのに……
リーリャは思わず苦笑したのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「お~! よく来た、皆の者! ジョゼ、リーリャ、健康そうで何よりだ!」
「うふふふ、皆お元気そうで!」
ジェラールとブランカは1階の大広間の長椅子に座り、待っていた。
ルウ達もに用意された椅子に座る。
まだ妊娠初期なので、ブランカのお腹はあまり目立たない。
ルウ、ラウラ、フランはギャロワ夫妻の元気な顔を見るだけで満足だ。
やりとりは、ジョゼフィーヌ、リーリャに任せると決めていた。
まず口を開いたのはジョゼフィーヌである。
「お父様、お母様のご体調は?」
これで3回目。
傍らで質問を聞いていたリーリャは必死に笑いをこらえていた。
しかし、ここは笑うところではない。
「おお、心配をかけてすまん、ジョゼ」
「ええ、ジョゼ。つわりもひどくないし、大丈夫ですよ」
やはり……
ノープロブレム。
問題なしとの事である。
何とか笑いをこらえたリーリャは、ブランカへ話しかける。
「ブランカ……母様。生まれるのは女の子ですか? 男の子ですか?」
昔の癖で呼び捨てになりそうなところを、慌てて母さんを付けたリーリャ。
対して、ブランかは微笑み、ゆっくりと首を横へ振った。
「うふふ、分からないわ」
「え? 魔法で確認していないのですか?」
生まれる前に女子か、男子か。
確認出来る魔法がある。
命名、育成準備に円滑に対応出来る為、重宝されている。
行使した事はないが、当然ルウは習得している。
ちなみにフランも、モーラルも習得済み。
万が一求められたら、フランが発動するつもりだ。
戸惑い、訝し気な表情を見せるリーリャの質問に対し、答えたのはジェラールである。
「うむ、リーリャ様……いやリーリャよ。生まれた時のサプライズだと思い、あえて確認していないのだよ」
「サプライズ!? 生まれた時のお楽しみって事ですねっ!」
「それ! ナイスアイディアですわ! お父様っ! お母様っ!」
「確かにっ!」
ここでハッとし、すかさず質問したのはジョゼフィーヌである。
「ええっと、……名前は考えているのですかっ! 命名はっ!」
「おお、ジョゼ。考えておるぞ! 男も女も両方な! 仕事をしている時以外、ず~っとだ!」
「うふふふ、旦那様ったら、各100人分考えているのですよっ!」
「「100人!!!」」
盛り上がるジョゼフィーヌとリーリャ。
一方、頬を紅く染め、興奮した表情で顔を見合わせひそひそ話すのはフランとラウラである。
ブランデル家の出産計画。
妻が子供を産む事に関しては……
いろいろ話した結果、ジゼルとナディアが大学へ入学して以降……
だと考えている。
そして最初に『子作り』するのは年長のフランとラウラが最初だと合意もされた……
フランとラウラは、幸せそうなジェラール、ブランカの様子を見ながら……
未来の家族の姿をはっきりとイメージしていたのである。
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