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第1,286話 「夢の発覚㉞」

 ルウは今回の慰問を見越していろいろ用意していたようだ。


 こまめにてきぱきと仕切り、慰問に参加した人数を割り振り、的確に役割分担の指示をした。

 少し経って、元愚連隊で孤児院出身者が数多(あまた)居る鋼商会(カリュプス)も参加し、準備は着々と進められて行く。


 孤児院の庭には、今回、簡易なステージが組まれている。

 このステージにおいて『デデ&レニー』のスペシャルな臨時コンサートが行われるのだ。


 という事で、デデ&レニーは事前の打合せに入っていた。

 こちらを仕切るのは、当然リーダーのアンドレである。


「もう分かっておるだろうが、今日は変身はナシだ。もろに素顔で唄うぞ」


 アンドレの言葉に反応したのはレオナールだ。


「え? でもまずくはないですか? 絶対に身バレしますよ、もろに素顔では……」


「大丈夫、心配ない。まったくノープロブレムだ」


「は? まったくノープロブレムとは? どういう事でしょう?」


「ははは、言葉通りさ。まず英雄亭の客と今日の客は全くかぶらない。部外者で我々の歌を聴くのは孤児院の子供達と職員、鋼商会の社員のみだ。それと真の事情を知っているのはルウを含め、家族だけだしな」


「な、成る程! 確かにそうですね!」


 同意するレオナール。

 アンドレは悪戯っぽく笑う。


「それとレニー、本日、この場で歌うのは童謡のみだぞ」


「ど、童謡のみ? どういう事でしょう?」


「ははははは! 童謡ならばこの儂でもさすがに子供の頃からそらで歌い慣れておる。それにぶっつけで歌って、多少ぎこちないのも良いカモフラージュになるわい」


「な、成る程!」


「つまりだな、歌がほんの少しだけ上手いおじいさんとおじさん、そして綺麗なお姉さんふたりがな、枢機卿や王国軍統括などと認識しない孤児院の子供の為に歌う童謡さ。だったら、何も問題はないだろう?」


「おお、凄く納得しました。さすが枢機……いや、デデですね!」


「ははは、いやいや! 全てルウの立てた作戦だ。私ではこうはいかんよ」


 そうこうしているうちに……ステージが組み上がり、デデ&レニーは簡単なリハを行った。

 演奏する曲目の確認も行う。


 相談の結果、本日歌うのは、5曲の童謡に決まった。

 嬉しくなる歌、楽しくなる歌。

 そして故郷を思い出すような懐かしい歌……様々である。


 やがて、フラン、ジゼルを含め、ルウの大勢の妻達に率いられた孤児院の子供達がやって来た。

 子供達は優しく綺麗なお姉さんに囲まれ、ご機嫌だ。

 レオナールの妻レティシアも数人の子供達に甘えられて嬉しそうである。


 準備は整った。

 またも……どこからともなく、不思議な伴奏が聞こえて来た。


 今回も子供達が馴染みやすいよう、最初のパートはエレナとリゼッタ、ふたりのニンフが歌う。


 歌と伴奏が流れ出すと……子供達は大いに喜んだ。

 すぐに一緒に歌い出す。


 レオナールも歌い出し、ふと見れば……

 妻のレティシアも、息子のジゼルも娘のジェロームも、

 そして新たな家族……娘となるシモーヌも仲良く歌っている。


 お、俺は!

 幸せだ!

 凄く、凄く幸せだ!

 

 感極まったレオナールは目にいっぱいの涙を溜めながら、熱唱していたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 翌朝、月曜日……

 笑顔のレティシアに熱いキス付きで見送られ……

 レオナールは王宮へ出仕した。


 今までは人々の為に戦い、武を全うする『騎士』として、生きて来た。

 そして新たな道も開けた。

 人々の心を癒し、活力を与える『歌い手』としても生きて行くのだ。

 レオナールは素晴らしき人生のリスタートを感じ、心身が歓びに満ちていた。


 いつものように、朝一番で上席のフィリップへ挨拶の為に顔を出す。

 

「おはようございます! 殿下!」


 晴れやかな表情。

 張りのある力強い声。


 レオナールの元気な挨拶を聞き、笑顔のフィリップは満足そうに頷く。

 

「おはよう、レオナール。……その様子だと、悩み事は完全に解決したようだな」


「はいっ! 解決致しましたっ!」


 ここでフィリップは謝罪する。

 『約束』が不履行となったからだ。


「レオナール、君にはすまない事をした。ジェローム君の件で悩む君に、私はろくにアドバイスが出来なかったからな」


 王族たる上席の『謝罪』を聞き、レオナールは恐縮する。


「いいええっ! 御多忙な殿下に、私のプライベートな件、つまらない事でご負担をおかけし、誠に申しわけありません!」


「いやいや……私の事など。それよりも」


「は? それよりも?」


「うむ! 英雄亭で枢機卿と君が演奏した歌はとても素晴らしかったぞ! 私もつい泣いてしまった。亡き妻の事を思い出してな……またぜひ聞かせてくれたまえ」


 驚いた!

 びっくりした!

 何と何と!

 フィリップも、デデ&レニーの歌を聴いていたのだ。


「はああっ!? で、殿下ぁ!!」


「ははははは、君の家族同様に、私も英雄亭の客達の中に紛れ込んでいたのさ。ルウの魔法により冒険者に擬態してな」


「ううわわわ……」


「君の歌といい、陛下や私が大好物となったジェローム君の焼き菓子といい、カルパンティエ家は様々な才能に恵まれた素晴らしい一族だ。実に羨ましい! 私も政務以外に何か楽しめないか、模索してみるよ」


「そ、そんな!?」


「ああ、そうだ。老齢の枢機卿には、私がデデ&レニーの歌を知っている事をとりあえず伏せておいてくれたまえ。心身にダメージがないようルウからさりげなく伝えて貰うから」


「か、か、かしこまりましたぁ!」


 思わず直立不動で敬礼したレオナールは……

 「今回は全てルウにしてやられた!」と、心の中で苦笑していたのである。

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